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14.財産狙い?

 なぜフローラは自分の子ではないアレクシスをあんなに親身に世話するのだろうか?

 老人と結婚しないために俺と結婚するということも、かなり無茶な提案だったと思うけれど。

 

 家令が持ってきた報告書第二報には結婚相手のランス伯爵の情報が含まれていた。

 年齢は六十三歳。息子が三人、娘が一人、孫は全部で七人。妻は五年前に他界しており、愛人と思われる女性が一名。

 

「愛人がいるくせにフローラを領地収入五年分で後妻にする理由はなんだ?」

 一番下の未婚の息子の嫁の方がまだ納得できるのに。

 

「マティ様、ご報告したいことがあります」

「カール、おかえり。どうだった?」

 騎士団長のカールは半分溶けた小さな入れ物と、簡易な絵が描かれた紙を広げながら、マティアスに事故現場の調査結果を報告した。

 

「この入れ物は?」

「馬車の近くに落ちていたものですが、蓋の形が特徴的でしたので持ち帰りました」

 五センチほどの入れ物は熱で変形しているが、中蓋を閉めてからさらに外側の蓋をするという変わった構造の入れ物だった。

 たまたま近くに落ちていただけで関係ないものかもしれないが。

 

「兄は最後の最後まで『火』で戦ったんだな」

 マティアスは調査結果の魔獣が燃えた場所を指でなぞりながら呟く。

 

 馬車に乗っていたのは兄フェリクス、兄嫁アリーナ、そしてアレクシス。

 馬は二頭、御者一名、護衛騎士が二名。

 護衛騎士はベルンブルグ本邸のベテラン騎士と弟子。

 御者を含め身元資料が添付されていたが、当然ながら兄以外に『火』を扱えるものはいなかった。

 

 

 ベルンブルグ公爵家は『火の一族』。

 千年以上前に英雄の一人として名を馳せたベルンブルグの末裔だ。

 

 昔は誰でも気軽に魔法を使用できたと言われているが、今では魔法が使えるほどの魔力量を持つ者はほとんどいない。

 たとえベルンブルグ一族に生まれたとしても、ほとんど火魔法を扱えない者もいる。

 それだけ魔法は珍しい物になった。

 

「フェリクス様たちを襲ったシルバーウルフはおそらく五頭」

「五頭も……?」

 一頭でも騎士五人掛かりでようやく倒せるレベルのA級の魔獣シルバーウルフが五頭も一度に現れるなど普通ではない。

 

「アリーナ様は棺に入れて王都の本邸に運ぶように手配をしました。他の動物や魔獣に襲われず、ご遺体を回収できたのは幸いでした」

「あぁ。フローラがその場には誰も来なかったと言っていたからな」

「……フローラ?」

「アレクシスをアリーナから託された女性だ」

「現場にいたということですか?」

「アリーナが倒れていた場所にいたそうだ」

「マティ様の気を惹くための嘘ではないのですか?」

 そんな場所に女性が一人でいるのはおかしい、アリーナが託したということはその時点でアリーナは生きていたということ。

 フェリクスや護衛騎士の姿を全く見ていないなどあり得ないのではないかとカールは自分の意見を素直に語った。

 

「アリーナに花を手向けたのはフローラだ」

「財産狙いならそのくらい」

「アレクシスが泣かない」

 アレクシスにはフローラが必要だと言われたカールは、それ以上何も言うことができず、口をつぐむ。

 

 マティアスの手元には家令が報告した第一報と第二報、そしてカールが報告した兄フェリクスの事故現場の情報。

 マティアスは三つの資料を机に並べると、もう一度すべて最初から目を通すことにした。

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