19 『雪解ける砂漠のカノン』
「私はどうしても五分を越えて生き残り、教会の禁書庫に行きたい。だから、私の作戦を話させてほしい。わがままを言ってすまない」
いつも余裕の笑みを浮かべているジュリアンは、真剣な顔で四人にそう言った。
コルヴスを除く三人は面食らった顔をしたが、コルヴスと同じくらい背の高い、がっしりとしたウルススは、すぐににこやかな表情で、
「僕は構いませんよ」
と答えた。
白いカチューシャの、どことなくふわっとした雰囲気のレウカスは、スポーティーな格好が似合う、黒い瞳のメラノと顔を見あわせて言った。
「わたくしも構いませんわ」
「それでいいですよ」
コルヴスも、ジュリアンの立てた作戦であれば、勝算は上がるなと考えつつ、
「期待にお応えできるかどうかはわかりませんが、力は尽くしましょう」
と、ジュリアンに笑いかけた。
「ありがとう。早速だけど、カストル先生から五分間逃げ切れる足を持っている人は……? そうだね、この学年にはいないだろうね。つまり、この課題で重要なことは、仲間の救出をどう実行するかだと私は考えたんだ。『板書して』」
ジュリアンはカストルを真似て、手元に五人で見られる程度のスクリーンを展開した。
そこには、『雪解ける砂漠の追走曲』というタイトルが表示されていた。もちろん、カストル講師の『凍てつく砂漠の輪舞曲』に対するアンサーなのだろう。
四人は大人なので、誰もそれには動じなかった。
「具体的には、誰かが捕まったときに、残りの四人で『救助』役を二人、先生の次の手を妨害する『攻撃』役を二人、それぞれ分け持てばいいだろうと考えた」
「では、その役をどうやって振り分けるか。こちらを見てほしい」
青い線で五角形が描かれ、その頂点には、①~⑤の数字が置かれた。
「誰が何番でもいいけれど……こんな感じに」
時計回りに「①ジュリアン ②コルヴス ③ウルスス ④メラノ ⑤レウカス」と名前が表示された。
「ここに赤い色の対角線を引くと、こんな図になるね?」
青い五角形の中に、赤い五芒星が入った図ができた。
「例えば、①私 が捕まったとき、青い線でつながった②コルヴス ⑤レウカス が『救助』して、赤い線でつながった③ウルスス ④メラノ が『攻撃』する」
説明に合わせて、モニターの①の名前が光り、続いて、そこからつながる青い線と②⑤の名前、同様に赤い線と③④の名前が光った。
「二人が同時に捕まった場合は、少しややこしいが――『自分と隣り合わない二人』が凍ったときと、『自分の両隣の二人』が凍ったときが『攻撃』。それ以外の組み合わせなら、『救助』とすると、うまく回る」
コルヴスは頷いた。残り三人は、考え込むような顔になり、画面を見たまま沈黙した。
ジュリアンは、スクリーンの角度を少し起こして斜めに変えた。
「そうだな……自分をこの五角形の頂点に立たせたとき」
ジュリアンが指で図形を撫でるようにして、五角形を逆立ちさせた。①の頂点が図の一番下を指している。
「凍っている二人が、シンメトリーなら、自分は『攻撃』」
③④が同時に赤く光り、消える。そして②⑤が同様に赤く光り、消えた。
「アシンメトリーなら、自分は『救助』というわけだ」
②④が青く光り、消え、③⑤が青く光り、消えた。
「まさか……この位置関係を、今から暗記しろってことか!?」
目を剥いて、思わず口調が乱れたメラノに、ジュリアンは
「Exactly」
と応えて、令息の笑みを浮かべた。




