第3話 初陣、拳の交わり
遂に戦闘します。
私は振り返ったが九条さんほど反応できずにフリーズしてしまう。
「なっ、足音なんて......」
デカすぎるっ、私よりだと!?それにリラックスしていたから気づかなかったぞッ。
私は不意打ちに牛は5本の指の巨大な拳をモロに顔面にくらい遠くに殴り飛ばされた。
「ギャヤァアァ〜〜......」
轟音と共に塀をぶち抜いてしまう。
「貴音ッ!......こんのッ......よくも畜生風情がァア!!」
梶原貴音はふっ飛ばされ目視できず生死不明、怒りのあまり九条未来は自衛隊で使われる9mm機関銃を向ける。
牛のドタマに乾いた音を立てながら25発全弾正確に撃ち切る。
「ンッ!ん゛んもぉおオ〜〜!!」
と唸るが目に見えてダメージがない、弾は全て牛の頭に当たるだけでポロポロと地面に落ちていたのである。
そしてこの唸りは苦しみではない、憎しみの唸りである。
「う、嘘......そんな、血どころか擦り傷も無いなんて、なんなんだよっクソッ!」
非常事態に珍しく口が悪くなる九条未来。だが今は冷静に警察署の近くだがSOSシグナルを送り、ダメで元々と特殊警棒をジャキっと鳴らして取り出す。
「貴音......チッ、貴音が吹っ飛ばされた時点で勝ち目が無いのはわかるわ。でも、ここで引き下がるほどヤワじゃ無いのよッ!」
そう叫ぶと牛の股間目掛けて警棒を振り下ろすが、容易く牛の強い力で掴まれてしまう。
「なっ!?いっ痛い。こいつ、指が5本に増えてる......あ゛あ゛っ!折れるっ!」
必死に振り解こうとジタバタとする。だが身長約3mと156センチではお話にならない。
振り解こうと必死でいると牛はそのまま腕を持ち上げ、自分の顔の前に九条未来を持って行くと口を開く。
「ぶるふぉっ!!オマえはヤワ、ジブん勝てナい」
と勝ち誇る様にニタつき嘲笑する牛。
九条未来はまさかカタコトとは言え日本語で話しかけられるとは思わず面食らう。
「っ!?言葉までも!知能の進化がここまでとは......それに動物にはない表情があるッ。こ、こいつらは人間に近づい......」
言い終わる前に持った腕を振り上げて地面に思い切り叩きつける牛。
まるで子供が遊びで蟻を潰す様に、容易く残酷に行われた攻撃は大ダメージ。肋が折れ、腕は解放骨折し血が噴き出る。
「ぐぁっ!う゛っ......ガフッ......」
(こいつ貴音を殴った時に比べて手を抜いて私の事を舐めてる、こいつは私で遊んでいるんだ、猫が蜘蛛や虫を遊び殺すように......た、貴音......)
地面のコンクリートにはヒビが入り、スーツはズタズタで血塗れ、心の中では好きな人の名前を叫んでしまう。
もうモゾモゾと動くことしかできない九条未来に殺害宣言。
「言葉ぁ......アっていルカなぁ?コれからト殺だヨォおぉオオ!!!!」
そう言いながら両手の拳を握り合わせて九条未来に目掛けて振り下ろす。
「ヒュッ......うぅうう......た、貴音ぇええっ!!!」
(役立たずでごめんね、貴音)
九条未来は諦めずに梶原貴音の名を叫ぶ、それを無慈悲に打ち砕くべく振りかぶられた拳は轟音と共に打ち止められていた。
「「!??」」
拳が当たる刹那、たった片手で受け止め掴むヒーローの姿を見て、争う両者共に驚きのあまり時間が止まった様だった。
浮遊しているヒーローは牛の方を睨み言う。
「テメェ......俺の大事な相棒に何してくれてんだ?それに服まで台無しにしやがって」
衣服はダメになったが私の身体は幸いにも元気だ、それより九条さんの怪我がまずい。こんなにまでしやがってふざけるなよ。
「生きていたのねッ!!」
彼女はそう言うと動く方の手で涙を拭い喜んでいた。
そんなボロボロになっても私の事を想ってくれるだなんて......。
「モ゙オ゙オ゙ォオ゙!!!ヒト!屠サつ機会ガァ!!......っ!?ウデ離セぇ!!!」
私が受け止めた両手拳はミシミシと音を立てる。今はコイツを倒すより九条さんを逃さないとヤバい。
「私は大丈夫!九条さん!立てますか!?止血して離れられるならそのまま逃げてっ!!」
そう私が言うと逃したくない獲物なのか牛は狂った様に怒り始めた。何故そんなに殺気立っている?何故人間を襲う?
「ヒと!逃がさナいぞォお!!」
そう言うと奴は更に筋肉を膨張させて私の拘束から逃れた。
あろう事か非力な九条さん目掛けて走り始めたので、飛行してまた牛の前に出て頭突きをした。
互いに踏ん張って私は反動でクラクラする。
「誰が?逃さないって?............っいってぇ......カッコつけてらんないわ......ねぇ?争う理由は何?まずは落ち着いて......」
私は動機が知りたかった、それに話せばその分九条さんを逃す時間ができる。
「イヤだぁ、同ほうヲコろした!!お前ジャま!」
そう言うと九条さんから私にヘイトが向かってくれた様で拳を突き出し戦闘続行の意思を見せた。
「そうか......確かに嫌だよな。だが、こちらも黙って殺されない。私も同胞が大切だからね。......じゃあ......はぁ......ケリをつけよう」
そうだよな、仲間が殺されるのは嫌だよな......クソっヴィーガンになりそうだ。何故コイツと争わなければならないッ。コイツを簡単に悪として裁けない......。
「ぶるるふぉお!!」
牛は先手でストレートに右左連続ラッシュを繰り広げてくるが、腕でガードし懐に入り膝蹴るっ!そうして自分の身体を捻ってもう片足で横っ腹を蹴るッ!!
「ぶるるっ......ぐわああ!」
奴は痛みに耐えきれず大ぶりに飛びかかって来るが間一髪回避。そこを思い切り浮遊しながら縦回転して頭部に踵落としっ!
奴は地面に少しめり込むが私の足を掴んでヌンチャクの様に振り回す。
風を切る音を立てて周囲の構造物にぶち当ててきやがる!塀は砕け、街灯は90度に曲がり、電柱は鉄筋諸共折れた。
「ぎゃああああ!!ぐ、ぐぅ......オラァ!」
振り回される痛みに耐えて、隙を見て目潰しをしてやった。
「あがががだだだ......ぬぅ!!」
腕から逃れた私は吹っ飛び転がりながら壁にぶち当たった。
そこに壁ごと私を粉砕するべく飛び蹴りをするが、浮遊能力でふわふわと空中に退避した。
互いに息が切れ痛みを強く覚え始めたところで警察や自衛隊が来た。
「大丈夫ですかっ!あとは我々に任せてください!」
そう言うと彼らはアサルトライフルを向けて包囲した。だが無駄だ、奴をその武器程度では倒せられないっ。
「や、やめろっ!今の武器では奴に勝てないっ!」
それに隊員達は驚いてしまい牛に隙を与えてしまった。
牛は全力疾走し射撃をものともせず戦線離脱した。
「イまは!今は!決着はオアズケダァ!!!」
牛は進行方向の全てのものをぶっ壊して何か叫びながら逃げ去った。
「私ヲヨぶ声っ!聞コエる......ムカうぅ!!!」
そのまま道を曲がっていなくなった。
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病院 PM11:45
なんとか逃げて保護された九条さんは救急車に乗せられそうになったが、それより早く着かせられると私は主張して、彼女に痛み止めと止血剤を使用し優しく抱きしめて急いで飛行して無事到着。
容体は右腕解放骨折、肋骨折、全身打撲etc......と大なり小なり怪我をしたが命に別状はないらしい。
手術も簡単らしくすぐ終わり、今の最新医療技術を使えばすぐに退院できるらしい。
一応自分も検査したが無傷、もしくは治癒してしまっているらしい。その為突然の退院となった。
それと九条さんの病室に行くのが特別に許可された。
「失礼します、梶原貴音です」
自分が入院していた部屋に入院なのか......。
入室すると顔にガーゼをつけ素肌が見えるところはアザだらけで私はフリーズしてしまう。
「かじ、ごめんね。また助けられちゃったね......本当にありがとう......」
痛々しくもあり穏やかに微笑む九条さん。
違う、こんなの......これではヒーローじゃないッ。
それに九条さんのまた助けられちゃった、という発言に昔を思い出す。
あの時のに初めて出会い、私の運命を完全に変えた。昔は運が良かったから助けられたんだよなぁ......
過去回想に入ります。
評価などよろしくお願いします。




