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第10章:厄災の神と空腹の子供

第1巻:虚無のバグ (Volume 1: The Glitch in Nothingness)

第10章:厄災の神と空腹の子供 (Chapter 10: The God of Calamity & The Hungry Child)

【 パート1 - 混沌の味 】(PART 1 - THE TASTE OF CHAOS)

「死のデッド・バレー」の地形は、もはや人類帝国の古文書に何世紀にもわたって記されてきたものとは全く異なっていた。

昨夜まで存在していた鬱蒼とした枯れ森と、80万体もの腐敗した死骸の山は跡形もなく消え去り、そこにはただ、赤と黄色に煮えたぎるマグマの海が広がっていた。突如として発生したこの壊滅的な火山噴火によって吹き上がる有毒な灰と漆黒の煙はあまりにも濃く、朝であるにもかかわらず、太陽の光さえも地表に届くことはなかった。

まるで水素爆弾が投下された爆心地グラウンド・ゼロのようだった。地獄そのものが現世に顕現したかのような光景。

だが……その煮えたぎる業火の海の真上、中空に「彼」は立っていた。

クオン。

物理的な重力の法則を完全に嘲笑うかのように、彼は空中に静かに浮かんでいた。眼下のマグマから立ち昇る灼熱の上昇気流を受け、彼の新しい漆黒の外套クロークが、まるで太古の悪魔の翼のように激しくはためいている。しかし、その姿勢は恐ろしいほど無造作だった。両手をタイトな黒いズボンのポケットに突っ込み、空中で片足をもう片方の足に軽く交差させている。それはまるで、灼熱の液状化した炎の海の上ではなく、涼しい風の吹く公園をのんびりと散歩しているかのようだった。

しかし、彼の両目は全く別の、身の毛もよだつような物語を語っていた。

**左目:**光さえも溺れ死ぬほどの、漆黒の深淵ヴォイド

**右目:**放射能のように怪しく輝く赤紫。絶対的な破壊と『虚無』の純粋な怒りの頂点。

それにもかかわらず、彼の完璧な顔立ちには一切の感情が読み取れなかった。殺意もなく、神のごとき力を手に入れた傲慢さもない。そこにあるのはただ、『絶対零度』の眼差し。恐ろしいほどの空虚。宇宙を終わらせる嵐の前に訪れる、あの息が詰まるような静寂だった。

ゆっくりと、クオンは右手をポケットから引き抜き、人差し指を天に向けて突き上げた。

次のマイクロ秒、無限の『虚無』の暗黒エネルギーが彼の人差し指の先端に収束し、ブドウほどの大きさの小さな漆黒の球体を形成し始めた。

突如として、5つの自然元素——燃え盛る火の赤、深淵なる水の青、吹き荒れる風の緑、重厚な土の茶、そして弾ける雷の黄——が、その暗黒の球体の周囲を猛烈な勢いで周回し始めた。その速度はあまりにも天文学的で、まるで死にゆく黒い太陽ブラック・サンの周りを必死に回る惑星のようだった。

徐々に、恐るべき重力に引っ張られるように、5つの宇宙元素はすべて強制的に圧縮され、その小さな黒い球体の中心へと飲み込まれていった。ブドウ大の球体の周囲の空間と時間が激しく歪み、捻じ曲がる。まるで現実そのものが苦痛に泣き叫んでいるかのようだった。

【 システム警告:極度危険 (エクストリーム・デンジャー) 】

『パートナー』ノヴァの機械的な声が脳内に響いた。その声には初めて、微かながらも本物の切迫感が混じっていた。『その元素の融合体は極めて不安定です。見た目は単なるブドウ粒ですが、圧縮された「質量」は大陸の山脈一つ分に匹敵します。取り扱いには細心の注意を。それが爆発すれば……この世界の半分が消滅します』

クオンは無邪気に首を傾げた。その顔には相変わらず、空虚でぽかんとした表情が浮かんでいる。

「重い?」クオンは純粋な子供のような好奇心で、その神級の破壊球体を見つめながら尋ねた。「僕にはすごく軽く感じるけど」

ノヴァの警告を試すかのように、クオンは空中で無造作に人差し指を前に向けて弾いた(デコピンの要領で)。埃を払うよりも軽い動き。

スッ!

ゴオォォォォォッ!!

ドグワァァァァァァァン!!!

その一回きりの、いとも容易い指弾から、神の如き大気圧の衝撃波が爆発した! その力はあまりにも絶対的で、眼下に広がる広大なマグマの海が……完全に真っ二つに引き裂かれた!

古代の神話でモーセが紅海を割ったように、たった一つの衝撃波がマグマを割った。液状の炎は両側に追いやられ、数百フィートの高さのそびえ立つ壁となった。焦げ付いた地球の岩盤が露わになる。そして、空を覆っていたあの濃密で終末的な煙は……半径3キロメートル以内のものが、たった1マイクロ秒で完全に消し飛ばされた!

頭上の空は、一瞬にして澄み渡った。

「へえ……」クオンの黒と金の瞳に、子供のような無邪気な輝きが灯った。「これ、結構使えるね」

彼はゆっくりと『混沌のカオス・ボール』を顔に近づけた。ほんの数秒で惑星の半分を宇宙の塵に変えることができる、不安定な特異点。

そして……幼児のような全くの無邪気さで、彼は舌を出し……それをイチゴ味のキャンディーのように舐めた!!

バチバチバチバチッ!

純粋で混じりけのない破壊エネルギーの火花が彼の口から爆発した。圧縮された5つの元素の絶対的な怒りがクオンの舌に直接激突し、凄まじい衝撃波が彼の身体を駆け巡る。

だが……苦痛に叫ぶ代わりに……クオンの顔に、身の毛もよだつような、絶対的な狂気の笑み(サイコ・スマイル)が咲き乱れた。彼の目は純粋で狂気的な興奮に見開かれた。

「ちょっと酸っぱい……」クオンは温かい唇を舐めながら微笑んだ。「でも……僕を斬ることはできない。僕を燃やすこともできない。だって……これを作ったのは、僕なんだから!」

「アハハハハハハハ!」

クオンの神級の狂気的な笑い声が、澄み渡った空と引き裂かれたマグマの壁に反響し、まるで悪魔の宴のように響き渡った。

今日、真の『厄災の神』が正式に誕生した。

【 パート2 - 死の鬼ごっこ 】(PART 2 - THE DEADLY TAG GAME)

眼下、引き裂かれたマグマの海から少し離れた場所にある、最後に残った巨大な岩の陰に隠れていたレオ、リア、そしてセラの3人は、文字通り胸の中で呼吸を止めていた。

彼らが今、上空で目撃したものは、定命の者(人間)の脳が持つ理解と論理を完全に超えていた。世界の半分を消し去るほどの『死の球体』……あの少年は、それをまるで安い飴玉のように舐めていたのだ!

セラは激しく震えていた。彼女の蛇のような尻尾は恐怖で完全に縮み上がり、彼女自身の足にきつく巻き付いている。

「あ、あいつ……私たちを殺す気だ……」セラの唇は震え、今にも涙がこぼれ落ちそうだった。「私たちを生かしておくはずがない……逃げて!」

だが……3人が背を向け、必死に命からがら逃げ出そうとした、まさにその瞬間。

ズンッ!

空気が激しく歪んだ。恐ろしい真空音が彼らの耳のすぐそばで弾けた。

1マイクロ秒前まで、クオンは遥か上空で破壊の球と戯れていた。

しかし、そのちょうど0.01秒後……彼は3人の鼻の先に立っていた! 風を切る音もない。派手な魔法陣もない。

レオは目玉が眼窩から飛び出そうなほど見開いた。「!!?」

3人の悲鳴は喉の奥で詰まり、死滅した。血管の中の血が瞬時に氷へと変わる。まるで死神そのものが目の前に顕現し、次の瞬間には自分たちの首が肩から優雅に切り離されるのだと感じた。

だが……クオンは何も起こさなかった。

彼は新しい漆黒の外套を羽織り、ただ静かにそこに立っていた。あの狂気に満ちた世界を終わらせるような笑顔は完全に消え去り、再びあのぽかんとした、無邪気で純粋な表情に戻っていた。彼は瞬き一つせず、ただその大きな黒と金の瞳で彼らを見つめ、彼らが次に何をするのか辛抱強く待っているかのようだった。

その1秒間の絶対的な沈黙は、3人の生存者にとって地獄のような1世紀に感じられた。

絶対的な恐怖、アドレナリン、そして生々しい生存本能に突き動かされ、3人は何も考えなかった。彼らはただ、枯れ果てた森の残骸に向かって、持てる全てを懸けて走り出した!

タッタッタッタッ!

まるで死神自身が抜き身の鎌を持って追いかけてくるかのように彼らは逃げた。肺は火のように焼け焦げ、毒で弱りきった足は苦痛に悲鳴を上げていたが、彼らはほんの一瞬たりとも立ち止まる勇気を持てなかった。

獅子族ライオン・キンであり、身体能力で最も勝るレオは、最後の息を振り絞って全力疾走していた。汗が顎から滝のように滴り落ち、視界がぼやける。

走りながら、彼は恐怖に駆られて横をちらりと見た。あの化け物が追いついてきていないか確認するために……そして、彼の心臓は文字通り鼓動を止めた。

クオンが、彼のすぐ隣をのんびりとジョギングしていたのだ!

彼の恐ろしい神級のオーラは完全に『ゼロ』になっていた。まるで、涼しい朝の公園の散歩を楽しんでいる、ひ弱で普通の人間の子どものようだった。彼の顔には、明るく、信じられないほど甘く、そして興奮した笑顔が浮かんでいた。

彼らの視線に気づくと、クオンは純粋な子どものように大声で笑った。

「もっと速く! 君たち、走るのすごく遅いね!」クオンは純粋な興奮と共に両手を宙に振り回しながら歓声を上げた。「捕まえて! ほら、僕を捕まえてみてよ!」

リア、レオ、セラの脳は、完全に壊滅的なショートを起こした。

これは魔法の攻撃ではない……この絶対的な化け物は、彼らと『鬼ごっこ』をして遊んでいるのだ! 彼らが必死に逃げている『死』そのものが……彼らと一緒に『かくれんぼ』をしたがっていた!

約10分という拷問のような時間、クオンは彼らを廃墟となった森の中を走り回らせた。ついに、3人の生存者の肉体的・精神的限界は完全に砕け散った。彼らの勇気とスタミナは永遠にログアウトしたのだ。

ドサッ! ドサッ! ドサッ!

3人は死の重りのように硬い地面に重く倒れ込み、激しく喘いだ。呼吸はあまりにも乱れ、肺が肋骨から破裂して飛び出しそうだった。指一本動かすことすらできなかった。

クオンは彼らのちょうど2歩前で立ち止まった。彼の額には一滴の汗すらなかった。呼吸は完全に穏やかで正常だった。

彼は握り拳を空高く突き上げ、純粋な喜びと共に跳び跳ねた。

「僕の勝ち! アハハ! 僕が一番だ!」クオンは純粋な子供のお祝いのように歓声を上げた。「君たちの負けだよ!」

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