異端?
ようやく眠りについたと思ったが、朝早くに私の部屋をノックされた。
(……誰、こんな早くに)
のそりと起き上がり、扉を開こうとするとコンコンコン…っとノックし続ける音がある。
ゆっくり開けるとそこにはエレーナさんがいた。
「……酷い顔ね」
見るなりいきなりの言葉。
多分気になり、あまり寝ていないからだろう…。
「こんな早くに……」
「も、もう忘れたの?あなた、ここで働くんだけど……」
「働く?……あっ」
一気に目が覚めた。
それと同時にすぐに謝っていた…。
ため息を吐き、少し呆れ顔のエレーナさんだったが、すぐにいかないと怒られるといい、私を部屋から引っ張り出して行った。
「どこに!?」
「調理場。朝なんだからご飯でしょ、アルバート様……いや、リースさんの方が怖い、かも」
引きながら私に説明するが、その足取りが結構早い。
「遅くなりました!」
エレーナさんは調理場に入ると私の横ですぐに頭を下げて謝っていた。
「ほ、ほら、あなたも……」
小声で私に合図するので同じように謝った。
「……初日から遅刻なんて、『初』だわ」
「す、すみません。私がちゃんと起こさ……」
「いいえ、起きない方が悪い」
いきなり怒るリースさんだったが、私にも言い分はある。
だって、時間など聞かされていないのだから…。
「レオナ様の妹といっても甘くするつもりはないんだからね。……早く手伝いなさい」
「すみません!?」
エレーナさんはすぐに後についていき、手伝いを開始していくが、私は調理場にいる人達の事を全く知らないため、入った場所で固まってしまっていた。
「……レナさん、こっち」
周りに気づかれないようにエレーナさんが私を呼び、指示を出してくる。
「ほら、出来たよ。アルバート様に持っていきなさい」
リースさんは出来た料理を木のお盆に載せると私に声をかけてくる。
「……私?」
「……エレーナ、この子、何??」
「すみません!……ちょっと、アルバート様の担当はあなたでしょ。早く…」
「はぁ」
「……ったく。本当にこんな子でいいのかね、アルバート様も」
初めてなんだからもう少し優しく言ってくれたらいいのに…と不満に持ちつつも、私はそのお盆を持ち調理場を出て行った。
(なによ、あの言い方……お姉様以外にもあんな言い方する人いるなんて……)
悶々とした気持ちのまま私は階段を登り、アルバート様の部屋の前についた。
ただ、持ったままではしづらいので、下品ではあるが、足でコンコンっとノックをした。
しん……
まだ寝てるのだろうか。
返事がなく、しばし私はその場で待ち、もう一度足でノックした。
「……っ」
すると扉が開き、不機嫌そうなアルバート様が姿を見せた。
「なんだ?……もう飯か。入れ」
私よりも持つお盆に目を通すと、扉を開き招き入れてくれた。
二度目のアルバート様の部屋。
昨日から何も変わっていないが、唯一変わっているのは寝起きの姿だ。
部屋では赤いガウンを羽織っており、髪の後ろが少し跳ね上がって寝癖を作っている。
「ここに置いておけ」
応接用の机に置く指示を出した後、アルバート様はまたベットへと戻ろうとしていた。
「えっ、た、食べないんですか?」
つい私は口に出してしまっていた。
それを聞いて戻ってくると、ようやく私の事を認識してくる。
「……あぁ、おまえだったな。今日から」
「はい……」
「悪いが俺は朝が弱い、適当な時に食べるから置いとけ」
弱いというが、私はなんとなく思った。
アルバート様が食べる時間など知らないし、それにいつまでも食器を持ってこなければまたリースさんに怒やされるのでは…と。
「だめです。食べてください」
「はっ?」
「ちゃんと食べてください、じゃないと私が怒られます」
「……誰に怒られるんだ?」
「……リースさんです」
今までの使用人ではあり得ない言葉を発する私に、アルバート様は少しジッと見てきた。
「……なにか?」
「意外にものを言うタイプなんだな」
「えっ」
私に負けたのかアルバート様は椅子に座ると少しずつ食べ始めていった。




