引き継ぎ
中へと入るとすぐそこにはアルバート様が私達の事を出迎えていた。
「悪かったな、連れてきてもらって」
「いえ」
エレーナさんの後をついていき、中へ入る私の目に入ってきたのは部屋の内部。
アルバート様の後ろには大きな窓が二つ、そして右に目を移すとそこには長机と椅子が置かれ、そこには書類だろうか、いくつもの紙が散らばっている。
机の前には応接用の机と椅子。
だけど、それはとても豪華で天板は大理石である。
さらに部屋の中にはワインセラーや食器棚などがあり、
一瞬でそれらに目を奪われた。
そんな目を動かし見て回る私をみて、フッと笑うアルバート様がいた。
「そんな見渡すな。どうせすぐ慣れる」
「……私はこれで」
エレーナさんは私を残し去って行こうとした。
「ま、待って」
でも私はそんなエレーナさんを引き止める言葉をかけていた。
少し困惑するような顔を見せるエレーナさんをアルバート様は『ほかにもやる事がある』と私の言葉を一蹴し、部屋を出て行かせた。
二人きりになった部屋の中、姉の事を言うチャンスであるのだが、何故かそれに対する言葉がなかなか出てこなかった。
(いまがチャンスでしょ、私……)
思えば思うほど何故か出てこなかった。
「……緊張でもしてるのか?」
「えっ」
「言ったはずだが、お前はやめた使用人の代わりになる。そして俺の世話をするのが役目だ。
緊張ばかりされたら頼める物も頼めなくなるから早めに慣れろ」
「……はぁ」
緊張していると思ったアルバート様は部屋に置いてあるワインセラーに向かい、一本のワインと二つのグラスを取り出してきた。
「少し飲むか?」
「い、いえ!私は全く飲めないので!」
「……そうか。それも困ったな」
「あの、どういう……」
ワインを応接用の机に置きコルクをポンと開けると、ゆっくりとそこに注ぎ出し、一口飲んでいく。
「お前は、俺の仕事の手伝いをしてもらう」
「仕事?」
そういうとグラスを持ち、応接用の机から書類が置かれた机へと移動し、座り出す。
「とりあえずここに来い」
言われた通りその机へと向かうと、そこに置かれた書類を目の前にバサっと置かれた。
「それはこの国と他国との貿易のやり取りの物だ。毎年お互いで取り決めて交流している。今までは辞めた奴が補助していたが、それをこれからはお前がするんだ」
「え、そんな難しい事を……」
「難しく考えるな、ただ隣に座り書けばいい、それだけだ。……だが」
「だが??」
「他国との交流と言っただろう。ならこの国以外の場所に行けばこうやって飲む機会も自然と出る、特に人が変わればそういう事は必ず発生する。
全く飲めないのでは格好がつかんだろう」
「……」
言ってる事は分かる。
でも私は一口飲んだだけで吐いたことがある者だ。
しかも、それを見られ貶された経緯がすぐに思い返された…。
「無理に沢山飲めとは言わない、そこは俺がフォローする」
「……はぁ」
「気を負うな、すぐに他国に行くなどは無い。行くまでに多少は慣れろ。いいな」
「わ、分かりました……」
話し終えるとアルバート様は残ったワインを飲み干し、私を部屋から出していった。




