死人の家
リックさんが走ってきた事で逃げようとしたのだろう、シュッとその人影は姿を消していった。
だけど…。
「アルバート様」
ずるずると引きずる形でリックさんは男性をこちらへと持ってきた。
しかし、私を痛めつけた男性ではなく、さらにあの時いた男性達の中にも無い顔だった。
金髪で長髪、あの人達みたいに宝飾品を身につけ、足元には鋭く尖った靴を履いていた。
「……お前もダークズの一人か?」
アルバート様はその男性に問い掛けるが、押し黙ったままだった。
すると、リックさんに目を向け何かを合図していく。
「ぎゃぁぁ!?」
男性を地面へと押し付け、右手を体の後ろに深く曲げていく。
「いいのか。折れるぞ?」
「や、やめろ」
「なら、答えろ。悪いが、俺はそんなに気が長い方じゃない」
「……」
「リック」
さらに深く曲げようとする。
「わ、わかった!……そうだ」
私は怖くなり、後退りして扉の方へと寄っていった。
「なぜここを見ている?お前達の親玉の命令か?」
「……死んだと聞いた。それにその娘が出て行ったから中に入り他に金目の物がないか確認してこいと」
男性の目線が私に向けられた事で、一気に扉へと背を預ける形で下がった。
と同時に、皆の目も私に向く。
「それに、あんたはこの国の王子だろう?
……しかもその隣にいるのはレオナか?借りた金は返してもらわないとな!?」
どうやらその男性にも姉と私の事はバレており、アルバート様に返金する事を要求してきた。
「……銀貨一枚も返す気にならんな」
「あ“ぁ?!」
ボキっ
何かが折れる音が響いた。
と同時に痛がり、地面へとゴロゴロと転がる男性がいた。
リックさんが折ったようだ…。
「連れていくぞ、こいつに色々吐かせる」
アルバート様はリックさんに指示を出し、男性を乗ってきた馬車へと押し込み始めていく。
「レオナ、今日は家で休め。明日迎えに来る」
「えっ?」
「レナも、いいな?」
アルバート様は姉の手をスルッとすり抜け、馬車へと戻ると去っていった。
去る馬車を私達は静かに見送り、次第に見えなくなった。
ーーーーーーーーー
夜…。
家の外にはあの二人の使用人が交代で見張る形で用心してくれていた。
「なんでまたここにいなきゃいけないのよ!」
姉は癇癪を起こし、文句ばかり述べていた。
そればかりか、埃臭いだの今まで過ごした家を貶すことばかり言っていた。
「落ち着いたら?」
「落ち着く!?……出来る訳ないでしょ。死人がいた家よ。恐ろしくて眠ることなんて無理だわ。
しかも私の部屋は隣よ!!?」
「じゃあ、私の部屋と交換しようか?」
「はぁ!?」
「嫌ならそうすればいい」
「……あんたの部屋は寒すぎるのよ!一晩でもいたら凍え死ぬわ。
私はあったかい羽毛の布団に包まれ、ふかふかのベットじゃなきゃ寝れないのよ!?」
ずっとそんな環境でも無く育ったのに、今ではもう寝る事さえ無理だと告げる姉は我儘もいいとこだ。
「じゃあ起きていればいい。……じゃあね」
私は姉を無視し、自室へと行こうとした。
「待ちなさいよ!」
すぐに姉は私の後を追ってきた。
「なんで来るの?」
「こんな家にポツンといるのが怖いに決まってるでしょ。……あんたのベット貸しなさいよ」
私はふっと笑ってしまった。
「なに笑ってるのよ!私は姉よ!?妹は姉の……」
「貸す気にはなれない。床でいいなら貸すけど?」
カチンと来たようだ。
姉はすぐに私を廊下の壁へと押し付けはじめてきた。
「……大事なスワロフスキーが落ちるよ」
「あぁ!?うるさいわね!さっきの言葉は何っ!?
床なら貸す?……ふざけるのも大概にしなさいよ、あんた!?」
掴みかかった姉の顔は紅潮し、頬は真っ赤だ。
そればかりか耳まで真っ赤に染め、怒りは頂点に達しているようだった。




