ダークズ
先を走る馬車にはアルバート様と姉と私。
後ろを走る馬車にはラルフさんとリックさん、そして二人の男性使用人が乗っており、馬車には父を運ぶための棺が連結されていた。
「……あぁ、お父様ぁ」
馬車内では姉が悲しむ声を上げ、アルバート様に寄り添っていた。
「レオナ……」
悲しむ姉を落ち着かせようと自身へと引き寄せていくアルバート様を私は見ていた。
「ところで、レナ」
「は、はい」
「お前には何か言ってなかったのか?」
「何か、というと??」
「自身の後、こうして欲しいとかそういう事だ」
「遺言、ですか?」
「あぁ」
私は造船所の事を話し、そこで奪われた権利証のことも伝えた。
「造船所、か」
アルバート様は窓の外を見て何かを考えているようだった。
「他にはないのか?」
「他……」
私は考え込んでいると、姉が口を開いてきた。
「アルバート様、あの、前にお話しした……」
「前?」
「えっと、……お金」
「あ、あぁ」
どうやら父の借金についてのようだ。
「……ダークズ、か」
初めて聞く名前だった。
だが、アルバート様や姉は知ってるようで…。
「あの、その名前は?」
私は恐る恐る聞いてみた。
「ロイドが借りたのがダークズという連中だ。
街でひっそりと佇み、決して表立って貸す者達じゃない。
だが、貸せばどんな事をしてでも取り立ててくる」
「どんな事でも……」
私は痛めた体を摩り出した。
だけど、痛めつけられ青紫色をしたアザがバレないようにとベージュの長袖のカーディガンを羽織っていた。
「なんだ、痛いのか?」
「い、いえ」
答える私だったが、姉には気付かれているようで…。
ーーーーーー
「あぁ!お父様!?」
家に着き、父の部屋に入るとすぐにまた姉は声を上げ悲しんだ。
ベットに青白い顔で眠り続ける父はもう二度と起きる事はない…。
「本当に亡くなっているとは……」
ラルフさんが声を上げ、私の事を見てきた。
亡くなった父を見てアルバート様は胸に十字架を取り、祈りを捧げていた。
それを見て周りの人間も同じように父に対し、祈りを捧げていく。
姉だけを除き…。
「……ラルフ、丁重に運び出せ」
「はっ」
すぐにラルフさん達は手分けし、父を持ち上げゆっくりと家の外へと運び出していき、馬車の後ろに連結させた黒い棺へと父を入れていった。
収まる棺の蓋には金色の大きな十字架が刻まれている。
「アルバート様」
運び出す準備が整ったのを確認するとラルフさんが声を掛けるが、そちらではなく、右手の方向を見ていた。
それを見て私と姉はそちらへと目線を向けた。
すると、街の建物の壁に沿うようにこちらをみている人影が少しだけ見えた。
「奴らがいるぞ」
「……えっ」
アルバート様の声に反応し、ラルフさんやリックさん、そして使用人達がその方向を一斉に向き始めた。
「あの、アルバート様、私、怖いです……」
姉はすぐにアルバート様の左腕に引っ付く形で寄り添い、その腕をギュッと握りしめていた。
「心配するな、レオナ。……リック」
若いリックさんに声をかけ、対処するように命じるとリックさんはその場所へと走り始めて行った。
また、他の二人の使用人も後を追うようにリックさんに付いていった。
「あの人達、ナイフを」
私は刃物を持ってる事をアルバート様に伝えるが、『心配ない』と私に告げてくる。




