死後
中を開けると紙質の良い書類がいくつも出てきた。
「権利証?」
よく見ると、家と造船所の権利証のようで、その他には亡くなった際の対処に関して書かれた紙があった。
それによると造船所は閉鎖、家については私が跡を継ぐという感じだった。
その紙を読んでいると、開いた引き出しの奥にまだ何かあるようで……。
「これは……」
引き出しの奥には私が持っている巾着袋と同じ物があり、それを開けると沢山の金貨と小さな紙が一つ入っていた。
『このお金はお前の物、生きるために使え』と短く書かれた紙。
私には何も残せないと言っていた父が残してくれた唯一の物。
その袋はとても重く、持つ手は涙で滲み、落としてしまった。
「お父様……」
すぐ側で眠る父に対し、私は頭を下げお礼をした。
ーーーーーー
父が亡くなった次の日、私は家からほど近い造船所を訪れた。
小さな時は遊び場として来ていたが、段々大きくなってからは近寄らなくなり、来るのはもう10年近く経っていた。
船を造船しているのだろう。
木を叩く音、切る音。
昔と変わらず何人もの人がそこで作業をしている。
「なんだい、お嬢ちゃん?」
私は造船所の入り口でお父様と同じくらいの男性に声を掛けられた。
少し白髪混じりだが、体格は良く、着る白いシャツは少し泥がついているようだ。
「あの、私は……」
父の娘であることを伝えると、すぐに聞いてきた。
「あぁ、所長の娘か。最近みないが、どうした?」
「それが……」
「えっ、本当か?皆を呼んでくる!」
その男性はすぐに造船所の中へと駆けていき声をかけているようだ。
すぐに手を止め私の元へとぞろぞろと人が集まってきた。
「亡くなったって、本当か?」
口々に私に質問責めしてきたので私は持ってきていた権利証を見せながら今後について話し始めた。
「……そうか。閉鎖、か」
「生活はどうなる?」
落胆の色を隠せない面々に私は父からの遺言である
『ここを売ってお金にしてそれを皆に』と伝えた。
退職金代わりとして受け取って欲しいとの言葉を伝えるが、すぐには納得できないようだ。
無理もない…。
当然のように続く生活だったものがある日終わりを迎えるのだから。
「……あんたが後を継げばいいのでは?」
「えっ」
私を囲む内の一人がそう告げると、周りもそれに呼応するかのように継げと言ってきた。
「私は……」
「そうだ、そうしたらいいじゃないか。ここがなくなると困るのはあんたもそうだろう?」
同調する周りの人も加わり、私に強く継ぐ事を要求してきた。
だが、そんな時だった。
「あんた、ロイドんとこの娘だよな?」
振り返ると見た事もない若い男性数人が私の近くに現れた。
その言葉に私も周りにいる人達も全員その男性に視線を向けた。
「あの、どなた、ですか?」
「俺らはロイドに金を貸した者なんだが?」
いかにもチンピラ風な男性。
首や腕にキラリと光る宝飾品を身につけ、私に向けるその眼光は鋭く、まるで獲物を捕まえようとする蛇のようだ。
一人は私に迫り、他の男性は私の周りにいる職人達を威圧し始めていた。




