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先立ち

馬車に乗った姉は次第にその姿を小さくしていき、そして私の視界から見えなくなった。


「ふぅ……」


大きな荷が降りた気がして私は深く息を吐き、家の中へと戻っていった。

姉がいなくなった家の中は何故か少し新鮮な気がして周りを見渡してしまった。


(これで邪魔される事はない)


うん、っと首を縦に振り父の介助へと向かった。





ーーーーーー




あれから一週間、二週間と過ぎ、姉がいなくなってから1ヶ月が経とうとしたある日。


「ごほっ」

「お父様!」


父は私の前で咳き込むと苦しそうに胸を押さえていた。

父の体は限界を迎えているようだ。

以前に増して頬はこけ、腕なんて私と同じくらい細くなってしまっている。

目も虚ろで目の下には黒いクマが出来ている。


「はぁはぁ……」

「これを」


私はすぐにコップに注いだ水を手渡し飲まそうとした。

だが、飲む力さえも弱くなっているのかあまり飲もうとしていなかった。


「……レナ、もう俺はダメだ」

「そんな、気を強く持って、お父様」

「それより、今から言うことをちゃんと聞け」


苦しそうに話す父を私は無理に話す必要はないと拒否するが、父はそれを許そうとせず、持ったコップを私に返してきた。


「いいか、よく聞け」


父はベット脇に置かれた丸い円卓の机の上に置かれた茶封筒を渡してきた。


「……これは?」

「俺が死んだら開けろ、そしてその通りにしてくれ」

「遺、言、……いやだ!」


私は茶封筒を拒否したが、父はお前しか託せないといい、無理矢理握らせてきた。


「本当はあいつじゃなく、お前の方を大事にするべきだった……」


今までの事を思い返すように天井を見上げ、悲しそうな顔を見せている。


「……だからいいな、その通りにしてくれ」

「お父様」


伝え終わると父は私が持つ茶封筒に右手を乗せる形で静かに目を閉じた。


「お、父、様?」

「……」

「やだ。……いやだぁ!?」


体を揺らすが父はそれ以上目を開けることはなく生涯を閉じた。






グズりながら隣にいる父をゆっくりとベットに寝かせ、手を体の真ん中で組み手を合わせた。


しばらく何も手がつかず、父の隣に座り、沈み込んだままじっとしていた。

窓の外に昇る日は傾き、次第に部屋の中は西日が差すような時間になってきた。


だけど私は何もせず眠るように動かない父を見ていると、手から茶封筒がするりと床に落ちた。

落ちた封筒からは金属音が聞こえ、父の言葉を思い返した。



『その通りにしてくれ』



そこで初めて私は渡された茶封筒を破り、中を見ると紙が数枚、そして、見た事もない鍵が一つ入っていた。

先端が二股に分かれた少し古びた鍵。


入っていた紙を読むと、私への謝罪と、自身が亡くなった時の行動が記されており、その中に鍵を使う場所も書かれてあった。


「机の引き出し……」


書かれていた場所はベットから向かい側にある長机の引き出し。

私はゆっくり立ち上がり向かいに移動すると、右上の引き出しだけ鍵穴があったのでそこに鍵を刺して回してみた。


カチャっと音を鳴らし開錠した事を知り、ゆっくり開くと、白い大きな封筒が入っていた。


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