本性
「あなたは確か……」
「リックです。先程はどうも」
「い、いえ……あの、何かご用ですか?」
「レナさんに、少し」
「レナに?」
二人の会話が聞こえ私と父はその元へと行くとリックさんは姉の横を通り、私の前へとやってきた。
「レナさん、こちら、お忘れですよ」
リックさんは私に姉から貰った青いシュシュを差し出してきた。
「これ」
「えぇ、馬車に落ちていたそうですよ」
「そうですか、ありがとうございます」
「良かったわね、レナ。忘れちゃダメじゃない」
渡されたシュシュだったが、私は姉の前でギュッとそれを握りしめた。
「ちょっと何してるの?せっかく買ってあげたのに」
「……要らない、こんなの」
私は握った手を姉の前へと差し出した。
だが、それが何を意味するのか分からない姉は首を傾げていく。
「私はこんなの付けない。お姉様からの厚意なんて要らない!」
そういうと私はパッと手を開き、シュシュを姉の目の前に落とした。
ポトリと落ちたシュシュは握り潰した事で丸い原型を失い、歪な形へとなっていた。
「……な、なに言ってるのよ、レナ。似合ってるのに」
「そんな事ない。似合う訳ない」
「どうしたのよ、急に。らしくないわよ?」
リックさんの前だからか、いつもなら罵倒するくらい怒ってくるのにそれは鳴りを潜めていた。
「……怒ったら?」
「はぁ?」
「いつもみたいに怒ったら?」
「怒る……?いつもみたいに……?なに言ってるの」
惚け続ける姉に私は両手で体を突き飛ばした。
「ちょっと!」
「怒る気になった?リックさんの前だから抑えているんでしょ?」
そういうと姉はリックさんを見る。
「いやですわ、今日はちょっとレナの機嫌が……」
繕う姉だったが、リックさんが口を開いていく。
「……申し訳ありませんが、ロイド様から聞いてます。
あなたとレナさんは仲は良くない。
何かあれば怒鳴りつけ、従わせるというのも聞いてます」
「……」
リックさんの言葉を黙って聞きながら、私と父の事をみてくる。
「はぁ……」
大きくため息を吐くと、リックさんに答え返した。
「そうよ、私はレナが大っ嫌い。うじうじ、オドオドするこの子がね!見ているだけでストレスが溜まってしまう。
でも、いいの。私はアルバート様の妻になるのだから。
リックさん、あなたがそれを拒否できるのかしら?」
「……」
「あら。黙るって事は『出来ない』って事よね?」
「……否定できません」
「そうよね、だってアルバート様は王子様なんですもの。とてもお偉い人。そんな人に逆らったらどうなる事やら」
会話を聞いていた父がゆっくりと割ってきた。
「レオナ、どうせすぐバレるだけだ。アルバートは諦めろ」
「はぁ??諦めろ???」
「取り繕ってもいつか無理が来る。その時後悔するのはお前だぞ」
「いいえ、私はやり切るわ。そんな事よりお父様、自分自身の身を考えた方がいいのでは?
今でもほら、足元がふらついているわよ」
姉の言葉に私とリックさんは父の事を見ると、確かに小刻みに足が震えているみたいだった。
「お父様……」
私の方を見るが、父の息遣いは荒く、ぜぇぜぇ…っと苦しそうな表情を見せた。
「そんな様子じゃもう厳しいわね。お祖父様から貰った造船所ももう終わりね。……って、そうよ。造船所よ」
姉は何かを思いついたみたいで私に語りはじめてきた。




