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口論

渡された便箋を破り、中を確認するとそこには

『レナ=イシュバール、貴殿を雇う事にした』とあり一週間後の昼に来る様に、と短く記され紙の右下にはアルバート=ウォーレンとサインがあった。


「良かったな」

「……うん」

「なんだ、嬉しくないのか?」

「そうじゃないけど……」

「……レオナならほっとけばいい」

「そんなこと言ったってお姉様はアルバート様と!」


私は先程見た光景を思い出し、いずれ上手くいってしまう事を父に嘆いた。


「……そうか、だとしたら屋敷で会う訳か」


私の言葉に父も感じたようで複雑な表情を見せてくる。




ーーーーーー




「あら、二人ともそこで何を?」


あれから姉が帰ってきてはすぐに私達に声をかけてくる。

だけど、表情はかなり緩みニヤニヤしている。


「まぁ、どうせ私の悪口でしょ。いいわよ、慣れているし。……それより聞いて!」


姉は今日の出来事をベラベラと聞いても無いのに話し始めてくる。

身振り手振りを交え、それはもう饒舌に……。


「……そうか」

「なによ、その態度?あ、分かった。本当は嬉しいのに隠しているのね。隠す必要なんてないのに……。

思いっきり喜べは良いわよ、お父様」


姉はアルバート様と上手くいったから借金も無くなる事を喜べは良いと告げるが、父は反論していった。


「借金の事はもうどうでもいい、……そう長くない」

「へっ」


一瞬驚く表情を見せた姉だったが、すぐにピンっときたようでうんうんと首を縦に振りだした。


「そっかぁ」


普通なら悲しむとかなのに、姉は違った。

むしろ喜びのような返答を見せてきたので、私は思わず声を上げた。


「なんでそんな感じなの?」

「なにが?」

「なにが、ってお父様、死んじゃうのよ。なのに悲しくないの?」

「だって、いつか人は死ぬのよ?それが早いか遅いかじゃない?」

「……」


姉のあっけらかんな言葉に私の中で何かがフッと落ちた。


「これ」


私は姉に近づいて父から渡された便箋を見せた。


「これは?」

「見たらわかる」

「なによ、一体?」


不満気な顔を見せつつ、中を確認し、その内容を読むとみるみる姉の顔は変わっていった。


「どういう事!あんた、屋敷にいったの?」

「行った」

「しかも雇うって書いてあるわ、アルバート様のサインまである!……説明しなさいよ!?」

「説明も何もそこに書いてある通りだよ」

「はぁ!?あんた、私に黙っていたわね」

「黙るもなにもお姉様は私が嫌いでしょ、言う必要なんてない」


私の言葉にムカついた姉は渡された紙をビリビリと破り捨て大広間の床にぶちまけた。


「無効よ、こんな物!すぐにアルバート様に撤回してもらう」

「破ったって無理でしょ?一週間後に来いって書いてあるんだし」


苛立つ姉は私との口論を諦め、再び屋敷へと向かおうとし扉へと戻っていった。


「きゃっ」


開こうとした扉は急に開き、驚きの声をあげた先にはリックさんが現れた。


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