やり取り
その雰囲気はもう恋人同士の空気だ。
支えられた姉はあろう事か、私達が後ろにいるにもかかわらずアルバート様の胸の中に飛び込んでいった。
「レオナ?」
「嬉しいです、アルバート様。私を気遣って支えてもらえるなんて」
「……バラもあるからな、棘にでも刺さったらそのドレスも台無しになってしまう」
「まぁ、そこまで……なんてお優しい」
胸に顔を埋める姉に私は顔を背けた。
もう見たくない、これ以上ここに居たくないと思ってしまい、リックさんに体調が悪いと申し出た。
私は姉達から離れ屋敷を入ってすぐの場所に移動した。
「大丈夫ですか、レナさん」
「……はい、すみません」
「お姉さんは、なんというか……」
「あざといんです。だから皆、騙される。このままいったら私……」
本音をリックさんにぶつけた。
でも……。
「レナさんの気持ちはよく分かります。
でもアルバート様が選ぶ人を私達が拒否出来ないんです」
「それは、分かってます……でも……」
泣きそうになってしまうが、迷惑がかかる。
そう思った私は必死に涙を流すのを我慢した。
そんな私にリックさんはソッとスーツから一枚のハンカチを取り出し、私に差し出した。
グレー色のハンカチで目元を触れるとすぐにその箇所は黒く変色していった。
「レナさん……」
「ごめんなさい……」
「今日はもうお帰りになられた方が」
「姉は……?」
「気にしなくていいです。馬車をもう一台出せば良いこと」
「そんな、悪いです!」
「一緒に帰るほうが辛いだけですよ?」
「……」
リックさんの提案に乗り、私は一足先に帰宅することになった。
ーーーーーー
「レナ!」
先に一人で帰り、大広間に姿を見せた私に父は驚いていた。
「なぜ?」
「……ちょっと」
少し腫れた目元を見て、父は何かを感じたのだろう。
はぁ……とため息を吐くと、目の前にある赤ワインを手にしようとしていた。
「えっ、ちょっとお父様!なにを!?」
まだ昼間。
だが、そこに広がる光景は散々だった。
いくつも酒瓶が並び、どれもこれも空だ。
「いつから飲んでるの!……それより飲んでいたら体が!?」
私は姉から聞いた父が病気に蝕まれている事を思い出し、つい口に出していた。
自身の体の事は知らないであろう私が口にする事で飲みかけた赤ワインの手を止めた。
「そうか、お前知ってるんだな。……レオナか?」
「……うん」
私は姉から聞いた父の病気についてゆっくり話し始めると、黙ってその事を聞いていた。
だけど、聞き終わると一口、グラスへと口を付けた。
「なんで飲むの!?」
「……自分の体だ、自分が良く分かってる」
私は屋敷で聞いた国王の言葉を思い出した。
「そうだとしても、今飲むのは絶対に良くない。もう止めて!」
必死の訴えに父はグラスを置き、自身の身に起こってる出来事をゆっくり話し、そろそろ危ないという事を私に教えてきた。
手の震え、ふらつき。
今までもあったが、最近は如実に多くなってきてるそうで……。
「……ちゃんとお医者様に診てもらった方が。あっ、私、知ってるから」
さっき会ったばかりのエリスさんを口にし、すぐにでも行動を起こそうとしたが、それを父は止めた。
「……いや、いい。それよりコレを」
父はすぐ手元にある便箋を私に差し出した。
ずっとそこにあったのに私はそれの存在を全く気づいてなかった。
目に入った酒瓶ばかりに目がいき、目立つ茶色の便箋の事など眼中に無かった。
「それは……?」
「お前、屋敷で働きたいんだってな。中を見てしまって悪いが……」
「あっ」
父の言葉で私は思い出した。
屋敷での面接の結果だ……。




