内部へ
「情報……」
「えぇ、そうよ。情報よ。耳にしたり見たりしなければ知り得ないけど、それを知ってるだけで有利になる事だってある。……だから私はお父様より上になった。
あんたは他人と接する事もせず、篭ってばかりだからそういう情報を手に出来ないのよ」
私の性格を卑下し、それだから良い機会も手に出来ないと告げてくる。
そこは否定する事も出来ず、掴まれた手から私は力を抜いていった。
舌戦に屈したと思った姉は両手から手を離し、再度向かい側へと移動していくと馬車は足音を徐々に緩めていく。
それと同時に姉は窓の外を見て『はぁ~……』と羨望な声を発していた。
「これがアルバート様のお屋敷かぁ。……いえ、私の家ね。ふふっ」
姉の視線は窓の外の上の方を見ていた。
知りもしないアルバート様の部屋を探している様子だ。
馬車はあの黒い門の前で止まった。
「しばし、ここでお待ちください」
運転手は馬車の扉を開け、姉に対し断りを入れると門へと近づいていった。
姉は門よりも白い外壁の建物を右に左へと見ているが、私はそんな姉より門の方へと視線を送っていた。
「どこかしら、アルバート様のお部屋は。……1番上よね、当然」
独り言を呟き、建物の上の方ばかりを見てはまた妄想を膨らませているみたいだ。
一方で私は運転手と話す人物、あのカルロスさんが目に入った。
話が終わったようで運転手は私達の元へと戻ってくると再び扉を開けた。
「お待たせしました。門が開きますので」
「えぇ、ご苦労様です」
黒い門がゆっくりと開き始め、その傍らにはカルロスさんがこの馬車の事をみていた。
門の中へとゆっくり進む時、私はカルロスさんと目を合わさないように逆の方向ばかりを見てしまっていた。
「ここがお屋敷ね。……まぁ、なんて綺麗な花なんだろう」
初めて見る屋敷内部を興味津々で見る姉だったが、待ち構える人達が目に入るとその陽気な雰囲気を一変させていった。
その中にはラルフさんやリックさん。
さらに使用人と思われる白いワンピース姿の女性が何人もいた。
「……良かったわね。『白』じゃなくて」
姉は着く直前に私を諌めてきた。
今日の私は父が買ってくれたあの青いドレスを身に付けており、ポケットには付けたくもないあのシュシュを入れている。
「お姉様だって前と同じのは着たくないんじゃなかったの?珍しい」
「あぁ、これ?これはアルバート様が凄い褒めてくれたのよ。『凄い似合ってる』って。
それにこの髪飾りも大変気に入ってるみたいだし」
姉は前回アルバート様に会った際に着ていた白いドレスを纏い、体の横にちょこんと置いた赤い鞄の中から赤色のバレッタを出してきた。
それもまたキラキラと光る様子から宝石を埋めているのだろうとすぐに分かった。
「……今日は『赤』が多いのね」
「えぇ、前回部屋に置かれたこの鞄を見て褒めてくれたのよ。そこでピンと来たの。アルバート様は赤色が好きなんじゃないかとね」
たったそれだけの事で感じ取る姉の推理力が怖かった。
好きな人の前だけじゃなく常にアンテナを張り巡らせ取れる『情報』は全て利用する。
姉の行動力と洞察力。
私にはとても真似できる芸当じゃない……。
「お待ちしておりました」
ラルフさんが馬車の扉を開けるとすぐに姉に言葉をかけた。
「お久しぶりです。お出迎え大変嬉しいです」
「いいえ、今日はアルバート様も大変楽しみにしております。さぁ、どうぞ」
ラルフさんは右手を差し出し、それに手を添え姉はスッと降りていった。
日を受け、光るドレスとバレッタ。
キラリと光る装いを前に使用人達はそんな姉の姿を見入っていた。
「……どうぞ」
リックさんが私を出迎えた。
だけど、まだ姉には隠してくれているようだ。
そんな姉がリックさんに気付き近づいてきた。
「お初にお目にかかります。レオナ=イシュバールと申します」
アルバート様を家に招いた時と同じような作法を見せ、リックさんに挨拶をしていた。
「こちらこそお初にお見えになります。
私はリックと申します。アルバート様の第二執事を務めさせていただいてます」
「第二?」
「えぇ、そちらにいるラルフが第一になります」
「そうでしたか。申し訳ありません」
姉はラルフさんに謝るが、そんな事は些細な事と言い、屋敷の中へと私達を招いていった。




