屋敷へ
赤ワインは私のすぐ側に落ち、咄嗟に後ろに椅子を引き避けようとしたが、服に赤い模様をつけてしまった。
「あっ!」
「あらら、ごめんなさいね」
謝る姉だったが、本意ではないのは明らかだ。
「飲もうとしたけど、滑ってしまい傾けてしまったわ。……そのシミ、もう落ちないわね」
「わざとでしょ」
「わざとじゃないわ、ちゃんと謝ったじゃない?やってしまった事は仕方ないでしょ。
謝った相手に突っかからないでくれる?」
「もういい!」
私は少しずつ下に垂れる赤ワインをつけたまま大広間から出て、自室へと急いだ。
着くと部屋の扉には一枚の白い便箋が挟まれていた。
私はそれを抜き取ると部屋に入り、すぐに中を見た。
中には一枚の紙。
開くと父からの手紙で、そこには私に向けて
『レナ、すまない。今日レオナとアルバートの関係を発展させないようにしたかったが出来なかった』と。
文には二人がいる時にすぐ言おうとしたが姉がさっさと部屋へと引き入れ機会を逃した事。
そして、その機会が無くなった為、ラルフさんに打ち明けたが第一印象が良い姉のことを気に入り、何度言っても受け入れてくれなかった事が記されていた。
記された手紙の文章は少し字が寄れつつ書かれており父の無念さが伝わってきた。
「お父様……」
父から貰った初めての手紙。
嬉しさより自分の為に画策してくれた事に感謝し、私は姉にどんな仕打ちをされようと負けない事を誓った。
ーーーーーー
それから日が経ち…
「じゃあ行ってくるわね、お父様」
私は姉と共にアルバート様の屋敷へと向かう日を迎えた。
「……あぁ」
父はあれから少し痩せたようだ。
着ている服が体型にあっておらず、肩からシャツが少し落ちかけている。
「乗っていただけるかな?」
家の前には用意された馬車が止まり、運転手が私達に中へ入るように促していく。
だが、今回はリックさんやラルフさんは居ないようだ。
私達が行く事になっているから準備やらで忙しいのかと考えた。
「えぇ。じゃあお父様、行ってきます」
運転手とは言えアルバート様の元で働く人の前だからか普段のようではなく、丁寧に父に挨拶をしたのち馬車へと入っていった。
「……気をつけろよ、レナ」
「はい」
父への挨拶を済まし、私も馬車に乗り込むと屋敷へと向け発進した。
少しずつ遠がる父を心配し、私は後ろを振り向き見えなくなるまでその姿を見ていた。
「そんなに心配しなくても帰ったらまたすぐ会えるわ」
「いいでしょ、別に」
「まぁね、でもあんたの今の行動は《《間違って》》ないかもね」
「……どういう意味?」
姉の言葉に私は振り向いていた体を向かいに座る姉に対峙させた。




