招待
廊下にはうちひしがれた状態の私と父。
今お互いに思っている事は同じなんだと思う…。
「……そんなとこで何してるの?」
トイレから戻る姉が私達に気付き声を掛けてくる。
ただ、すぐに何かに気づいたのか、片頬を持ち上げ、ふふっと笑い近付いてきた。
「レナ、美味しい紅茶いつもありがとうね。お陰で良い時間を過ごせているわ。それとお父様も。
こんな素晴らしいドレスを買ってくれて」
「……」
私達は何も言えず、ただ、感謝を述べる姉を見ていた。
しかし、姉の視線は私達より、その先。
大広間にいるラルフさんの方を見ていた。
多分、いま大広間にいるのを感じとっており、わざと聞こえるように話してきた。
「……あっ、ごめんなさいね。アルバート様をお待たせしているので、これで」
姉はサッサと廊下を去り、再びアルバート様が待つ自身の部屋へと急いでいった。
その後ろ姿からは幸せなオーラとしてやったりのオーラが混ざり合ってるようだった。
ーーーーーー
その後、姉とアルバート様の話し合いは終わり帰る時間が近づいてきた。
「アルバート様、今日は本当にお忙しいのに……」
「いや、こちらこそわざわざ時間とってもらい」
「そんな!私でしたらいつでも!?」
手を軽く振りつつ謙遜する姉の後ろでは私と父が小さく身を屈めるような感じで立っていた。
「……アルバート様、そろそろ」
「あぁ」
姉は扉を開き、閉まらないようにスッと自身の体を入れアルバート様を見送っていく。
「レオナ、あの話は近々…」
「えぇ!アルバート様に合わせますわ」
家のすぐ前には用意された馬車が止まっており、アルバート様とラルフさんが乗り込むとすぐに発進した。
その直後、広がっていた雲からポツポツと雨が降りはじめ、次第に雨足を強めていった。
「良かったわ、降る前で」
もう二人には聞こえないのだが、最後まで気を抜かずやり切る姉。
黒い馬車が家から見なくなったところで姉はパタンと扉を閉めた。
その日の夜。
「ふふーん🎵」
陽気な鼻唄まじりをしながら食事をしている姉。
それに対して私と父は無言のまま目線は皿に乗った料理ばかり見ていた。
「あれぇ、二人ともなんで黙ってるの?お腹でも痛いのかしら?
そう言えば、なんだかこの魚冷たいわ」
口に運んだ鮭に文句を言いつつ私を見てきた。
「……ちゃんと火は通した」
小さく呟きつつ私は答えたが、姉は何度も何度も冷たいと言い、挙句にはカチャンと音を鳴らし食べるのを止めた。
「温めなおそうか、……お姉様」
「そうねぇ、でも、もういいわ。今日は」
「そ、そう」
「さて、と」
姉は言葉を発した後、ゆっくりと椅子から立つと何故かお父様に近づいていった。
それを見た父はチラッと姉を見るだけだった。
「お父様、私、アルバート様から屋敷に誘われたわ」
ラルフさんが話した『あの話』を私にも聞こえるようにも言ってきた。
「……そうか、良かったな」
「えぇ、でもね、私、話しちゃったんだ」
「なにをだ?」
姉は更に近づき、小声で話しはじめた。
「……っ」
近いはずなのに私には何も聞こえなかった。
でも父がすぐに姉の方を見るところをみると良くない事であることは確かだ。
無言で父は椅子から立ち、私を見た後、大広間から去った。
去る後ろ姿は大きいはずの父の背はとても小さく見えた。
「あっ……」
そんな父に対し、何か言おうとしたが続く言葉が出てこなかった。
それよりも先に姉が話してきた。
「聞いていたんでしょ、私が屋敷に呼ばれたって」
「よ、よかったね……」
「でも、何故かアルバート様があんたも連れてこいって」
「どうして!」
「さぁね、でも私がアルバート様と婚姻したらあんたはアルバート様の妹になる。義理のね、義・理!?
だからすこしでも仲良くしたいんじゃないかしら?」
「私が、屋敷に……」
「良かったじゃない、あんたなんかが望んでも一生入れない場所なんだからウンと豪華な服着ていきなさいよ。
私に恥なんてかかせたら……」
脅す姉は居なくなった父の席にある赤ワインがはいったグラスを私めがけて溢してきた。




