15.デビュタント〈1〉
更新が遅くなった上に、今回は短いです。すみません。
部屋の中が騒がしい。もう朝からずっとだ。
今日は、いよいよ私の社交デビューの日である。
でも、1番張り切っているのはマリアだった。
「さぁ、お嬢様! 下準備は終わりましたよ。お次はいよいよドレスを着ましょうね。」
もう、にっこにこである。
いつもの3倍の時間を掛けてお風呂に入り、全身マッサージをされ、爪を磨かれ、軽食を挟んで、これからドレスへ着替えるらしい。
私はずっとなされるがままである。
デビュタントのドレスは基本的に白という決まりがある。
お母様もマリアもすごくノリノリで、当事者の私を差し置き、仕立て屋とドレスの構想を練っていた。もちろん二人のセンスを疑う気は無い。でも、採寸が済んだら放置だったのを寂しかったのは覚えている。
でも完成したドレスを目の前にすると、その事はとんでいった。
「.......すごい。綺麗だわ!」
「えぇ、本当に。奥様と私がたくさん口を挟ませて頂きました。想像以上の出来栄えですね。」
シルク生地でストンと細身のシルエット。胸元はレースのフリルで飾られ、スカートの丈は足首がやっと見える位。肩を大胆に見せているが、上品さは損なっていない。よく見ると細やかな刺繍が施してある。
あまりに素敵な出来なのでこちらが萎縮してしまいそうだったが、マリアが満足そうなので何も言うまい。
「さぁ、ここからが本番ですね。お嬢様をたっくさん着飾りますからね! 」
(本当に、楽しそうなことで.......。)
それからは、着替えにメイクにヘアメイクにと大忙しだった。メイクはデビュタントと言うことで控えめにして貰った。髪型は腰まであった髪を自慢したいとのマリアのご要望で、ハーフアップスタイルになった。
着替えてからかれこれ2時間は経っていた。これまたマリアのご要望で鏡を見せて貰えていない。これからやっと、自分とご対面だ。
「お嬢様、本当に素敵です。さぁ、ご覧になってくださいませ。」
鏡の前に立った自分に驚いた。それはそれは可憐な美少女が立っていたからだ。そしてもう一つ気づいてしまったのは、完全にゲームのユーリアであるということ。
若干幼いが、翡翠の瞳に銀髪のストレートヘアを流し着飾った様子は完全にユーリアであった。
髪の色にドレスの色も相まって、淡雪とかそういう表現が似合う。「儚い」を体現していると言ってもいいだろう。中身がこんなので申し訳ないと、顔も知らぬキャラデザの人に謝った。
(まぁ、自分が何者かは分かってたことだけどね。それにしても、私ってこんなに綺麗だったのね。.......ダメだわ。ただのナルシストじゃない。変わりすぎてどこか他人事になってしまうみたい。)
「ありがとうマリア。自分だと信じられないくらい素敵ね。これだけして貰ったのだから今日は堂々と過ごせるわ。」
「失礼しますお嬢様、馬車の用意が出来ました.......。」
そう知らせに来たヴァンが固まってしまった。
「何を呆けているのヴァン、褒めなさい。」
そう命令したのは、私ではない。マリアだ。もう一度言っておく。断じて、私ではない。
「す、すみません。あまりにお綺麗だったので、すみません。.......本当にお綺麗で、その、お綺麗ですお嬢様。」
動揺のし過ぎか、ヴァンの語彙力が残念になっている。それでも十分に伝わるものはある。
「二人ともありがとうね。それでは、行ってくるわ。」
そうしてブルーノ兄様と馬車に乗り、王宮を目指した。
デビュタントとは、13歳になった貴族の娘が参加しなければならない初めての公式行事で、言わば成人式みたいなものである。違うのは参加する貴族たちは既に結婚相手を探しに来ていると点である。その身の純潔を示すために、同行者は身内と決まっている。
だから、今日はブルーノ兄様と一緒である。
「ユーリア、本当に綺麗だね。今日という記念すべき日に、君のエスコートを出来るなんて光栄だよ。」
「ありがとうございますブルーノ兄様。兄様こそ今日も素敵です。」
ちなみに、アーケイム領から王都までは馬車で3日の距離がある。さっきまでは、アレクサンドラ家の王都での屋敷で準備をしていたので、そこからは1時間程馬車を走らせるだけで王宮に到着する。
「さて、そろそろだね。」
馬車が止まった。
「ユーリア、手を。」
先に降りた兄様に促され、手を取った。
(今日が貴族としての第一戦目。私のわがままを叶えるためには、絶対に負けられないわ。)
(何より、マリアが完璧な装備を用意してくれたもの。負けるわけがないわね。)
自分でもどの辺で勝ち負けが決まるかは分かっていないが、とにかく気合を入れてから馬車を降りた。
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