13.お勉強会2
今回は魔法と学校についてのお勉強です。
ユーリア・アレクサンドラ、13歳になりました!
今日は、ヴァンと一緒に初めての魔法の授業。
魔法の先生はリーシャ先生。アッシュグリーンの髪を緩く束ねており、目元は優し気に細められている。絶対に口にはしないが、近所のおばちゃんって感じがして親しみやすそうな方である。
「ごきげんよう。お二人ともはじめましてね。年は離れているけれど、私のことはリーシャと気軽に呼んでちょうだいね。」
「「よろしくお願いします!」」
「まずはこの世界における魔力についてね。」
この世界には魔法が存在する。人々の身近にあり、その生活の一部として当たり前のように組み込まれている。例えばこの世界には洗濯機はないが、水魔法と風魔法を利用した洗濯機の代用魔道具が存在している。魔力は物質にも付与できるのだ。生活の水準は前世とそこまでの差は無いように感じる。流石にテレビや電子レンジは、魔法での再現が難しかったようでまだ存在していないけれど。
そして人が使う魔法は、全員が使えるわけでは無い。魔力自体はこの世界に産まれた物なら誰でも持っている。故に魔道具の発動は誰でもできる。しかし、魔法を行使できる人間は2人に1人だ。
この国で驚くべきは魔法を使える、使えないの点では差別が全く無いことだ。その理由は、建国の騎士アレクセイ様が魔法を使えない者と伝承されているからだ。もし「お前、魔法使えないのかよ。だっせー。」などと口にすると、それは同時にアレクセイ様への悪口になるからだ。
魔法が使える者は16歳までに魔力が発現する。大半の人間は火、水、風、土の四大属性の内の一つが使えるようになる。たまにそれ以外の固有の魔力を発現する人間もいる。血も身分も、男女も関係ないと言われている。固有魔力に関してはまだまだ研究中らしい。
「ヴァン君は風属性の魔法が使えるのよね? 」
「はい、そうです。基本的な使い方は父から教わりました。」
「先生、ヴァンは凄いのよ!日頃から体づくりに余念がないし、剣の腕もたつのに風魔法で自身を強化して戦うから、威力は本来よりもあるし、体力的にも無駄もないし、それに.......」
「.......お嬢様、もうおやめください、お願いします。」
ヴァンは両手で顔を覆っていた。
「.......貴方、何をしてるの?」
「おほほほほっ。二人は仲がよろしいのねぇ。微笑ましいわねぇ。」
まだ、ヴァンの凄さは語りきれていないのに止められたわ。本当に凄い努力家なのに。
ちなみに、私はまだ魔力の発現はない。するかも定かではないから内心ドキドキしている。16歳まで希望は捨てないと決めている。だって!! 使いたいじゃない!! 魔法!!
「お嬢様は、魔法に対する熱意がすごいですわね。ヴァン君はもう魔力を発現していて13歳だから、来年から魔法学校に入学が可能ね。学校の話しもしちゃいましょうか。」
このエーデライト王国の王都には、2つの大きな学校がある。一つが、王立アレクセイ騎士養成学校。もう一つが王立オールドシュタイン魔法学校である。言わずもがな、建国の英雄様二人が創った学校である。この国、二人のこと好き過ぎだろとか思わないことも無い。
王立アレクセイ騎士養成学校、この国での士官学校と言えばここしか無いので正式名称で呼ぶ人は少ない。「士官学校」で話しは通る。同じ理由でオールドシュタイン魔法学校も「魔法学校」で通る。
「学びたい者にはその機会を。魔を持つものにはその責任を。」
これがこの姉妹校共通のスローガンであり、士官学校の方は希望すれば誰でも入れる。魔法学校は魔力を発現した者なら必ず入学し、力の使い方を学ばなければならない。両校とも完全寮制であり、在学中、衣食住の心配はない。どちらも14歳から入学可能で、2年制である。
魔法学校の入学は義務とされており、全て無償でその恩恵に与れる。そのため魔力を持つものは、貴族であろうと孤児院の孤児であろうと在学している。2年通えば卒業可能だが、固有魔力が特殊だったり、稀少だった場合に限り4年まで在学することもあるそう。国としても固有魔力の研究を進めたいので、それも無償である。もちろん魔法学校卒業後は魔力の行使を認められ、仕事や生活に活かすことが出来る。
士官学校は希望者であれば、入学金は必要だが誰でも入学可能だ。厳しいと有名であるが、卒業すれば騎士になれる。騎士とは一つの資格であり、騎士の称号を持つものはあらゆる仕事を受けられる。ちなみに国に忠誠を誓った騎士は聖騎士と呼ばれ、任を解かれるまで他の仕事に就くことは許されない。
この国では、14歳までに魔力を発現したなら魔法学校に入学する。発現しなかった場合は、士官学校に入学し将来の道を増やす。士官学校在学中に魔力を発現したら、16歳からでも魔法学校には入学可能。
長々と説明があったが、要するにこの二つの学校は上手いこと関係が出来上がっているのだ。これもひとえに建国の英雄様たちのおかげであるのだ。
ちなみに、魔力が発現していても14歳で士官学校への入学は可能である。卒業後に魔法学校へ入学すれば良いだけだからね。そして士官学校へは、女子の入学も可能である。ほとんどいないらしいが。
「ヴァンはどうするの?」
「はい。お嬢様のもとを離れることはしたく無いですが、14歳で魔法学校に入学するつもりです。あと.......」
続きを言い淀んだヴァン。
「ふふ、私も寂しいわ。私も早く魔力が発現すれば良いのにね? それと遠慮は必要無くってよ、ヴァン。貴方は貴方のしたいことをしてちょうだい。私からのお願いよ。」
「お嬢様はずるいですね。.......俺は、士官学校にも入学したいです。でも、それは父さんを真似するからじゃなくて、お嬢様個人に俺の忠誠を誓わせて欲しいからです。正式な忠誠には、騎士の称号が必要ですから。」
「.......っ。ヴァンの好きにして良いって言ってるのに。」
か、感動で泣きそうだわ。
「これが私の好きにした結果ですよ。まぁ、その為に4年程はお嬢様のもとを離れなければなりませんが。」
「.......もしかしたら、そんなに長い間離れなくても良いかもしれないわよ? もしかしたら、ね? 」
私の計画が上手くいけば、そうなるのだ。
「ん? まぁ、そうですね。お嬢様の魔力が発現すれば魔法学校に一緒に通えますね! 」
「くっ、眩しい.......。」
私の悪巧みに一切気付かず向けられた笑顔に良心が痛む。
「カーテン閉めましょうか?」
「.......リーシャ先生ぇ、今日もヴァンが可愛いです。私はどうすればいいのでしょうか。」
「ふふふ。お二人共可愛いですから、大丈夫ですよ。お話しが長くなってしまいましたし、今日はここまでにしましょうか。魔力への知識は魔法の有無に関わらず大切ですからね。これからもお勉強、頑張りましょうね。」
「「はい! ありがとうございました! 」」
長々と説明ばかりですみません。リーシャ先生と共にお詫びと、ここまで読んで下さったことに感謝致します。




