みんなの願い
昼過ぎ、亜美が両親と一緒に病院へやって来た。
「今堂さん、菊野さんは、亡くなられたんですか?」
亜美を見つけた記者が、病院の入口で声をかけて来た。
「・・・」
亜美は、警備員に助けられ、無言で病院に入る。
「田沢さん、みおんさん!」
ロビーのソファに田沢とみおんが、うな垂れて座っていた。
「亜美ちゃん・・・」
みおんの声が沈んでいる。
「どうも・・・」
田沢が、亜美の後ろへやって来た今堂夫妻に挨拶をする。
「のぎちゃんは、どこですか?」
亜美が恐る恐る聞く。
「まだ様子がわからないんだ。一度手術が終わって、ICUへ移ったんだけど、すぐまた手術室へ戻ったんだ」
田沢が状況を説明する。
「じゃあ、亡くなっていないんですね」
今堂氏が、田沢が頷くのを見て、亜美の肩に手をやる。
「おじさんは?」
「お母さんと手術室の前にいるよ。私たちは、二人の顔を見ていられなくて、ここにいたの・・・」
「また後で様子を見に行くよ。とりあえず、座ってください。ジュリアと真阿子もすぐ来ると思いますから・・・」
田沢が、亜美たちをソファに座らせる。
しばらくして、ジュリアと真阿子もやって来た。
「報道陣がいっぱいいて、なかなか入れなかったの・・・」
「まだここにいるってことは、菊野ちゃん、大丈夫なんだよね」
ジュリアが涙を流しながら聞く。
「今、手術中なの・・・」
みおんもまた涙が出てくる。
「大丈夫です。のぎちゃんは、絶対大丈夫です!」
「亜美・・・」
亜美は、乃菊の強さを知っている。だから必ず蘇るんだと、自分に言い聞かせているのだ。
「あのキスが、別れのキスなんて、嫌っ!私ののぎちゃん、頑張って・・・」
亜美は、呟く。
夕方・・・。
「またICUに入っていますので、まだ面会出来ません。大野さんが、何かあったら連絡してくれるそうなので、今日は、帰りましょう」
田沢の説明で、亜美は両親と、ジュリアと真阿子、そしてみおんは、田沢の車で帰ることにした。
途中、田沢たちは、高速道のサービスエリアで休憩をした。
『大人少女23、二人目の死か!菊野乃菊さん死亡説!』
『呪われたアイドル!ついに最後の事故!?』
夕刊を買って読むジュリア。
「嘘ばっかり書いてる。菊野ちゃん、生きてるんだぞ!」
「国也さんの顔見れなかったな、励まそうと思ってたのに・・・」
「真阿子、国也さんのこと、好きなの?」
「そうかもね。でも、乃菊ちゃんの応援団だから、諦めてる・・・」
「諦めて・・・」
「わかってる。乃菊ちゃん、私たちには、すごく気を使ってくれてるけど、国也さんにだけは、自分を見せてるでしょ。それを見てると、乃菊ちゃんにとって国也さんは、特別な人なんだと思うの。だから二人の間には、割り込めないのよね・・・」
「そうね、菊野ちゃん、いろいろあったから、幸せになってほしいね。でもね、昨日から菊野ちゃんの様子が変だったの。ロケバスの中で息してなくて、みおんが人工呼吸したら、元気になったんだけど、その前から気になってて、思わず二人の時、キスしちゃったんだ・・・」
「ジュリアも?私も控室で寝てた乃菊ちゃんを見てたら、キスしたくなっちゃって、思わずしちゃったの・・・」
「別れの予感なんかじゃないよね」
「嫌だよそんなの・・・。きっと元気になるよ」
「そうだよね・・・」
二人は、そう思いながらもため息をつく。
「お母様、菊野さん、大丈夫よね?」
「きっと大丈夫よ、信じるのよ」
「私、菊野さんが好きなんです。あんな勇気のある人に会ったのは、はじめて。・・・とっても素敵」
「そうね、素敵な方よね」
亜美の乗る車は、自宅へと帰って行った。
「羽流希さん、今日、泊まってもいい?」
「・・・」
「のぎちゃんのことが気になって、一人じゃつらいの。お願いします・・・」
「ああ、いいよ。食事もしてないから、コンビニで何か買って食べよう」
ジュリアと真阿子を送り届けた後、田沢とみおんは、コンビニに寄ってから、田沢のアパートへ向かった。
「のぎちゃん、大丈夫だよね?死んだりしないよね・・・」
「大丈夫だよ。あの子は、何か不思議なものを持ってる気がするんだ。だから、きっと大丈夫だよ、大野さんもいるし、残して逝っちゃったりしないよ」
「そうよね・・・」
そう言いながらも、みおんは、涙を流す・・・。




