手術室の前
手術室の前の通路にあるベンチで、国也がうな垂れて座っている。雲江は、ずっと手術室の方を見ている。
もう未明である・・・。
「大野さん!」
国也が顔を上げると、田沢とみおんだった。
「どうなんですか、乃菊ちゃん?」
「・・・」
国也には、答える気力がなかった。
「ずっと手術中で、まだわからないんです」
雲江は、しっかりと返答する。
「死ぬわけない、死ぬわけない・・・」
呟く国也の横にみおんが座り、涙を流しながら国也の肩を抱く。
「のぎちゃんは、きっと大丈夫だよ・・・」
4人は、ベンチに座って待ち続けた。
「田沢さん!」
局のスタッフが二人やって来た。田沢は、国也たちと離れ、スタッフと話しをする。
「もう何人か記者が来てます」
「警備員さんに、中には入らないよう病院側が頼んでありますから、ここまでは来ないと思います」
二人が、田沢に報告をする。
「ただ、現場で写真を撮った野次馬が、ネットに流してるんで、各局や他のマスコミもすぐにやって来ると思います」
「そうか、とりあえず後で私が説明に行くから、スケジュール調整は、君たちでしてくれ。それと他のメンバーには、この時間だから言わなくていい」
「はい」
田沢自身も動転している状態だが、国也たちのことを思うと、自分が何とかしようと言い聞かせているのだった。
「あっ、先生だ」
手術室から医師が一人出て来た。国也も雲江も立ち上がり、田沢も近くへ寄った。
「どうなんですか、先生?」
雲江が真っ先に聞く。
「ご家族の方ですか?」
「はい、うちの子です」
医師は、ひとまずマスクをとる。
「まだ手術は、終わっていません」
国也たちは、唾を飲み込み話しを聞く。
「私の経験上ですが、ここまでの酷い事故だと、普通は即死です。しかし彼女の生命力で、今は持ちこたえています」
「じゃ、助かるんですか?」
みんなが同じ気持ちの質問だ。
「それは、何とも言えません。と言うより、この状況ですと、ご家族には、覚悟をしておいて頂きたいと思います」
「助けられないって言うんですか!」
国也が医師に詰め寄るが、田沢が押さえる。
「まだ亡くなったわけではありません。しかし医者の言う言葉ではないかもしれませんが、奇跡でも起こらない限り、回復する見込みはありません。現実として意識が戻ることはないでしょう」
「何でだ!何で諦めちゃうんだ!」
国也が医師の服を掴んで叫ぶ。
「のぎちゃん・・・」
みおんもベンチに崩れ落ち、泣きだす。雲江も椅子に座り涙を流し、医師から離れた国也は、壁にもたれかかって伏せる。
「先生、とにかく最善を尽くしてください。ご家族が納得出来るまで、とにかく・・・」
田沢が、国也たちの思いを代弁する。
「わかっています。スタッフ一同出来る限りのことはするつもりです」
「お願いします」
医師は、また手術室に入って行く。
それから数時間、手術室へ医師や看護師が出入りするが、乃菊が出てくることはなかった。
「乃菊が死ぬもんか・・・」
国也は、ベンチに座り、手を組んで祈り続けた・・・。




