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休憩中

国也は、高速道路のサービスエリアの駐車場に車を止めた。乃菊は、まだ寝ている。

「やっぱり、まだ早いのかな・・・」

国也は、乃菊が無理をしているのではないかと、心配しているのだ。

「可愛い顔して寝てる・・・」

国也は、後部座席で寝ている乃菊の顔を、しばらく眺めていた。

「ん?着いたの?」

乃菊が目を開けて、辺りを見回した。

「サービスエリアだよ。・・・休憩中」

「お腹空いた。何か食べに行こう」

「いいよ」

二人は、車の外へ出る。

「メガネかけて行かなきゃ」

「大丈夫だよ。普段着だし、みんな私のことなんか忘れてるよ」

乃菊は気にせず、建物の中のフードコートへ向かって行く。国也は、少し後ろを歩いて様子を窺う。

「あっ」

途中の売店近くで、若い女の子が、乃菊に気づいたようだ。その声に反応したのか、フードコートへ向かう乃菊を見て、一緒にいる連れと話をしだす客たちが目についた。

「国也様、ここにしよ」

券売機の前で、国也に向かって、おいでおいでと手を振る乃菊。国也は、周りを気にしながら、乃菊に近づく。するとぞろぞろと数人の客が国也の後をついて来る。決して国也について来るわけではなく、国也と同じように、乃菊のところへ寄って行くだけなのだが・・・。

「早く来て」

近くに来た国也の手を取り、券売機の前に立たせる乃菊。

ザワザワ・・・。そんな感じが背中の向こうで起こっている。

「私、これがいい。国也様は?」

「あ、ああ、天ぷらうどんにする」

国也は、財布を出して券を買い、店のカウンターにその券を出す。

「出来上がったら、お呼びしますので、これをお持ちください」

と言いながら、店員さんが乃菊の顔をまじまじと見る。

「あそこにしよ」

乃菊は、フードコートの中央に空いている席へ、わざわざ向かってしまう。

「みんなに見られるのに・・・」

国也は、周りを見ないように中央の席へ向かう。たくさんの視線を感じながら・・・。

「あの、乃菊ちゃんですよね」

積極的な女の子二人が、座っている乃菊の横に立った。

「あ、はい・・・」

「キャアー、凄い。本物だ!」

二人は、小躍りしながら拍手をする。

「握手してください」

手を出すので、乃菊も自然に握手をして応える。

「私って、そんなに有名なの?」

乃菊が聞いている。

「今日、名古屋の街頭テレビで、会見を見ました。応援してますので頑張ってください」

「ありがとう・・・」

乃菊が反対側を見ると、他の客が待ち構えていた。

「私、ファンなんです。もう大丈夫なんですか?また元気な姿を見せてくださいね」

子持ちのお母さんだ。そう言いながら手を出す。

「握手、お願いします」

何人かが、続いて乃菊のところへやって来た。

「番号札、23番の方」

偶然だとは思うけど、国也の持っている番号札の数字だった。

国也は、席に着くこともなく、カウンターへ戻って、注文品をとりに行くことになった。

「国也様、早く」

国也は、おぼんを持って席に着く。

「結構私って、有名人なんだね」

「知らなかった?」

国也は、皮肉っぽく言う。

「あのお、この方は、噂の方ですか?」

隣の席の客が、小さな声で聞く。

「いいえ、マネージャーです」

乃菊も小さな声で答える。

「少しは、考えてるんだ・・・」

国也は、心の中で思う。

「あ、そうだ。私、手袋してるんだった」

乃菊は、手袋をどうしようかと考える。外せば、まだ治りきっていない、悲惨な傷が見えてしまう。

「食べさせて、国也様・・・」

「ゲッ!」

思わずそんな声を出してしまったような気がする国也。

「そ、そんなこと・・・。手袋をしたまま食べれば」

乃菊は、手袋のまま箸を持ち、非常に食べにくいんだとポーズをとる。

「だって、食べられないんだもん」

「・・・」

国也は、しかたなく自分のうどんを後回しにして、乃菊のうどんを箸にとる。

「あーん」

こっちが言うセリフだろ。そう思いつつ、口を開ける乃菊に麺を食べさせる。

カシャ、カシャ。携帯やら、カメラやらのシャッター音が聞こえてくる。

これは、スクープだよね。冷や汗をかきながら、乃菊にうどんを与える国也。

「手の怪我が治ってないんです」

手袋をしている手を見せながら、いらない説明を見物人にする乃菊。すぐに口を開けて麺を口に入れるようにせがむ。

大人少女だけれど、今は、幼児である。国也は、完全に諦めた。

「ああ、美味しかった。国也様は?」

車に戻りながら、国也に聞く乃菊。

「美味しかったよ・・・」

本当は、味など憶えていない。乃菊が食べ終わった後、あの場所から早く逃げ出したくて、慌てて食べたからだ。

「乃菊ちゃん、頑張って!」

声をかけられて、笑顔で手を振る乃菊。そして国也は、マネージャーらしく、車のドアを開け、乃菊を乗せる。

「国也様、週刊誌に載っちゃうかもね」

「わかってるなら、どうして・・・」

「迷惑?」

「困るのは、君の方だから。マスコミに追いかけられるだろ」

「いいもん・・・」

「だけど・・・」

「ああ、疲れた。私、また寝るから、早く、帰ろう・・・」

国也は、それ以上何もいわず、車を走らせた。

「愛してるよ・・・」

寝言だろうか?途中で乃菊の声が聞こえた・・・。








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