3人の時間
みおんたちメンバーが病室を出て行き、国也と雲江が残って、乃菊を挟んで
座る。
「乃菊ちゃんの笑顔が見られて、私は安心したよ」
「ごめんなさい、お母様。心配ばかりかけてしまって・・・」
「いいんだよ、気にしなくて」
雲江が乃菊の肩を抱く。
「私、ホントの家族みたいなお母様たちのことを考えずに、いつも自分勝手なことしちゃうから、面倒くさい女ですよね」
「何を言ってるのよ。いつも国也が心配しなくていいって言ってるから、私は、信じて待ってたるだけだったのよ・・・。それに、私は、乃菊ちゃんを自分の娘だと思ってるから、言われなくたって信じてたのよ。だから、早く元気になって、一緒に食事したり、仕事したりしてちょうだい」
「お母様・・・」
乃菊は、涙を流す。
「さあ、横になりなさい」
乃菊だから起き上っていられるけれど、普通は、こんな重傷の身体でこんなことは出来ない。国也と雲江で、乃菊を横にさせる。
「国也様、夕衣さんは、大丈夫ですか?」
国也の方を見て、乃菊が思い出したように聞く。
「大丈夫だよ。幸い深い傷じゃなかったから、数日の入院で済むよ」
「良かった。夕衣さんが無事で・・・」
乃菊は、ホッとする。
「動けるようになったら、すぐに乃菊のことを見舞いに来るよ。夕衣さんも乃菊のファンだから」
「私だって、夕衣さんのこと、大好きだよ」
乃菊が笑顔で話す。
「そうだね、夕衣さん、品があって綺麗だからね」
国也の言葉に、乃菊が急に口を尖らせる。
「どうせ私は、品が無くて、綺麗じゃないです・・・」
「何を言ってるんだよ。乃菊は、他の人と比べることが出来ないほど、全てにおいて素敵な女性じゃないか」
「ホント?嘘でも嬉しい」
また笑顔になる乃菊。
「だけど、もっと自分の身体を大事にしてくれよ。人を助けるためでも、無理しないでほしいよ」
「性分だから・・・」
国也は、乃菊の無謀な行動に、いつも頭を抱えるばかりだ。
「乃菊ちゃんは、こんな怪我をしてでも、大事な人を助ける、心の優しい子なんだよね」
雲江が、乃菊の見方をする。
「そうですよね。夕衣さんは、せっかく新しい人生を歩めるようになったばかりなのに、知ってるでしょ、国也様。私が悪縁を切って、国也様が結びつけたんだから・・・」
その通りではある・・・。
「でも乃菊ちゃん。国也の言うとおり、もう自分の身体を削ってまで、危ないことに関わらないでね。私たちにとって、乃菊ちゃんは、大事な存在なんだから・・・」
「はい・・・」
相変わらず、雲江の言うことは、素直に聞く乃菊である。
「そう言えば、何気なく呼び方が変わったみたいだけど、みんなの前では、今まで通りの呼び方にしよう」
国也が提案する。
「国也様じゃ、駄目かな?」
「私も、今まで通り、雲ネエでいいよ」
「それじゃあ、雲ネエは、みんなの前では、お母様。国也様は、みんなの前では、おじさん。これでいいでしょ」
国也と雲江は、何となく同意する。
「ところで国也様。私が目が覚めた時、ここにいなかったでしょ・・・」
「だから・・・?」
乃菊は、国也の方を見て、唇だけを突き出す。
「欧米式の挨拶だろ、国也、さ、ま・・・」
雲江が乃菊の代弁をする。
「母さん・・・」
乃菊が望んでいることは、国也もわかっている。しかし、欧米式の挨拶には、何となく慣れたけれども、母親の見てる前では、さすがに国也も躊躇する。
「いいじゃない、予行演習しなさい」
雲江まで、気にもせず催促する。
「国也様、は、や、く・・・」
なおも唇を突き出す乃菊。
「仕方がないなあ・・・」
国也は、突き出した乃菊の唇にキスをした。
「もっと・・・」
すぐに離れてしまう国也に、不満顔の乃菊。
「みんなを呼んで来るから、さっさと済ませなさい」
雲江は、そう言って、乃菊に手を振り、病室を出て行く。
「早くう・・・」
国也は、少し乃菊に近づく。
「これは、スキャンダルだぞ」
「週刊誌に載っちゃえば・・・」
国也は、身を乗り出し、乃菊を寝かせてキスをした。
「ありがとう・・・」
唇が離れると、乃菊が言った。
「何で、ありがとうなんだい」
「いいの、何でも・・・」
恥ずかしそうにする乃菊。
「国也様。退院したら、お城へ連れてって・・・」
「いいよ。お城が好きになった?」
「国也様に、付き合ってあげるだけだよ・・・」
国也は、また軽くキスをする。
「ありがとう・・・」
乃菊も国也も笑顔になる・・・。




