安堵
「おじさん!」
廊下を小走りに亜美がやって来る。その後ろを田沢とみおんも、そして加納もゆっくり歩いて来る。
「のぎちゃんは、大丈夫なんですか?」
心配そうに亜美が尋ねる。
「大丈夫だよ。バットで殴られたり、手に釘を打たれたり、お腹をナイフで刺されたりしたけど、今手術してるから、しんぱ、い・・・」
国也の話を聞いて、亜美がめまいを起こし、フラフラと倒れそうになる。それをみおんと田沢が支える。「
「国也さん、よくも平気な顔して、そんな酷いこと話せますね」
みおんが怒るのも無理はない。
「あ、ああ、ごめん。本当に大丈夫だから、心配しなくていいよ。乃菊は、こんなことでは、死んだりしないから」
「それはそうだけど、おじさん、のぎちゃんのこと、呼び捨てにしてる」
復活した亜美が、国也に噛みつく。
「あ、いや、とにかく大丈夫だから、乃菊・・・ちゃんは・・・」
手術室の扉が開く。
国也が真っ先に聞く。
「無事、手術は終わりました。怪我の状況から、危篤状態になるかと思いましたが、丈夫な身体なのでしょう、手術にも充分耐えられて、後遺症が残ることもないでしょう。とにかく不思議なくらい、上手く行きました」
一同ホッとする。
「ほら、言った通りだろ」
国也が亜美のおでこを指で突く。
「自分だって、気が気じゃなかったんでしょ、本当は・・・」
亜美は、まだ不機嫌だ。
「あっ、出て来た!」
みおんが、手術室から運び出されるストレッチャーの上の乃菊を見つける。
「麻酔で眠っています」
看護師が、声をかけようとするみおんたちを制するように言う。
「ご家族の方は?」
「僕です」
国也がすぐさま答える。
「しばらくここで入院して、容態を見てから、蒲橋の総合病院へ移送させて頂きますので、とりあえず、入院の準備をお願いします」
「わかりました」
乃菊は、病室に運ばれ、みんなは、乃菊が目覚めるまでロビーで待機した。
事件の一報がテレビでも報じられ、病院にも報道陣がやって来ていた。
「逆恨みか・・・。被疑者死亡で解決。そんなに簡単なことじゃないんだけどな・・・」
加納が呟く。
「とりあえず、状況を説明して来るよ」
田沢が立ち上がって、外に集まっている報道陣のところへ向かおうとする。
「頑張って・・・」
みおんが声をかける。
「ねえ、今堂さん。あの二人は、特別な関係?」
加納が亜美の耳元で聞く。
「余計な詮索しないでください」
亜美が一喝する。
「僕も記者なんだけどな・・・」
「わかってます。でも、今は、こっちの味方でしょ?」
亜美が笑顔で加納の腕を掴む。
「ああ、貧乏くじを引いたかな。でも、みおんさんたちも、報道陣に囲まれないように気をつけなきゃ」
「そうですね。場所を変えようか、亜美ちゃん」
みおんと亜美が立ち上がる。
「行くよ、加納さん!」
亜美が加納の背中を叩く。
「あ、痛っ!」
「あ、ごめんなさい。怪我してたの忘れてた」
亜美が加納の横に座って、背中に優しく触れる。
「あら、亜美、いつの間にそんなに親しくなったの?」
「し、親しくなんかないです。会ったばかりなんですから・・・」
顔を赤くして言い訳をする亜美。
「ふーん。亜美は、のぎちゃんにしか興味がないのかと思ってたわ」
みおんが弄ぶように言う。
「そ、そうですよ。のぎちゃんにしか興味はありません。男の人なんて、みんな信用出来ないんだから・・・」
「おいおい、僕や田沢さんのことも信用出来ないのかい?」
国也も加わる。
「た、田沢さんは、別です。関係のない他の人ってことですよ。でも、おじさんは、信用出来ないかも」
「どうしてだよ・・・」
「別に、亜美が男の人に興味を持っても、悪いことじゃないわよ」
「だから・・・」
言葉に詰まる亜美。
「今堂さんって、メンバーの中では、一番のいじられ役なんですね」
加納がやりとりを聞いて、頷きながら言う。
「どうして、私がいじられ役なんですか!」
亜美は、一人で怒っている。
「可愛いからじゃないですか?」
「・・・」
加納の言葉に、亜美は顔を赤くする。
「そうよ、純情で可愛いから、意地悪しちゃうの」
みおんが閉める。
「そうだ、母さんに入院の準備をするように電話しなきゃ」
「そうですね。私たちが待機してますから、国也さんは、家に言って来てください」
みおんに言われ、国也は電話をして、自宅へ向かった。




