処刑
目だし帽の二人は、浜名市内を走り、人気のないビルの裏手に車を停めた。
女の方が、裏口の鍵を開け、男の方が、気を失っている乃菊を、車から降ろす。そして二人は、乃菊を抱えてビルの中へ入った。
3階の部屋の一部だけ、明かりが点いている。ここは、空きビルになっているキトウ呉服店だ。
「気がついたか・・・」
乃菊は、部屋の隅に建てられていた十字架の磔台に、胴と首を縛られようとしている。
「あなたが、私たちの前に現れなければ、こんなことにはならなかったのに、残念だわ」
ロープを持った目だし帽の女が、乃菊の左手を縛ろうとする。
「なぜ、こんなことをするの?」
乃菊は、この二人が誰なのか、見当はついていたが、実際には面識がない。
「それは、お前がよく知っているだろ」
首を縛り終えた男が言う。
「私たちが、また栄えて行くためには、お前は、邪魔なんだ」
「もう一人と一緒に処刑して、恨みも晴らすのよ」
目だし帽の男が、床に置いてあるバッグのところへ行き、もう一本のロープを取ってこようとする。
「何するの!」
乃菊が、女の頭を左手で掴み、目だし帽を外されまいと両手で押さえている女を、右手で引き寄せ首に腕を巻きつけた。
「その状態で、反抗する気か」
男は、不敵に笑いながら近づいて来る。
「この人を絞め殺すまで離さないわよ」
「ウグ、ウグッ」
それでも男は、気にすることなく近寄って来る。
「いい度胸じゃないか」
男は、縛られたまま女の首を絞めている乃菊の顔を、遠慮なく殴打した。
「キャッ!」
あっさりと目だし帽の女は、乃菊から解放された。
「ゴホッ!この女、良くも私を!」
女は、怒り心頭に発して、壁に立てかけてあった金属バットを持って来る。
「思い知らせてやるわ!」
「やめて・・・」
目をつぶる乃菊。
ドン、ゴン、グキッ!
「うっ、うぐっ!」
女の振るうバットは、当たり所により、音が変わる。しだいに意識朦朧となって来た乃菊は、抵抗することもなく、両腕をだらりと垂らす。
「もうやめろ!死んでしまう。殺すのは、あの女を誘き出してからだ」
そう言われても気が収まらない。
「じゃあ、これにしろ!」
男は、バッグから2本の釘と金槌を取り出す。
「これで、抵抗出来ないようにすればいい」
女は、男から釘と金槌を奪うようにもらう。そして、男が乃菊の右手を持ち、手のひらを十字架の横の棒に当てる。
「やめて・・・」
朦朧とする意識の中で、乃菊が手を握って抵抗する。
「大人しくしろ!」
男が再び乃菊の顔を殴ると、手のひらは、力なく開き、女がその中心に釘を当てる。
「嫌あああ・・・」
「私の怖さを、思い知るがいい!」
ゴンッ!
「ギャアアアアアアッ!」
乃菊の悲鳴が、部屋中に響き渡り、そのまま乃菊は、気を失った。




