目覚める乃菊
国也の握っている乃菊の指が、ピクリと動いた。
「えっ!」
動いた。ほんの少しだが、動いた。
「国也、今、動いた・・」
雲江も感じたらしい。
「動いたよ、母さん!」
国也は、興奮した。
「確かに動いたよ・・・」
二人は、顔を見合わせて、また強く握ってみた。
「乃菊ちゃん、もう一度動いてくれよ」
静まり返る病室で、国也と雲江は、指先に神経を集中させる。
「動いた!」
「うん、動いたよ国也。乃菊ちゃんは、生きてるよ」
雲江が乃菊の顔を見た。
「国也、見なさい!瞼が・・・」
眼は閉じたままだが、乃菊の瞼が微かに動いている。国也も確認した。
「やっぱり生きてるんだ。乃菊ちゃんは、死んだりしないんだよ」
「そうだね・・・」
雲江は、涙を流した。スイッチを切られていなかった計器の数字が、しだいに上昇する。波形も戻っている。
「みおんちゃん!」
国也が叫んだ。
国也の声が聞こえたらしく、みおんが病室に入って来た。
「どうしたんですか?」
何事が起ったのかと、ただ立っているみおん。
「指が、指が動いたんだよ!」
「えっ、もしかして、のぎちゃんの?」
「そうだよ、手を握ってみてよ、みおんちゃん」
みおんは、すぐに国也の横に来て、乃菊の手を握ってみる。
「お願い、動いて・・・」
みおんは、乃菊の手を握りながら、祈るように額に当てる。
「キャッ!動いた。握り返したみたいに動いたよ、国也さん」
みおんは、国也に抱きつく。
「良かった、良かったね、国也さん。のぎちゃんは、やっぱり死んだりしないんだ」
「そうだよ、乃菊ちゃんは、僕らを置いて死んだりしないんだよ」
「先生呼んで来る!」
みおんは、思い立ったように立ち上がり、呼び出しボタンを押しただけでは気が済まず、病室を出て行く。
「乃菊ちゃん・・・」
国也は、乃菊の手に口づけをする。
「みおんちゃん!」
真阿子が走りながらみおんを呼んだ。
「真阿子!」
亜美もジュリアも田沢もやって来た。
「ホントに、ホントにのぎちゃんが、死んじゃったの?」
ジュリアに肩を支えられている亜美は、涙も鼻水も流している。
「それが・・・」
みおんは、嬉しいあまりに涙を流しているため、こちらもなかなか話が出来ない。
「あっ!先生、早く来てください!」
担当医師と看護師がやって来て、みおんは、すぐに声をかける。
「どうしたんですか、誰か具合でも悪くなりましたか?」
「のぎちゃんが、いえ、菊野、乃菊さんが、生き返ったんです!」
「ほ、本当ですか?」
医師も慌てて病室へ入る。
「生き返ったって・・・?」
「みおん、どういうことなんだ」
田沢たちは、状況が把握できず、みおんに聞く。
「先生に、ご臨終だって言われたんだけど、国也さんとお母さんが、手を握っていたら、のぎちゃんが生き返ったの!」
「良かった・・・」
亜美は、床にしゃがみ込んだ。ジュリアも真阿子も廊下のベンチに座った。
「羽流希さん!」
みおんが田沢に抱きついて泣いた。
「のぎちゃんが、のぎちゃんが、生き返ってくれたの・・・」
「うん、良かった、ホントに良かった・・・」
田沢が、みおんの背中を優しく叩く。




