表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/46

この手は・・・

大男に動けないまま引きずられて来た乃菊は、大扉の前に捨てられるように置かれた。

「ここにいれば迎えが来る。もう、花安天に行くのか、泥悔天に行くのかわからない。お前は、花安天に行ける切符を自ら捨ててしまったのだ。もう一度そこからの迎えが来るか、泥悔天に落とされるか、それとも・・・、何にしろ、それを決められるのは、お前の持っている運命だけだ。まあ、泥悔天にならないように、祈ってやるよ」

そう言うと、大男は、太い槍を担いで去って行った。

「どうすればいいの、このまま誰かに連れて行かれちゃうの?」

動けない乃菊は、不安でいっぱいだった。大男の言った通り、自分で選ぶことは出来ないらしい。

上を見上げると、霞んでいた空間が、晴れ渡るように青くなっている。

「どうせ行くなら、カンテンがいいな。きっと天国みたいなところだろうから・・・。でも、天国も知らないし、私みたいな波乱万丈の人生だった女の子は、死んでもそんな環境なのかな。だったら、デカイテンで闘って行こうかな。でも、どこへ行っても、おじさんには会えないんだ・・・」

乃菊は、傷だらけの自分の身体を見る。

「おじさん、私が死んだと思って、焼いちゃったかなあ。そしたら絶対戻れないよ。おじさんと生きて行くことが出来なくなっちゃう。雲ネエ、私、死んでないから、燃やさないで。ここにいるから、迎えに来て・・・」

ギギーッ。

扉の開く音だ。

「迎えが来たんだ。どうしよう、手遅れだったかなあ、燃やされちゃったのかなあ・・・。やだよ、おじさんのところへ帰りたいよ。誰か助けて、連れてかれちゃうよお・・・」

仰向けになったまま動けない乃菊の手首を、扉の向こうから現れた手が握る。

「誰ですか?どこに連れて行くんですか?」

手を上げるような体勢になった左手を、その手が扉の方へと引いて行く。身体も一緒になって扉の方へ引きずられる。

「おじさん、サヨナラみたいだよ・・・、私たち・・・」

乃菊の眼から、大粒の涙がこぼれた。

「おじさん・・・」

乃菊の身体が、半分扉を抜けた。その時、扉に触った右手に力を入れて、引きずられる身体を止めようとする乃菊。

「駄目だと思うけど、最後にあがいちゃう・・・」

乃菊の身体の動きが止まった。

「戻っておいで、乃菊ちゃん・・・」

「えっ!」

乃菊には、国也の声のように聞こえた。

「おじさんなの?」

扉を掴む右手を優しく触れる手があった。

「乃菊ちゃん、こっちへおいで・・・」

「雲ネエ・・・」

今度は、雲江の声に聞こえた。

「嘘じゃないの、ホントにおじさんと雲ネエなの・・・」

「早くおいで、話をしよう・・・」

乃菊は、その声を国也だと思った。

「もしも、私を騙す声だったとしても、おじさんの声なら、仕方ないか・・・」

乃菊は、右手を扉から離した。

「おじさんだよね、私の大好きなおじさんだよね・・・」

もう乃菊には、その声が国也であることを信じるしか、自分の運命を委ねるものがなかった。花安天や泥悔天の使いに騙されて、死の世界へ行くことになっても、もうどうすることも出来ない。

「生きたいよ・・・」

乃菊は、二つの手に引きずられながら、扉の向こうへと消えて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ