死者への想い
国也は、息を引き取った乃菊の指を掴んだ。そして、包帯を寄せて手を握る。雲江が反対側で、祈るように両手で乃菊の手を握る。
「乃菊ちゃん、思い出したんだよ。あの時の可愛い女の子が、君だったんだね。写真を撮って、飴玉くれて、たったそれだけだったけど、それが、僕たち二人の大事な縁の始まりだったんだね。あの時の出会いがあったから、今ここで君の手を握っているんだ」
国也は、涙を流しながら、答えることのない乃菊に話しかける。
「今は、あの時の4才だった乃菊ちゃんの顔が、鮮明に思い出せるんだ。だから一緒に昔話をしようよ。目を覚まして話をしようよ・・・」
国也は、握った乃菊の手を唇に寄せ、白くて細い指に口づけをする。
「二人とも、ファーストキスだったんだ・・・」
国也は、欧米式の挨拶の原点が、乃菊が4才の時に出会ったあの時だったことに気づく。
「僕は、信じてるよ。医者が君が死んだって言っても、僕が認めなければ、それは、事実じゃない。全部思い出した僕に、必ず君の返事があるはずだから、そのために今までこのベッドで生きて来たはずだろ・・・」
国也は、乃菊に向かって話しかける。きっと返事をしてくれると信じて・・・。
「乃菊ちゃん、私はね、国也から浜名での乃菊ちゃんの話を聞いて、必ずうちへ来てくれると思ってたんだよ。それでね、いつか必ず、私の娘になってくれると思ってたんだよ。早く目を覚まして、答えておくれ、私の娘になってくれるって・・・。今でも信じてるんだよ・・・」
雲江も手を握って、祈るように話しをする・・・。
「羽流希さん、夢だよね・・・。嘘だよね・・・。のぎちゃんが死んじゃうなんて・・・」
みおんは、病室の外の壁にもたれかかって、電話の向こうの田沢に話しかける。
田沢は、部下の運転する局のバスで、メンバーを乗せて病院に向かっていた。
「みおん、信じるんだ。医者が何と言おうと、乃菊ちゃんは、死んじゃいない。彼女に初めて会った時、みおんと一緒にずっと活躍する姿が目に浮かんだんだ。僕は、それを信じたい。だからみおんも信じろ、きっと乃菊ちゃんは、甦るんだと・・・」
「うん・・・」
「みおん、私も信じてるよ。今行くから待ってて・・・」
ジュリアが、田沢の携帯を取り上げて電話に出た。
「わかった・・・」
みおんは、電話を切ると、立ち上がって病室を覗いた。
「国也さん・・・」
国也も雲江も乃菊の手を握って、祈るように話しを続けている。
「のぎちゃん、死んじゃ駄目だよ。みんなのためにも、のぎちゃん自身のためにも・・・」
みおんも両手を握って祈る・・・。




