狙われている?
♪ルルル あなたに出会ったあの日から 私の心は あなただけになっていた
♪ルルル あなたにキスしたあの日から 私の夢は あなたに会うことだった
♪その願いが叶っても 想いを口に出せない 私がいる
すれ違いの時間が 世界の中を駆け巡る 届かない 届かない
♪この苦しい気持ちを 隣のあなたに伝えたい あなたにだけ
父さんと母さんが 私に刻んだ縁なのに 答えない 気づかない
♪二人の愛が 10年前からじゃなくて 500年前からだとしたら 信じてくれますか?
♪すべての真実が 生まれる前から始まっていた
あなた 信じてくれますか? 愛してる・・・・・・
早朝、まだ布団の中にいる国也。みおんから渡された乃菊のCDを、寝る前にコンポへセットしておき、目が覚めてから聴いた。
乃菊の声が流れると、自然に涙が零れた。
国也は、朝食の時、CDをラジカセに入れて、雲江にも聞かせた。乃菊がいなくなった食卓に、久しぶりの乃菊の声。
やはり二人は、涙を流しながら食事をした。しかし、乃菊の声が聴こえるだけでも幸せだった・・・。
国也は、また病院へ行くために家を出ようとしていた。そこに赤ずくめの男がやって来る。
「最上さん・・・」
「調べたことを報告します」
「何を調べたんですか?」
「事故のことです」
「事故?」
「乃菊さんの事故には、黒幕がいるんです」
「黒幕って、あの事故は、精神異常の女の人が、スピードを出し過ぎたための事故だって聞いてますけど・・・」
「そうです。その女性は、今も精神病院に入っています。でも、その精神異常が、第三者からの催眠誘導によるものだとしたら、故意と言うことになります」
「故意って言うことは・・・」
「乃菊さんが狙われたって言うことになります」
「そんな・・・。なぜ乃菊ちゃんが狙われるんですか?誰に、どうして?」
「悪縁鬼の復讐です」
「そ、そんな・・・、今度は、誰が悪縁鬼なんですか?」
「今それを調べているところです。じゃあ・・・」
言いたいことを言うと、いつものように最上は去って行ってしまう。
国也は、気になり急いで病院へ向かった。
「乃菊さん、少し出ますので、ちょっと待っててくださいね」
看護師は、用事を済ませるために病室を出て行った。
「・・・」
当然ベッドに横たわる乃菊が、返事をするはずがない。
そして、看護師と入れ替わりに、病室へ入る男がいた。男は、部屋を見回すと、一歩一歩ベッドに近づく。
男は、乃菊の身体についている医療器具を見渡す。そしてしばらく考えるような素振りをした後、その中の機器のスイッチに手を伸ばす。
スイッチに指先が触れる・・・。
「あなたは、誰ですか?何をしてるんですか?」
男に声をかけたのは、あの記者だった。男は、勢いよく記者に駆け寄り、いきなり殴りかかる。記者は避け切れずに顔を殴られ、床に倒れた。男は、そのすきに病室を出て行く。
「イテテテ・・・」
記者は、頬を押さえながら立ち上がる。
「あなたは、誰ですか?」
今度は、記者が聞かれた。看護師が戻って来て、見たことのない人物に驚く。
「あ、いや、不審者がここに入るところを見たんで、様子を見に来たら、何かしようとしていたので、声をかけたんですけど、殴られて・・・。誰か見ませんでしたか?」
看護師は、不審そうに記者を見る。
「男の人とすれ違いましたけど、あなたの方こそ、何かをしようとしていた張本人じゃないんですか?」
「そ、そんな!私は、ただ・・・」
「どうしたんですか?」
国也が入って来た。
「大野さん、この方が私が出ている隙に病室へ入っていたんです」
「あ、その言い方は、ちょっと違うんじゃ・・・」
「加納さん・・・でしたよね」
「お知り合いですか?」
看護師が聞く。
「え、まあ・・・。それで、何かあったんですか?」
「いえ、看護師さんにも言ったんですけど、この部屋に不審者が入って行ったんで、様子を見に来たら、何かしようとしてたんで、声をかけたら殴られて、起き上ったところへ、看護師さんが帰って来て、私を疑うんです」
「そりゃそうでしょ、見たこともない男の人がこんなところにいるんですから」
「なぜ不審者だと思ったんですか?」
「目出し帽を被っていたからですよ」
国也は、加納の顔を見る。
「看護師さん、とりあえず殴られたのは、本当みたいですから、手当をしてあげてください。乃菊ちゃんは、僕が見てますから」
「は、はい」
看護師は、加納を連れて行こうとする。
「あ、加納さん。後で話しがありますから、ロビーで待っててください」
「はい・・・」
二人が病室を出て行き、国也は、ベッドの横に座った。
「加納さん、あなたは、悪縁鬼って知ってますか?」
ロビーのソファに座って、国也が加納に尋ねる。
「あく、えん、き?・・・何ですかそれ?」
やはり、普通の人間がそんなものを知っているはずがない」
「あ、それって、善悪の悪に、縁を切るの縁と鬼の、悪縁鬼ですか?」
「えっ、まさか知っているんですか、悪縁鬼を・・・」
国也は、驚いて聞き返した。
「知りません」
「じゃあなぜ、悪縁鬼って・・・」
「赤い服の人が言ってたんです」
「はああ!あの人は、何であなたにまで・・・」
国也は、呆れた。
「この前、私が病院の周りをうろついていたら、暇だったら、菊野さんの病室を見張っててくれって言うんです。あの人、初めて会ったのに私が記者だっていうことも当てたんですよ。それで、なぜだって聞いたら、善悪の悪、縁を切るの縁に鬼で、悪縁鬼と言う妖怪に操られた人間が、乃菊さんを狙っていると言うんです。私の顔を見て、あなたには、乃菊さんを助ける相が出ているって言われて、見張ってたんです」
国也は、頭を抱えた。
「本当に乃菊ちゃんが狙われているのか・・・」
「なぜ、乃菊さんのような可愛い子が、そんなのに狙われるんですか?」
「加納さん、あなたは、悪縁鬼がいることを信じるんですか?」
加納は、腕を組む。
「私は、仕事柄いろいろなことを調べて記事にしてきました。その中には、普通では考えられない出来事もあったり、とんでもない人物にも出会いました。だから悪縁鬼のことも、有りえない話ではないかもと思っています」
「そうですか・・・。乃菊ちゃんは、復讐されるかもしれないんです」
「復讐?なぜ?」
「悪縁鬼にとり憑かれていた人物を退治したからだと思います」
「誰ですか、とり憑かれていたのは?」
「僕に特定は出来ません。そうだ、加納さんは記者ですよね」
「はい」
「じゃあ、乃菊ちゃんが、浜名にいた時のことを調べてください。そこで事件に巻き込まれているんです。それに、嫌な夢も見たし・・・」
「いいでしょう。他にも教えてくださいよ、記事になるような秘密を・・・」
「それと、出来る限りでいいですから、病院も見張っててください。仕事以外の時は、僕もここに来ますから・・・」
「じゃあ、さっそく行って来ます」
加納は、そのまま病院を出て行った。




