国也の憂鬱
国也は、一人で名古屋へやって来た。
みおんたちが、乃菊のいない中、イベントでライブをすると言うことで、密かに応援に来たのだ。
・・・大きな公園の野外ステージだった。
国也は、目立たないように、会場の一番後ろで見ている。
乃菊を除く4人のメンバーがステージに登場して、歌い踊った。
「今、乃菊ちゃんが、病院のベッドで寝たきりです。でも私たちは、きっと乃菊ちゃんが、一緒のステージに立ってくれると信じています。みなさんも待っててください!」
1曲歌った後に、みおんが代表して挨拶をした。ファンも暖かい拍手で答えてくれて、国也は、涙が出そうになった。
「あ、あそこにいる」
「ホントだ。もっと前で見てくれればいいのに」
「国也さんは、そんな人だよ」
みおんの後ろに立つ、ジュリアと真阿子と亜美が、話しをしている。
「いたよ」
話しを終えたみおんに、ジュリアが言う。
「じゃあ終わったら、すぐに連れてこよう。逃げられちゃうから」
「うん」
また曲が始まる。
「乃菊ちゃんもあの場所にいてくれたら・・・」
それだけで幸せだろうと、国也は思った。
大人少女23のステージが終わり、国也が帰ろうとする。
「キャー!」
「みおんちゃん!」
「ジュリア!」
周りが賑やかくなる。
「大野さん!」
「国也さん!」
みおんとジュリアが、国也の前に現れた。
「来て!」
みおんが国也の手を掴み、走り出す。周囲がざわつく中、ジュリアも一緒について来る。
3人は、会場の外回りを走って、ステージの裏側にある、即席の控室へ入った。
「おじさん!」
「こんにちは!」
亜美と真阿子がいた。
「座ってください」
みおんに椅子を出されて、国也は座る。
「来てくれたんだったら、ちゃんと会って行ってくださいよ」
真阿子から駄目だしをくらう国也。
「ご、ごめん。僕は、一般人だから・・・」
「違うよ、ある意味、大人少女23のメンバーみたいなもんでしょ」
ジュリアが言う。
「そうですよ、一緒に歌ってくれたっていいんだから」
みおんまでそんなことを言う。
「おじさん・・・」
亜美が、国也の前に腰を下ろして、手を握る。
「私たちみんな、のぎちゃんが戻って来てくれることを信じてます。だから、のぎちゃんが頼りにしているおじさんも、それを信じて、元気な姿で迎えられるように頑張ってください」
ジュリアが入れ替わる。
「菊野ちゃんと一緒に局へ来てくれるのを待ってるからね」
・・・そして真阿子。
「乃菊ちゃんの分も頑張ってるから・・・」
真阿子は、座っている国也の頬にキスをする。
「勘違いしないでね、欧米式の挨拶だから」
真阿子が言う。
「じゃあ、私がするべきでしょ」
ジュリアが真阿子を押しのけて、国也の頬にキスをした。
「何してるのよ、二人とも・・・」
みおんが、その二人を押しのけ、国也の前に腰を下ろす。
「みんな、のぎちゃんと一緒に歌ったり、テレビに出たり、ロケでどこかへ行ったりしたい。一日でも早く。そう思っています。そして、国也さんにものぎちゃんとともにこのユニットを見守ってほしいと思っています。だから、とにかく、国也さんが元気で、のぎちゃんを守ってほしいんです」
みおんの眼から、涙が流れる。
「元気出してね」
「がんば・・・」
「おじさん、信じてる・・・」
みんなの言葉に涙が流れる国也。
「これ・・・」
みおんが手さげ袋を国也に渡す。
「のぎちゃんが録音したデモのCDです。羽流希さんが、国也さんに渡してくれって・・・」
「ありがとう。みんなの気持ちは、すごくうれしい。僕も乃菊ちゃんが元気になるのを信じてる。いや、そんな姿しか考えられないくらいなんだ。だから乃菊ちゃんの傍でみんなの分も頑張ります。そしてきっとみんなの前に、乃菊ちゃんを連れて来ます」
「じゃあ、みんなで声出ししよう!」
国也も無理やり輪の中に入れられる。
「大人少女23、ファイト!」
「のぎちゃん、ファイト!」
「国也さん、ファイト!」
明るいみんなに元気づけられ、気持ちも晴れて来た国也。移動するメンバーと別れ、地下鉄に乗らず、ゆっくり歩いて名古屋駅へ向かう。




