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工場と工房

 高速道路の終点には、大きな建物がある。


 白く、整然とした外壁。

 内部では昼夜を問わず機械が稼働している。


 工場だ。


 設計図はある。

 工程は最適化され、品質は安定している。


 同じ型の製品が、次々とラインから流れ出る。


 需要に応え、

 在庫を切らさず、

 市場を満たす。


 これは悪ではない。


 むしろ、理想的な供給体制だ。


 市場は安定した供給を好む。


 予測できる品質。

 予測できる満足。

 予測できる結末。


 AIは、この工場の中核である。


 大量生産が可能で、無駄に人の手がかからず、迷わない。



 一方で、山道の先には小さな工房がある。


 狭く、静かで、灯りは夜遅くまで消えない。


 そこでは職人が日夜作品と向き合っていた。

 何度も削り、何度も書き直し、時には全てを壊す。


 完成までに時間がかかる。


 失敗も多く、出来上がるものは不揃いだ。



 だが、そこには職人の癖がある。

 心が練り込まれている。

 未完成さゆえの、どれ一つ同じものない個性の揺らぎがある。




 工場は、安定した類似品を提供する。


 工房は、手作りの一点物を生む。



 ランキングは、どちらと相性が良いか。


 答えは明白だ。


 繰り返すようだが、安定し、供給が早く、読者の需要を裏切らないもの。



 工場の製品は、数が多く棚を隅まで埋める。


 工房の作品は、数が少なく棚の隅に置かれる。


 やがて棚は工場製で満たされる。


 読者は困らない。

 何故なら常に何かが置いてあるからだ。




 だが、ここでまた問いが生まれる。


 物語は、製品だっただろうか。

 創作は、規格品だっただろうか。



 AIを使う者を責めるつもりはない。


 工場を建てることも、実に合理的な選択だ。

 

 問題はただ一つ。


 工場の生産量が市場を覆った時、工房は存在し続けられるのか。


 多様性は、残るのか。


 同じ味が並び続ける世界で、未知の味は選ばれるのか。



 無論、これは小説界隈だけの話ではない。

 現実問題、職人の数が減る理由と同じ事が小説界隈でも起きているのだ。



 工場の煙突は今日も煙を上げる。


 工房の灯りは、日夜問わず窓から静かに漏れ出している。


 その灯りは弱い。

 だが、まだ完全には消えていない。

 

 しかし……強い風が吹けば、消えてしまうだろう。

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