27.地雷。
「みんなお疲れ様!帰るまでが遠足と良く言うが、家まで気をつけて帰る様にな!」
楽しい旅行も終わり、いつものプレハブの前で、山さんが話している。
「とりあえず、明日、明後日は休みだ。
月曜日からは土作りだ!
よろしく頼むぞ!」
「はい!山さんありがとうございました!」
社員達はリフレッシュできた様で、満足気にそれぞれ帰路についた。
「山さん、ありがとうございました。
まぁ、色々ありましたが、楽しかったです。」
「良かったよ。新太郎、少しづつでいい、自分を許してやれる様にな。」
「は、はい。」
新太郎は、お辞儀すると、先に歩き出した凛を追った。
「さぁ、ワシらも帰るか。」
「そうですね。」
山さんと由梨は、新太郎と凛の後ろ姿を心配そうに見つめた。
新太郎と凛は、寮に無事たどり着いた。
「じゃあ、また。」
新太郎は、ドアの前で凛に手を振る。
「うん、お疲れ様。」
バタン。
二人はそれぞれ自分の部屋に入った。
「あー!楽しかったなー。」
新太郎は、ベッドに寝転がった。
「・・・一人になると考えてしまう。
凛は今頃どこでどうしてるんだろうか。
・・・もう一度、凛に会いたい。」
「例えばだ。
凛さんと将来を誓い合うとする。
その後、凛が現れたらどうする?
凛さんも大切だが、凛の事も大切だ。
・・・あー!!!
寝るか。」
楽しかったと言えど、旅行は体力を使った様だ。
新太郎は、眠りに堕ちた。
何時間か熟睡していた様だ。
「う、う〜ん。」
新太郎は、微睡みの中、腕や体の数カ所に重みを感じ、目を覚ました。
「えっ?何してんだ?」
「添い寝ですが?」
新太郎の腕の中に凛がいた。
「恐いぞさすがに。」
「ひどい!何回もノックしたよ?」
「出てこなければ諦めろ。」
「何度もノックしたが、応答がない。
何かあったのかと心配になって、恐る恐るドアの取っ手を回すと、鍵がかかっていない。
凛は、恐る恐るドアを開け、部屋の方へとゆっくりとすすんだ。」
「なぜ推理小説風?で?」
「新太郎はベッドに横たわっている。
心配になった凛は、新太郎を譲る。
だが、応答がない。
凛は、仕方なく、添い寝するとこにした。」
「・・・。」
「だって!寂しかったんだもん!
旅行では、新太郎くんか由梨さんと部屋同じだったし。」
「はいはい、分かった。」
「せっかくだし、このまま寝ようよ?」
「凛さんは寝てないのか?」
「うん。洗濯とかしてたから。」
「そう。じゃあもう少し寝ようか。」
新太郎は、凛を抱き寄せた。
「おぉ。今日はサービスデイですかな?」
「そうだな。なんか俺もこうしたい気分なんだ。」
「・・・来て良かった。」
「それはどうも。」
「二人は、抱きしめ合い、眠ろうと目を閉じた。
だが、新太郎は、眠ろうとする凛に呼びかける。
なぁ、凛、寝たか?
凛は照れた様子で答えた。
起きてる。
新太郎は、凛に覆いかぶさると、唇を重ねる。」
「重ねねぇよ。寝るぞ。」
「ちっ。」
凛は舌打ちする。
「おやすみ。」
「うん、おやすみ。」
それから、新太郎と凛は、一緒に過ごす事が多くなっていった。
凛は、新太郎の部屋に入り浸り、晩御飯を作ってくれたり、洗濯をしてくれたり、世話をやいてくれる。
新太郎としては有難かったが、そのうちに、風呂を新太郎の部屋で入る様になり、毎日同じベッドで寝る様になっていったのには、戸惑いを隠せないでいた。
「なぁ、凛さん。」
「なんでしょうか?」
最近では当たり前になっているが、新太郎のベッドの上、凛は、新太郎の腕の中で新太郎を見つめた。
「これ、変じゃないか?」
「何がでしょうか?」
「もはや同棲だよな。」
「そうだね〜。」
「俺さ、凛の事は大切に思い続けると思う。でも、凛さんもすごく大切な人になってしまった。」
「それはどう言う事?」
凛は、期待と不安を抱きながら新太郎を見つめた。
「こう言う事だ。」
新太郎は、凛に覆いかぶさると、唇を重ねた。
「ふっふっふっ。ついに私の粘り勝ちと言う事ですな。」
凛は嬉しそうに新太郎の首に腕を回すと、頭を浮かせてキスし返す。
「俺、自分の事、許してやりたい。
大切な凛さんと一緒に生きて生きたい。
最近、そう思うんだ。」
「うん。私も。新太郎くんと一緒に生きていきたい。」
凛は嬉しそうに微笑んだ。
これまで自重して耐えていた愛情をぶつけ合う様に、長い時間二人は愛し合った。
「ハァハァ。もうダメだ。
凛・・・いいか?」
・・・凛。
新太郎は、好きが爆発して、凛と呼んでしまった。
この瞬間、ポッとしていた頭が少し冷静になるのを感じた。
バサッ。
覆いかぶさっていた新太郎を凛は押し倒し、新太郎の上に乗りかかる。
「えっ?」
新太郎は少し驚いている。
「そ、その。何だろ・・・一回しかした事なくて・・・恐いから私がするね。」
「・・・凛。」
新太郎は、小さく呟く。
凛との初めての日の記憶が蘇った。
凛は、地雷を踏んだ事に気付かずに、つづける。
「うっ・・・大丈夫そうだ。」
凛は、幸せそうに新太郎に微笑みかけた。
「あれ?しぼんでく。」
凛は、落ち込んだのか俯く。
新太郎は、自分でも不思議だった。
興奮した感情が引いていく。
体も感情に支配される。
「な、なんで?」
凛は、新太郎の顔を見て驚いた。
新太郎の目尻からは涙が次々と流れ堕ちていた。
「こんな事して・・・俺は最低だ。」
「な、何が?」
凛は、新太郎の様子がおかしい事に、不安そうにしている。
「ごめん。俺、凛の事、自分の罪を。
凛さんとの日々が幸せすぎて、俺は都合のいいように。」
「いいじゃん!」
「ダメだ。ごめん。」
新太郎は、起き上がると、ベッドから立ち上がり、窓の外を見た。
「凛さん・・・出会った頃に戻れるかな?こんなひどい俺をこれからも、仲間として見てくれるかな?」
凛は俯いている。
「新太郎くんの心をあともう少しで救える所だったのにな。
私、変なスイッチ押しちゃったかな?」
「凛さんは悪くないよ。
きっと、神様が俺に、自分のした事を思い出せって言ってるんだよ。
正直な所、今、凛さんと出会った頃よりも、凛だけを思い続けないとって思いが大きくなってしまってる。
凛さんとは・・・凛さん、俺の事は忘れて欲しい。」
「・・・全く。ひどい男に惚れてしまったよ。」
凛は、自分が原因でフラれている事に複雑な感情を覚えていた。
これから、どうなるんだろうか?
そんな事を思いながらも、凛は散らばる下着や服を拾い、身だしなみを整えた。
「分かったよ。」
凛は、ニコッと微笑むと、新太郎の部屋を出て行った。
・・・また大切な人を傷つけた。
もぅ、二度と恋はしたくない。
しちゃいけない。
新太郎は、凛のいなくなった静かな部屋で、一人落ち込んだ。
バタン!
バタバタ!
ドスーン!
凛は、自分の部屋に戻ると、ベッドにダイブした。
「あ〜ぁ。」
凛は、自分が意地を張っているせいでこうなったいる事に複雑な思いではあったが、一人になると、自然に涙が溢れ出してきた。
「まさかこんな事になるなんて。」
枕に顔を埋める。
「由梨さんの助言、もっとちゃんと考えれば良かった。これからどうなるの?
・・・私達。」
新太郎と凛にとって、長い夜が始まった。




