25.凛の心。
「あ〜生き返るー!」
「本当ね。やっぱり温泉はいいわね〜。」
凛と由梨は、宴会前に温泉に入る事にした。
「新太郎くん、みんなと合流できたかしら。」
「もぅ、山さんと由梨さんがみんなにいらないことを言うから、新太郎くん一人だったんだよ〜。」
「でも凛ちゃん、新太郎くんとデートしたんでしょ?」
「ま、まぁ。楽しかったけど。」
「そう。良かった。」
由梨は満足気に笑う。
「所でなんだけど、昨日の夜とか、今日のデートで、進展はあったのかしら?」
由梨は食いつくように凛を見つめる。
「う〜ん。とりあえず、両想いだと言うことは分かって、でも壁が崩れない感じかな〜。」
「どう言う事かしら?」
「えっと。」
凛は、山さんと由梨が喜びそうな内容をなるべく伏せて、昨日の事を説明した。
「えっ?それ、凛ちゃんが私が凛だって伝えれば全て解決するんじゃないの?
ん?それは始めからか。」
「・・・。」
ブクブクブク。
凛は、鼻の下辺りまでお湯に浸かった。
「新太郎くんが現れた時から、そこに凛ちゃんの悩みがあると言う事かしら?」
「うん・・・最初は驚いた。どうしようって。でも、一緒に過ごすうちに、やっぱり好きなんだって分かって。
それに気づいた時から。」
「そうなんだ。・・・聞いてもいい?」
「・・・私が凛だって知ったらね、お兄ちゃん、私を見るたびに昔の事を思い出しちゃうんじゃないかなって。」
「ちょっと話題を変えていいかしら。」
「何ですか?」
「凛ちゃん、新太郎くんの事、お兄ちゃんって呼んでたの!?」
「えっ?そうですけど、今そこですか?」
「な、なんかエロいわね。」
由梨は興奮ぎみに目を見開いている。
「由梨さん、そんな事いう人だったんだ〜。」
凛は目を細めて由梨を睨む。
「どうしても気になって。ごめんなさいね。じゃぁ、気を取りなして。
新太郎くんが昔の事思い出さない様にしたいの?」
「うん。今の私を好きになって、今の私と幸せになってくれたら、お兄ちゃんは楽になれると思うんだ。」
「お、お兄ちゃん。」
由梨はまたしても喰い付いた。
「ゆ・り・さん。」
お兄ちゃんに過剰反応する由梨を、凛は不満気に睨む。
「ごほん!凛ちゃん。
それだと、凛ちゃんが二重に苦しむ事になるわよ?」
「二重?」
「えぇ。今現在、凛ちゃんの背負っている過去の苦しみと、お兄ちゃんに隠し続けないといけないと言う苦しみよ。」
「・・・確かに。
言われるとなるほどと思ったのですが、今、お兄ちゃんっていいましたよね?」
「き、気のせいよ。うふっ。
・・・ごほん!私は、打ち明けてもいいと思うな〜。」
「・・・考えておきます。」
「さっ!凛ちゃんの心のうちも聞けた事だし、そろそろ宴会にいきましょうか?」
「そうですね!」
二人は、ウキウキしながら温泉を出た。
脱衣場に歩きながら、凛は前を歩く由梨の後ろ姿を凝視している。
「な、何?殺意にも似た強い視線を感じたのだけど?」
「由梨さん、スタイルいいですよね〜。」
凛は、羨ましそうに見ている。
「まぁね〜。これでも大学の時はモテモテだったのよ〜!」
由梨は、ポーズをきめている。
「そうなんですか!?じゃあ何で山さんに決めたんですか?」
「う〜ん。しつこかったからかな。」
「えっ?由梨さん押しに弱いタイプなんですね。」
「そう言う訳でもないかな〜。
しつこく言い寄られる事は良くあったしね。」
「じゃあ何で?」
「嘘が無いって感じたの。
あの人は、顔は恐いし、堅物だけど、正直だし、他の人とは何か違ったの。」
「何かね〜。」
「そう。その何かをずっと考えてたら、気がつけばこんな年よ〜。」
「何か素敵!」
凛は、由梨を感動の眼差しで見つめる。
「新太郎くんも、素敵な人だと思うわよ?一つのベッドで寝ても、凛ちゃんに手を出さなかったんだから。」
「まぁ、そうですね〜。あはは。」
凛は、昨日の夜、新太郎が襲いかかってきたのを思い出していた。
「大丈夫!凛ちゃんはものすごく魅力的よ!」
由梨は凛の体を舐め回すように見る。
「は、恥ずかしいんですけどー!」
凛は体を隠した。
「あはははっ!心配しなくても、新太郎くんが真面目すぎるだけよ。
凛ちゃんは魅力的よ。」
「あ、ありがとうございます。」
凛は照れくさそうに笑った。
二人が宴会場に着くと、全員待ちかねていた。
「やっときたー!」
社員達は、嬉しそうにグラスにビールを注ぎ出す。
凛と由梨が宴会場を見回すと、山さんの隣りと、新太郎の隣りの席が空けられていた。
「ふふっ。あなた達は、もうみんなから公認のようね。」
「もぅ、由梨さん。」
「さっ!早くお兄ちゃんの隣りに座りなさ〜い。」
「ゆ・り・さん。」
凛は不満気に由梨を睨み、少し照れながらも新太郎の隣りに座った。
「お待たせ、ごめんね。」
「あ、うん。早く呑もうぜ!」
新太郎は、嬉しそうに凛のグラスにビールを注いだ。




