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罰〜突然妹ができて、人生終わりました。  作者: 蓮太郎


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20/31

20.揺れる心。

ミーンミンミンミーン。

歓迎会から数カ月。

季節は夏。

セミが鳴く午前10時頃。

山手の避暑地と言えど、真夏の気温は高い。


「おぃ、新太郎、お前大丈夫か?」

ヨレヨレと動く新太郎を見て大河が声をかける。


「あぁ、はい。」

受け答えはするものの、新太郎は意識朦朧としている様に見える。

しゃがんで作業していた新太郎が立ち上がると、フラッと倒れそうになる。


「はぁ・・・大丈夫・・・じゃないな。」

大河はため息交じりに、新太郎を支えた。

「とりあえずプレハブに戻ろう。」


「す、すいません。」


新太郎は、大河に支えられながら、何とかプレハブに戻った。


「し、新太郎!大丈夫か!?」

山さんが騒ぎながら新太郎に近づくと、奥から凛も駆け寄ってきた。


「すいません。ちょっと大丈夫じゃ無さそうで。」

意識が遠のきそうになりながらも、新太郎は申し訳無さそうにする。


「凛ちゃん!氷を袋に詰めてくれ!

新太郎を冷やさないと!」


「は、はい!」


山さんは、新太郎を仮眠室で寝かせ、氷で頭や脇を冷やす。

その後ろで凛が心配そうに見ている。

「山さん、新太郎くん大丈夫ですか?

救急車呼びますか?」


「いや、多分大丈夫だろう。落ち着いた様だ。」

大体、新入りは夏になるとこうなる。

山さんは、慣れた様子で新太郎を見つめていた。


「あ〜、良かった。じゃぁ、俺は畑に戻りますね。」


「あぁ、大河、ありがとう。」

新太郎が落ち着いたのを見届けると、大河は畑に戻っていった。


「凛ちゃん、新太郎はとりあえず昼休みが終わるまではここで寝かせてやろう。

後で車で寮まで送るから、新太郎の事頼めるか?」


「看病ですか?」


「あぁ。一応ついててやってほしい。」


「・・・分かりました。」

凛は不安そうに新太郎を見つめた。


これまでは、こうなると山さんの奥さんが看病していた。

凛は不思議に思いながらも、新太郎を看病する事を承諾した。


「ありがとう。」

山さんは新太郎を心配しながらも、ニヤけている様な、何かを企んでいる様な、そんな顔をしていた。


「山さん、一ついいですか?」

凛は、山さんの目を真っ直ぐ見つめる。


「な、なんだ?」

山さんは、真っ直ぐ見つめてくる凛から視線をずらす。


「何かやましい事考えてます?」


「な、なんの事だ?あは、あはは。」

山さんは気不味そうにしている。


「はぁ・・・まぁ、いいですけど。

山さんの期待通りにはなりませんからね。」

凛は山さんを睨む。


「いや〜・・・とりあえず、新太郎を頼む。」

山さんは、誤魔化す様に社長室に入っていった。


「まったく・・・お兄ちゃん。」

凛は小さく呟くと、新太郎を心配そうに見つめた。



「じゃぁ、新太郎の事、頼む。」

山さんは、新太郎を寮のベッドに寝かせると、満足気な顔をしてプレハブへ帰っていった。


「あの顔。分かりやす過ぎだよ。」

凛は、山さんに呆れながらも、ベッドの横に座ると、新太郎を見つめた。


しばらくすると、新太郎は何か寝言を言い出した。

「凛・・・凛。」

夢を見ているのだろうか。

苦しそうに、悲しそうに、凛の名前を呼んでいる。

凛は、思わず、新太郎の手を握った。

「ここにいるよ。」

凛が新太郎の手を握ると、新太郎は落ち着いた様子で、静かに寝息をたて始めた。

「悪夢は終わったみたいね。」

凛は、手を握ったまま、新太郎のお腹の辺りに頭を置いた。

「懐かしいな。」

布団越しに、新太郎の温もり、匂いを感じる。

凛は知らぬ間に眠っていた。


「う、う〜ん。」

窓からオレンジ色の光が差し込んでいる。

新太郎は目を覚ました。

微睡みの中、手に温もりを感じる。

お腹の辺りが重い。

新太郎は体を起こした。


「凛さん?」

自分の手を握り、眠る凛を見て、新太郎は驚いている。

「あ、おはよ。」

凛は微笑んだ。


「お、俺、倒れたんだっけ?」


「うん。山さんに看病頼まれたんだけど、寝ちゃった。」

凛は少し照れくさそうに体を起こした。

「凛さん、その、手。」


「あっ!ご、ごめん。」

凛は握っていた新太郎の手を離した。


「あ、いや、ありがとう。」

新太郎は照れくさそうにしている。


「そ、その、新太郎くんがうなされてて、つい。」


「俺、うなされてたんだ。

昔の夢を見た。」


「うなされるくらいの事が?」


「うん。」


「そっか。」

凛はもう一度手を握った。

「もう少し寝たら?」

凛は、新太郎を見つめる。


「ありがとう、でも。」

新太郎は、優しく凛の手を振りほどいた。


「ごめん、嫌だったよね。」

凛は少し悲しそうにする。


「いや、違う。逆なんだ。」


「逆?」


「俺の昔の話、聞いてくれる?」


「う、うん。」


新太郎は、凛が光とやってきてからの事を話し始めた。


「俺、俺達の子を産んで欲しいって思ったんだ。

貧しい人生になって、凛と子供に苦労かけるかもしれない。それでも、一緒に3人で生きていきたい。そう思ったのに・・・あの時、恐がらないで、もっとちゃんと話せてたら、今でも凛と一緒にいられたかもしれない。

・・・何より、凛の事、傷つけないで済んだかもしれない。

ずっと、ずっと後悔してる。」


「グスン。」

凛は号泣している。


「凛さん、泣きすぎじゃない?」

新太郎は、凛が目の前で大泣きしているのを見て、涙が流れなかった。

「俺の分まで泣かれた気分だよ。」

新太郎は、悲しげに笑った。


「だって〜。うぇ〜ん。」


「あはははっ。泣きすぎだろ。」

新太郎は真面目な顔で凛を見つめる。

「・・・だからさ、俺は、凛の事を、凛だけをずっと好きでいるって決めてるんだ。

前にも口から出てしまったんだけど、凛さん、名前一緒だし、顔は違うけど、仕草とか雰囲気が凛に凄くにててさ、惹かれてしまうんだ。

だから、さっき手を振りほどいた。

凛さんは素敵だし、凛より美人だけど、これ以上近づく事はできないから。

凛さんがそう言うつもり無くてもさ、気をつけてくれるとありがたい。」


「ごめん、ごめん。分かったよ。

そうか〜、私の方が美人なんだ〜。」

どこか不満気な凛を新太郎は不思議そうに見つめた。

「じゃぁ、そろそろ晩御飯作るね!」


「えっ?いいの?」


「うん、山さんに頼まれたから!」


「ありがたい。お願いします。」


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