19.一人じゃない。
「1週間お疲れ様!」
夕方、山さんは社員達を労う。
「明日は休みだ、それでだ。」
社員達は、不思議そうにしている。
「今日は、新太郎の歓迎会をしないか?」
「おー!いいっすねー!」
大河は嬉しそうにしている。
「大河、お前はただ酒が目当てだろ〜?」
山さんはニヤニヤと大河を睨む。
「あはは。まぁ、それもありますけど、新太郎を歓迎したいってのは嘘じゃないっすよー。」
「あはははっ!」
社員達もみんな楽しそうにしている。
「凛ちゃんもどうだ?」
山さんは、恐る恐る聞く。
「まぁ、たまには。」
凛は、嬉しそうなのを隠す様に頷いた。
「えっ?」
山さんは驚いている。
「みんなー!今日は凛ちゃんも参加だ!」
「えっ?」
社員達は驚いて固まっている。
「な、何ですか?た、たまには。」
凛は、少し照れくさそうにしている。
「ま、まぁ、今日は新太郎を歓迎してやろー!」
山さんは、嬉しそうに笑う。
「じゃあ着替えたらうちに集合だ!」
山さんが叫ぶと、社員達は更衣室へと走り出した。
「新太郎と凛ちゃんは、歩きだろ?
俺の車に乗ってくといい。」
「ありがとうございます。」
新太郎はお辞儀すると、嬉しそうに更衣室へと向かった。
「で?凛ちゃんが参加は珍しいな?」
二人になり、山さんは凛をニヤニヤしながら見る。
「べ、別に。たまには。」
「それだけか?」
「行くのやめようかな。」
凛はムスッとふくれる。
「わ、分かった!すまん!」
焦った山さんは、会話をきり上げると、帰る準備を始めた。
「まぁ!こういうのは、思いつきでされると困ると毎回言ってますよね?」
「す、すまん。」
意気揚々と、自宅の玄関をあけて奥さんと話す山さんは、頭が上がらない様子だ。
「や、山さん?」
新太郎は心配そうにしている。
「あら、あなたが新太郎くんかしら?」
「は、はい!大前 新太郎です。
よろしくお願いします!」
「この人の妻の由梨です。
よろしくね。」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「さぁ、みんな上がって!」
玄関で小さくなる山さんを尻目に、みんなは居間へと通される。
「あら?」
由梨は、初めて参加する凛を見て驚いている。
「凛ちゃん、珍しいわね。」
「あ、はい。たまには。」
「そ、そう。」
由梨はニヤリとして山さんを見た。
山さんも、ニヤリとする。
「突然ですいません。
私、何か買ってきましょうか?」
「あはははっ!大丈夫よ!
新しく新太郎君が来るって聞いてたから、準備は万全よ?」
「えっ?由梨さん、聞いてなかったんじゃ?」
「あはははっ!この人の妻を何年やってると思ってんの!」
「す、すごいですね。」
凛は感心している。
「じゃぁ、私、手伝いますね。」
「いいの、いいの!今日は凛ちゃんもお客さんなんだから!」
由梨は凛の手を引き、居間に通すと、新太郎の隣りに座らせた。
「手伝いますよ?」
凛は、申し訳無さそうにする。
「いいから、いいから!」
由梨は、座ろうとする山さんを見てニヤリとする。
山さんも、良くやったと言わんばかりにニヤリとしている。
「とりあえず、その辺りのを食べながら楽しんで〜。」
テーブルには美味しそうな料理とグラスが置かれている。
「はい!お待ちかねの物よ!」
由梨は、瓶ビールをとりあえず5本程、テーブルに置いた。
「ありがとうございまーす!」
大河は嬉しそうに瓶を手に取ると、山さんにつぐ。
「おぉ!すまんな。」
山さんは嬉しそうだ。
凛は、ビールをつがれた自分のグラスと、もう一つグラスん取ると、ビールを注いだ。
「由梨さーん!」
凛は、由梨を呼ぶ。
由梨は台所から小走りでやってきた。
「はい、由梨さんの。」
凛はビールを注いだグラスを由梨に手渡した。
「あら、ありがとう。
私は余りのまないのだけど、凛ちゃんにつがれたらね〜。」
由梨は楽しそうに凛の隣りに正座した。
「では、新太郎を歓迎して、カンパーイ!」
カラン。
山さんが叫ぶと、グラスがぶつかり、音を立てる。
「くぁ〜!!」
口々に幸せな声が聞こえる。
それぞれが、楽しそうに話しながら宴会が始まった。
結局、大変そうな由梨を見かねて、凛は手伝いでバタバタとしている。
「おぃ!新太郎!」
酔った山さんと、大河に新太郎は挟まれた。
「は、はい!」
「お前、何をした?」
大河は酔っている。
・・・めんどくせー。
新太郎は、心の中で呟いた。
「何をって、何ですか?」
「凛ちゃんだよ!凛ちゃん!」
「ん?」
「新太郎、お前、凛ちゃんからの好感度高過ぎなんだよ!」
「えっ?どう言う事ですか?」
新太郎は、不思議そうにしている。
「凛ちゃんが飲み会に参加したの今日が初めてなんだよ!お前を歓迎したいって事だろ!?」
「そ、そうなんですか?
偶然じゃないんですか?」
「いや!おかしい!凛ちゃんはお前に気があるんだよ!」
「・・・そんな感じじゃないと思うんですが。」
「ワハハハ!まぁ、いいだろ!ヤキモチはそれぐらいにしとけ大河!」
山さんは、新太郎の背中を叩いた。
「ぐはっ。ゲホッ、ゲホッ。
・・・山さん、何で俺なんすかー!」
「ワハハハ!」
山さんは楽しそうだ。
「まぁ、いい。凛ちゃんの事、頼む!」
大河は、落ち込んだ様に俯くと、新太郎の肩に腕を回した。
「えっ?いや、俺は。」
新太郎は、困りながらも楽しいな、そう思いながら微笑み、ビールを流し込んだ。
「あー!疲れたー!」
暗い夜道を新太郎と凛は歩いていた。
「やっぱり参加しなきゃ良かったよ〜。」
「奥さんの手伝い、大変そうだったな。」
「そうだよ〜!
みんな楽しそうにはしゃいでるだけで手伝おうとしないしー!
だから参加しないんだよ。」
「今日はなんで参加したんだ?」
「えっ?」
凛は焦った表情をする。
「べ、別に、特に理由は無いよ!
何となく、何となくだよ!」
「そうなんだ。でも、ありがとう。」
「えっ?」
「いや、歓迎してくれて嬉しいよ。」
新太郎は、凛に向かって微笑んだ。
「う、うん。」
凛は照れくさそうにする。
「私もね、バイトしながらマンガ喫茶で泊まって、何とか生きてたんだけど、山さんと偶然知り合ってここへ来たんだ。
大河くんの少し後にここに来たんだけど、今の寮ができるまでは山さんの家にお世話になってたの。」
「そうなんだ。」
「うん、だから、飲み会の時は部屋にこもってたんだー。
ああなる事は分かってたからね〜。
でも、まぁ、ホントにみんないい人達だし、山さんもあんなんだけど、すごく尊敬してる。
今日から新太郎くんも家族だね。」
「う、うん。何か今日、一人じゃないんだって思って、凄く嬉しかった。」
「良かったね。」
凛は微笑えんだ。
「うん。これからよろしくな!」
「こちらこそ!」
新太郎と凛は笑って見つめ合った。




