12.別荘。
「涼・・・お前・・・いやっ!涼様!
俺の様な下々の者と仲良くして頂き、ありがとうございます。」
新太郎は、涼の父親の別荘を見上げ、動揺している。
「おぃ新太郎。そう言うのやめろ。
すごいのはオヤジであって俺じゃない。」
「あ、あぁ。すまん。」
「大体、オヤジの会社継ぐことになるんだろうけど、俺で務まるのか今から不安で押しつぶされそうなんだ。」
「・・・なんか大変そうだな。一般家庭に産まれて良かったと今思った。」
新太郎は、別荘を見上げたまま固まっている。
「そう言う謙虚なとこ、好きだよ。」
ひよりは、涼の腕にしがみつく。
「私が全力で支えるからね。」
ニコッと微笑むひよりを見て、涼は嬉しそうにする。
「ありがとう。」
「まぁ、俺も力になれることがあれば協力するよ。
将来の事なんか分からないけどな。」
「そうだな。俺達はずっと親友でいような。」
「そうだな。」
新太郎は、将来の不安を感じ、無意識に凛の手を握った。
「ふふっ。私も新太郎とずっと一緒だよ。」
凛は、新太郎の手を握り返した。
「さぁ!こんな所で立ち話もなんだし、早く入ろうぜ!」
涼は、楽しそうに別荘の玄関へと向かった。
「天井たけ〜。」
リビングに入ると、新太郎は呆然と立ち尽くす。
「涼、天井のあれは、扇風機か?」
「あ〜、よく分からんが、プロペラを回して空気を循環させるものしいな。」
「そうなんだ。」
「そんな事より、見てよ!」
凛は新太郎の手を引き、窓のほうへと小走りに進む。
「おー!海だ!・・・す、すごいな。」
「うん、すごい綺麗!」
「涼!泳ぎに行こうぜ!」
新太郎は、ワクワクした表情で新太郎に叫ぶ。
「まったく、落ち着きがないな〜。
今ついたとこなんだし、ちょっとゆっくりしたいんだが。」
「じゃ、私達二人で行ってくる!」
凛も待てない様子だ。
「あぁ、じゃぁ、2階のあの部屋を新太郎と使ってくれ。」
涼は、階段を上がってすぐのドアを指さした。
「涼くんも泳ぐの?」
ひよりは涼にしがみついたまま見上げる。
「別にどっちでもいいかな。
俺、泳ぐの苦手だし。
砂浜を裸足で歩くくらいしかいつもしないからな。
ひよりが泳ぎたいなら一緒に泳ぐけど?」
「私も実は泳げないの。
・・・でも、水着は一応持ってきた。」
「・・・それは是非見たいな。」
「・・・バカ。」
ひよりは恥ずかしそうに俯いた。
ドタドタドタ。
涼とひよりがソファーに座って話していると、新太郎と凛が嬉しそうに階段を降りてきた。
「涼!行ってくる!」
「着替えるの早いな。」
「俺達二人共、服の下に水着着てたからな!」
「す、すごいな。」
涼は感心している。
「じゃぁ、また後でねー!」
凛が手を振ると、胸元が揺れている。
涼は、つい見てしまい、固まる。
「りょ、涼くん!」
ひよりは涼の両目を手で覆った。
「あれは見ちゃダメー!」
膨れながらひよりは叫ぶ。
「凛!目に毒よ!隠して!」
ひよりは怒っている。
「あはは。そう言われても。
行ってきます!」
凛は、新太郎のてを引き、海へと向かった。
ひよりは、ホッと胸をなで下ろした。
「涼くんのバカ。」
「ごめん、男の習性と言うか、なんと言うか。今後は視界に入らない様に気をつけるよ。」
「よろしい。」
ひよりは、そう言うと、服のボタンに手をかけた。
「ちょ、ちょっと!ひより?」
バサッ。
涼を無視して立ち上がると、ひよりはワンピースを脱ぎ捨てた。
「ふふっ。びっくりした?」
驚きとワクワクの入り乱れた様な表情の涼を見て凛は笑う。
「実は私も水着着てきた。」
「なんだよ〜。びっくりした。」
涼はひよりの水着姿を見つめる。
「ど、どう?」
「うん。ずっと見ていたい。」
「バカ。」
「うん、大事なのは大きさだけじゃない。」
「凛と比べるなー!」
ひよりはムスッとしている。
「比べたって、ひよりの方が魅力的だぞ?」
「そうですか〜。」
機嫌を直さないひよりを涼は抱きしめた。
「俺達もそろそろ行くか?」
「うん。」
涼とひよりは、手を繋ぎ海へと向かった。
「冷たくて気持ちいい〜。」
ひよりは涼と、波打ち際で足を海につけながらあるいている。
「そうだな。あいつら結構深いとこまで行ってるな。」
「涼くんも行きたい?」
「いや、実は足が着かない所は恐くてさ。子供の頃潮に流されそうになったんだ。まぁ泳げない事はないんだけど。」
「そっか。私も恐いから丁度いいね。」
「そうだね。」
二人は微笑み合うと、沖の方で浮き輪にしがみつく新太郎と凛を眺めていた。
「おぃ、凛。ちょっと深いとこまで来すぎたんじゃないか?」
「そうだね。ちょっと恐い。」
「足が着く辺りまで戻ろう。」
「うん。」
新太郎は、浮き輪を引っ張りながら、浅瀬へと戻る。
「ハァハァ。なかなか戻れないな。」
「だ、大丈夫なの?」
凛は不安そうにしている。
「少しづつは戻れてる。大丈夫だろ?」
「疑問形やめて〜!」
凛は不安そうに叫ぶ。
新太郎は必死に浅瀬を目指す。
「ハァー!なんとか戻れたな。」
必死の思いで足が着く所まで戻ると、大きなため息をつきながら、新太郎は肩をなでおろした。
「恐かったー!」
「おっ、おぃ!」
凛は、新太郎に抱きついて離れない。
「り、凛。その、水着だとくっつかれるとつらい。」
「だって〜、恐かったんだもん。」
凛は、腕も足も新太郎に巻き付く様にくっついている。
「も、もういいだろ?」
「・・・そ、そう言う事か。」
凛は、足に当たる感触で察した。
「あはは。」
「あはは、じゃない。」
「ひより達の所に戻ろうか。足が着いてても、深いとこちょっと恐くなってきた。」
「今はちょっと。先に戻っててくれ。」
「う、うん。」
凛は、一人、ひより達を目指して波打ち際にたどり着いた。
「あれ?新太郎は?」
涼は不思議そうに一人で戻ってきた凛を見る。
「ちょっとね。」
「あ、いた。」
「おーーー!!!!」
新太郎は煩悩を振り払おうと、浜辺に平行に全力クロールをしている。
「あいつ、どうしたの?」
「あはは。」
凛は誤魔化す様に笑い、涼とひよりは、必死に泳ぐ新太郎を不思議そうに眺めていた。




