11.卒業?旅行計画。
「あれ?今日は凛がご飯作るのか?」
ある日の夕方、帰宅した新太郎がリビングに入ると、凛がキッチンに立っている。
「あ、お兄ちゃんおかえり!」
「あぁ、ただいま。」
「今日お母さん誕生日だから、私が作るの!」
「えっ?そうなんだ。」
新太郎は、リビングのソファーに座る凛の母を見た。
「おめでとうございます。」
「ありがとう〜。まぁ、もうおめでたくもないんだけどね。
できれば年はとりたくないわ〜。」
「誕生日はそれでもおめでたいですよ。
無事に1年生きられたんですから。」
新太郎は、凛の母を励ます様に言う。
「まぁ、そうね〜。ありがとう。」
「うん、そうだよ。光さん、おめでとう。」
隣りに座る新太郎の父は、光を見つめて言う。
「も〜、今日何回目?」
「だって、何度でも言いたいじゃないか〜。」
二人はいちゃついている。
「おぃ、そう言うのは寝室で頼むよ。」
新太郎は呆れている。
「二人はほっといて、手伝ってよ〜。」
凛は、新太郎に手招きする。
「あ、うん。」
新太郎は、凛の隣りに立った。
「何をすればいい?」
「じゃぁ、ちょっとこっちきて。」
凛は、リビングから視覚になるコンロ側へと、新太郎を引っ張る。
「あ・じ・み、して。」
「ん?まだ味見する様なの無くないか?」
コンロを見る新太郎の首に凛は腕を回し、キスをした。
「おぃ。」
新太郎は冷静だ。
「どう?」
「もう少ししないと分からないかな。」
新太郎もキスを仕返した。
「うっ。やり返される想定はしていなかった。」
凛は照れている。
「あはははっ!そうだろ。」
「もう一度。」
「ダメだ。」
「バレるぞ。」
新太郎は、凛の耳に口を近づけ小声で言う。
「ちぇ〜。お母さん達見てたら羨ましくなっちゃったんだ。」
「そうだな。」
新太郎と凛が二人の世界にいた頃。
「ねぇ、あの子達、まさかとは思ってたけど。」
「あぁ、丸聞こえだな。」
コソコソといちゃつく新太郎と凛の会話は、リビングに聞こえていた。
「光さん、いいのかな?」
新太郎の父は戸惑っている。
「私はいいと思うわ。血のつながりがないんだから、こうなる気はしていたし。」
「まぁ、光さんがそう言うなら、二人の事は気づかないフリをして見守るか。」
「ふふっ。そうね。」
新太郎の父と、凛の母は顔を見合わせて笑った。
「ハッピバースデートゥーユ〜」
嬉しそうにする凛の母は、ケーキのロウソクの火を吹き消した。
「ありがとう〜。こうして4人揃ってお祝いしてもらえて、本当に嬉しいわ。」
「ゔっ。」
新太郎の父は涙を堪えている。
「ど、どうしたんだよ父さん!?」
「あ、いや、またこうして家族でお祝いができるなんて思ってなかったからな。」
新太郎の実の母、凛の実の父は、昔、良い相手を作り家を出て行った。
新太郎の父も、凛の母も、子供を育てながら必死に働いた。
そんな日々を思いだし、少し涙もろくなっている様だ。
「こうして、これからは、みんなの誕生日をお祝いしましょうね。」
凛の母も、涙目で嬉しそうに笑った。
「さぁ!新太郎!」
次の日、新太郎は涼と日課になった大学の人気の無いベンチに座っている。
「なんだ?えらく気合いを感じるのだが?」
「そりゃー、そうだろ!
明日から夏休みだ!」
「あ〜。そうだな。」
「そうだな。じゃ!ね〜よ!」
「はいはい。で?」
「行くぞ。海へ!」
「・・・あぁ、楽しんでこい。」
「いや、お前も行くんだよ。」
涼は、新太郎を睨む。
「いや、いいよ。家でゴロゴロしてる方が楽だし。」
「お前は俺のオヤジかよ。」
新太郎は呆れている。
「そ、その。あれだ。あれから・・・ひよりちゃんを誘えないんだよ!」
「ん?しょっちゅうデートしてんだろ?」
「デートじゃなくてさ・・・その、卒業案件だよ。」
「・・・あ〜。」
「あんな失態をしたんだ。
勇気が出ない。
・・・そして多分、ひよりちゃんは俺に気をつかっている。」
「まぁ、分からんでもない。
俺の方も、何度かチャンスはあった。
でも、お互いそう言う状態になるとよそよそしい雰囲気になってしまう。」
「だよな。」
「あぁ。」
新太郎と涼は、青空を見上げ、あの日の事を思い出していた。
「空。でっかいな〜。」
涼は小さく呟く。
「あぁ。俺たちはなんてちっぽけなんだろう。」
新太郎も小さく呟く。
「いやいや!違うだろ!う!み!
海の話だよ!
4人で海だ!」
「別にいいけどさ。」
「おっ!ようやく乗り気になったか!
卒業旅行計画。だーー!!!」
「・・・卒業旅行か。
でも、俺あんまり貯金ないぞ?
旅館とか泊まるのか?」
「そこは大丈夫だ。
言って無かったが、うち、割と金持ちなんだよ。」
「何!?涼様の大盤振る舞いと言う事か?」
「チゲ〜よ。
別荘があるんだよ。
食費と交通費はちゃんともってこいよ?」
「あぁ、成る程な。
分かった。ありがたいな。」
「よし!決まりだな!
じゃぁ、凛ちゃん誘っとけよ〜!
あー!ヤバい!デート遅れる!」
「お前も大変だな。」
「そうだな。遅れたら一分ごとに連絡くるんだよな〜。」
「早くいけ。」
「そうする〜。」
涼は、走って消えて行った。




