気のせいだったようだ
不穏な気配を感じた様な気がしたが、どうやら私の気のせいだったようだ。
シルフが怖い事を考えていそうな気がしたが、今見るといつものシルフだ。
私の勘も当てにならないと思いながら、再びお菓子を作る事にした。
茹でたサツマイモをつぶして、そこにクリーム、卵黄、香りの良い果実をつけた蒸留酒を数滴、今回はシロップは少なめにする。
このサツマイモ自体が甘いため、シロップを入れすぎると甘すぎるのだ。
それらを混ぜて楕円形に形を整えて、油を敷いた鉄板に並べていく。
残りは表面に卵黄を塗って焼くだけだ。
こうして綺麗に鉄板の上に、縦横に並べたスイートポテトをオーブンへ。
後は焼きあがるのを待つばかり。
こうして再び作っているとクロトとサナがやってきて私に、
「そういえばリズには植物が良く育つ祝福がありましたよね」
「先ほど種をまいてきましたので、ぜひ!」
サナとクロトが順に、私に自分達の畑にその祝福を使ってみないかと勧誘してくる。
どうしようかと私が思っていると、トレドが、
「え? 祝福って何の話ですか?」
「どうやら私には伝説級の祝福や加護があるらしいの。そこにいるサナに見てもらったの」
「伝説級? そんなもの普通は……でも、サナ? そういえば……いえ、何でもないです」
そこでちらりとサナの方を見たトレドがさっと顔を青ざめさせて、こちらを見た。
どうしたのかと思ってサナの方を私も見るが、にこりと微笑むだけ。
どういう意味なのかトレドに聞いてみた方がいいだろうかと私が考えているとトレドが、
「そ、そういえばその祝福のせいなんですかね。最近都市部では、砂糖の甘みが薄くなって幾ら砂糖を入れても甘くならないらしいですよ」
「いえ、それを私の祝福のせいにされても」
「おかげで、リズ様を嵌めたあのコミヤという令嬢も凄いことになっているとか」
「凄い事?」
「余りにも菓子にも味がしないと狂乱状態になって、薬をがりがり噛んで飲んでいるらしいですよ。精神薬の類らしいので、これではそのうち自殺するのではと止めている侍女もいたらしいですがクビにされたらしいです」
「そうなの。どうでもいいわ……でもよく宮廷内の情報が入ってくるわね」
「幽霊退治などに駆り出されている関係で、出入りしているんですよ」
「……都市の情報、城の情報も全部貴方がいれば手に入りそうね。一週間後が楽しみだわ」
「また割のいい別の仕事が入ったとはいえ、今度は違う人に助っ人を頼まないといけないのでしばらく俺は大変ですよ」
そうトレドが肩をすくめるのを見ながらそこで私は、頼もしいわ、と返してからそろそろ菓子が出来上がるのを思い出す。
取り出すとちょうどいい美味しそうな焦げ目がついている。
それらをお皿にとって、トレドも含めて全員に渡していくと、そこで私はシルフに話しかけられた。
「そういえばリズ、ちょっと来てくれないか?」
「? 何かしら」
言われて私はシルフに誘われて外に出る。
そこでシルフが笑う。
「よし、これで二人きりで森に行けそうだ。行こう、リズ」
「サナとクロトの野菜は?」
「後ででいいよ。それにきっと今は、皆リズのお菓子に気を取られて、俺達には気づかないだろうし」
悪戯っぽく笑ったシルフに連れられて私は、なんとなくそれが楽しい気がしてそのままシルフと一緒に家を出たのだった。
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