分かった
こうして久しぶりに都市の情報を聞いたわけだが、こんな怪しい状況になっているとは私も思わなかった。
ただ一言だけ言いたいのは、
「私は恨むというよりは、この人はどうやっても駄目になるな、と思って黙って逃げただけよ。泥船に誰だって乗りたくもないでしょう? 触ると汚れそうだし」
「リズ様、地味にきつい物言いになっていますよ」
「私だって不愉快な物にはそれくらい物申したくなるわ。ましてあのコミヤという令嬢、教養もなく下品だし」
「……何があったかは聞かないでおきますが、噂は噂ですよ。もし本気でリズ様のせいでこうなったと思っているなら、それなりの対処はしてくるでしょうし」
「……コミヤは頭が悪いから、証拠隠滅もかねて抹殺しにきそうね。私を乗っ取ったようなものだから」
「いくらなんでも、そこまで馬鹿ではないでしょう。リズ様は公爵令嬢ですよ? その後の制裁も含めて、リスクが高すぎるのでは?」
「そこまで考えられる頭が、コミヤには無いわよ」
嘆息するように私が言うと、トレドがひきつったような笑みを浮かべて、
「まさかそれもあってこの別荘へ?」
「悪評もあるけれど、頭がおかしい人物に目をつけられてしまったのもあるから、それに関しては、どうしましょうね」
「でもそういった叩く人物って、本人は意外に打たれ弱いものなんですがね……」
トレドがそう小さく呟いていたが、私は話を戻すことにした。
「それで、ヘレンを連れて行きたいの?」
「出来れば稼ぎ時なので手伝ってもらおうと思ったのですが、リズ様を危険から守れるのはヘレンくらいしかいなさそうですね。うーん、仕方がないか……」
と言い出したトレドに私は、
「その、トレドがこちらに来るのにかかる費用はいくら位なのかしら」
「そうですね……」
そう言って、値段を聞いて私は頷く。
それから、一日の費用を計算して、
「週に一度、こちらに来て直接話す、それは無理かしら。一日はかかるのよね? この料金でどう?」
「……あ~う~、これはいい仕事ですね、割がいいです。というか本当は、一日もかからないんですよね……はは。……分かりました」
トレドがそう答える。
これで都市の情報を手に入れる手段が見つかった。
と、ここでサツマイモを煮たままでいたのを思い出した私は、慌てて鍋を見てちょうどいい柔らかさかどうかを見た。
煮過ぎて崩れてしまっても困るので、私は安堵する。
そこでシルフがのぞき込んできて、
「美味しそうだな」
「味見をする? 素材がいいから、煮ただけでも美味しいと思うわ」
「うーん、完成するまで我慢する」
「そう、じゃあがんばって作らないと。シルフが美味しいって言うのも私は嬉しいし」
「そうなのか?」
「うん」
そう答えるとシルフも嬉しそうに笑って、そして、次に真剣な表情になり、
「抹殺とか、本当にありそうなのか?」
「あるんじゃない? それくらいは考えそうだけれど……」
「分かった」
一言告げた言葉が、冷たい響きがあったような気がしたが私は、
「でも、彼女のやったことは、暗黙の了解にも違反しているから……それも含めて、暗殺の前に追放じゃないかしら」
「そうなりそうなのか?」
「さあ、どうかしら。私の希望的な観測かもしれないわね」
そう答えた私にシルフは小さく笑って、
「……命拾いしたな」
「? 何か言った?」
「何も」
シルフは小声で何かを言っていたけれど、いつも通りシルフは微笑んでいるだけでそれ以上答えなかったのだった。
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