都市の幽霊騒動
都市が“幽霊”だらけになっているらしい。
古い町でもあるので“幽霊”の噂や、実際に目にしたことはあるけれど、そんなに沢山いるものではなかった気がする。
私の知っている“幽霊”も確か、寝過ごして朝日を浴びて成仏していってしまった記憶がある。
ただ、この世界への執着があると、残りやすいらしい所があるという話は聞いた事がある。
しかし、どうしてそうなったのかと思っているとトレドが、
「やっぱり都市の状況は気になりますか?」
「それはそうよ、だって私がいた時は、そんな話は聞いた事がなかったもの。どんなことになっているの?」
「普通に貴族の屋敷で“幽霊”が徘徊するようになっていましたね。もう誰が使用人で“幽霊”なのか分からなくなっている所もあるとか」
「……“幽霊”と使用人の区別がつかない事なんてないと思うけれど」
「それが本当に人間みたいなんですよね。何でも突如いろいろなものが流れてきて、力がみなぎって来たとか」
「トレドはまるで幽霊本人が自分が幽霊ですと自己紹介して話してきたように聞こえるわ」
「そうですよ。特にお城なんか凄いことになっていますからね。あの……コミヤという令嬢は使用人につらく当たるので次々と侍女が辞めていたのもあってか、周りにいるメイド全員が“幽霊”になっていたり、嘘のつき過ぎで、誰が“幽霊”なのか知り合いなのかわからなくなったり、この前の舞踏会では“幽霊”と踊っていて、はたから見るとひとりで変な笑いを浮かべながら踊っているようでしたね。他にも見えない誰かと話していたりと、それはそれは凄いことになっていますよ」
「……そう、それはコミヤの妄想で他人を陥れ続けたせいで、誰も彼女の周りからはいなくなっただけでしょう? でも、それをあの王子は選んだのでしょう?」
最後にとげのある言い方をしてしまったのは、あの嫌な記憶が思い出されたからだ。
私が嘲笑われていても、あの王子は一緒に笑っているだけだった。
因果応報な目に遭うだろうと思って、見ていたが、予想外の状況にはなっているようだった。
そこで私はトレドに、
「でも都市機能がマヒしてしまうのでは?」
「それは大丈夫っス。だって、仕事中毒の“幽霊”さんが今こそ我々が頑張る時と言って治安維持などを頑張っていますからね」
「……仕事……中毒?」
「元々紛れて働いていたらしいですよ。今の若いものは~、といって」
「……そうですか」
「そういった“幽霊”の働きも含めて、都市は、貴族たちは別として他の人達は比較的平穏ですよ。後は悪さをする“幽霊”や悪人を倒すには人手が少し足りないので、ヘレンに手伝ってもらえたらなっと思ってここに来ました」
そうトレドが楽しそうにしているのを見ながら私は、
「でもどうしてそんなに“都市”に幽霊が?」
「都市部を守る結界のようなものが極端に低下したのも原因の一つではあるらしいんですけれどね。都市でまことしやかにささやかれている噂の一つは、悪役と散々虐められて死んでしまった公爵令嬢の呪いだ~とか」
「いや、私は生きているから」
「そうみたいですね~」
死んでいないのに死んでいた事にされては堪らない。
そう思っているとトレドが思い出したように、
「後、食事がまずくなって、貴族たちの食が細くなっているらしいっすよ」
「……」
私は沈黙した。
多分それは私もかかわりがあるだろうから。
けれどそれに関しては話すつもりはない。
でもそんな状況になっているなんてと思っていると、そこでシルフが何故か真剣な顔で私に、
「リズはその婚約者だった王子に未練があるのか?」
「無いわ」
「……そうか、うん、それだったらいいんだ」
そう言っていつもと変わらない柔和な表情になる。
なんでそんな事を聞くんだろうなと私は思ったのだった。
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