一人の男が現れた
こうして私はスイートポテトを作ることに。
サツマイモは、蒸かす、茹でる、どちらの方法を取ろうかと考えるも。
「今日は茹でて作りましょうか」
と決めた。
まず泥のついたサツマイモを水できれいに洗う。
この家の傍には井戸があり、いつも綺麗な水が湛えられている……。
この水、私が来た時から突然透明度が高くなっていたりしないよね? とふと私は思ったが、深く考えないようにした。
そして、イモの土を綺麗に落としてから調理台にもっていって皮をむいていく。
後は程よい大きさに切り分け、鍋に入れて茹でていたいた私。
しばらくは時間がかかりそうだと思いながら私は、雑談をしているシルフ達の所に行くと、それは雑談ではなかった。
クロトとサナは面白そうに様子を見ているだけで、話をしているのはヘレンとシルフだった。
そこでヘレンがシルフに、
「貴方は信用できません。リズ様と二人きりで森に行くなど……」
「君は過保護すぎるよ。そもそも手を出すなら既に出していると思うけれどね。彼女とは“友達”なんだ」
「今までそうだからと言ってこれからもそうだと思えません。貴方は巧妙に牙を隠す猛獣に見えます」
「そんな風に賢く見える? それは嬉しいな」
「誉めていません。私は貴方を危険な“男”と認識しています」
「もう少し柔軟性を持った方がいいよ? 君は律儀すぎる、だから俺も面白半分で手を出してしまう」
「……何の話ですか」
怪訝な表情でヘレンがシルフに問いかけると同時に、家の扉が開いて、
「ここか! ヘレン!」
一人の男が現れたのだった。
現れた男は粗野な雰囲気で、服もあまり上等なものではない。
赤い髪に緑の瞳の男。
けれど彼の姿を私は知っていた。
「トレド、どうしたの?」
「お嬢もこんな所に! どうしてここへ?」
「え……どうしてって、私が別荘に来るから、ヘレンも一緒に……それでここに来たのでは? ヘレンに会いに来たのですよね?」
「そうですよ、お嬢! というか、なんかよく分からない人に、ヘレンはこの村にいるよって教えてもらったので来ました!」
と楽しそうに言うトレド、だが。
そのわけの分からない人物に言われてこんな遠くまで、と私が思っているとそこでトレドが、そこでヘレンが、
「一体何日かかってここに来たの?」
「早馬というちょっとした裏技を使えばここまで一日足らずなんですよ! これから俺、また一日もかからずに都市に戻れるしな」
「……蛇の道は蛇、のルートだからあまり口にしないように」
「おっといけない。今のは聞かなかったことに!」
とトレドが笑うのを見てから少し考えて私は、
「都市に戻る時、両親に渡してもらいたいものがあるけれどいいかしら。貴方へのお土産にしてもいい」
「いいですよ! 手で持てる範囲のものなら、ヘレンの大事なお嬢のお願いなら聞いちゃいますよ」
「ありがとう。丁度お菓子を作っている最中でね、貴方にもお土産に渡すわね」
「わ~、それは楽しみです!」
「所でどうしてここに来たの? ヘレンに何かお願いがあったんじゃないの?」
そう私が問いかけると、くるりとトレドがヘレンの方を見て、
「ヘレン、また何でも屋をやらないか!」
「……今はリズ様にお仕えしています」
「今めっちゃ稼ぎ時で、人手がいくらあっても足りない状況なんすよ」
「? 都市で何かあったのですか?」
ヘレンがそうトレドに問いかけると彼は笑って、
「いや~、都市が、正確には貴族のお屋敷が“幽霊”だらけになって、大変なことになっているんですよ」
などと言いだしたのだった。
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