第25話「クレインと、カイトの目的」
翌日の昼過ぎ、馬車はクレインの街に着いた。
「……でかい」
テンパレスの倍はあるんじゃないかという大きさだ。城壁は高くて分厚くて、門の前には複数の兵士が立っている。街の中を流れる川には橋がかかっていて、川沿いに市場が並んでいた。
「テンパレスより賑やかね」とフィリアさんが言った。
「人が多い……! 種族も色々いる!!」
見渡すと、獣人、エルフ、さっき見たことない長身の種族……テンパレスより明らかに多様だ。
「ここが冒険者ギルドの本部があるの?」
「そうだよ。川を渡った先の大きな建物がそれさ」とバルドさんが教えてくれた。
荷物の引き渡しを終えて護衛依頼が完了した後、フィリアさんが「私は用事があるから」と先に別れた。バルドさんも「一泊して明日帰るから、明朝ここで集合ね」と去っていった。
残った私とカイトが向かい合う。
「カイトくんは人を探すんだよね」
「ああ」
「一緒に行ってもいい?」
「……なんで」
「一人より二人の方が探しやすいかと思って」
カイトはしばらく私を見てから、「……好きにしろ」と言った。
連れて行ってくれるらしい。
カイトに連れられて着いたのは、クレインのギルドから少し離れた住宅街の一角だった。石造りの小さな家が並ぶ静かな路地で、カイトは一軒の前で立ち止まった。
「……ここ?」
「ああ」
カイトは深く息を吸って、扉をノックした。
しばらく待つと、扉が開いた。
出てきたのは白髪混じりの、小柄な老人だった。穏やかな目をした、どこか品のある雰囲気の人だ。
その老人はカイトを見た瞬間、目を大きく開けた。
「……カイト?」
「……久しぶり、じいさん」
カイトの声が、いつもと少しだけ違った。
硬さが取れて、もっと若くて、もっと素直な声だった。
「……大きくなったな」
「三年だから」
「中に入れ、立ち話もなんだ」
老人がこちらに気づいて「連れかい?」と聞いた。
「……一緒に来ただけだ」
「サラといいます、お邪魔します!」
私はぺこりと頭を下げた。老人は「ふむ」と言って、少しだけ目を細めた。
「賑やかな子だな。カイトには珍しい」
「よく言われます!」
老人はかすかに笑って、私たちを家の中へと招き入れた。
カイトが三年ぶりに会う人。
これは……テンプレよりずっと大事な話かもしれない、と思いながら、私はそっと後ろをついていった。




