第23話「馬車の中と、フィリアさんのこと」
馬車に揺られること数時間。
街道は思ったよりも整備されていて、草原と森が交互に続くなかなか綺麗な道だった。
「フィリアさんって何ランクですか?」
荷台の木箱に腰かけながら聞いた。フィリアさんは向かいに座って景色を眺めていた。
「Cランクよ」
「Cランク! すごい!!」
「そうでもないわよ、百年も冒険してればそうなるものよ」
「百年!!」
「エルフはそれくらい普通に生きるから」
そうか、エルフは長寿だった。見た目はせいぜい二十代後半くらいなのに、実年齢が百歳以上というのはすごい話だ。
「カイトは何ランク?」
「D」
「若いのにDランクはなかなかじゃない。いくつ?」
「……十六」
「えっ、十六!? 私と一個違いじゃないですか!!」
「お前は十五か」
「そう! 同い年みたいなもんだ!!」
「大して変わらないわね」とフィリアさんが微笑んだ。「サラはどこから来たの?遠いって聞いたけど」
「すごく遠いところです。もう戻れないくらい」
「……そう」
フィリアさんは何かを察したのか、それ以上は聞かなかった。
「じゃあこれからここで生きていくのね」
「はい。楽しんで生きていくつもりです!」
「いい心がけね」
馬車が少し揺れた。カイトが荷台の端で腕を組んで目を閉じている。寝てるのか、寝てないのか。
「カイトとはどういう知り合いなの?」
フィリアさんが声をひそめて聞いてきた。
「ギルドで会って、なんだかんだよく一緒にいる感じです」
「なんだかんだ、ね」
「フィリアさんはカイトくんを知ってるんですか?」
「名前と顔くらいは。Dランクで一人行動、若いのに腕が立つって評判だから」
「やっぱり強いんですね」
「でも今日まで誰かと組んでるの見たことなかったわ。あなたが特別なのかしらね」
「……そんなことは」
「寝てないぞ、俺」
カイトが目を閉じたまま言った。
フィリアさんがくすくす笑った。私も笑った。
カイトは最後まで目を開けなかったけど、耳が少しだけ赤かった。




