第21話「Eランク冒険者の朝」
Eランクになって最初の朝。
「よし……!」
ルコの宿のベッドから勢いよく起き上がった。
何かが変わったわけじゃない。部屋は相変わらず四畳半だし、窓から見える路地も昨日と同じだ。でも気持ちが違う。なんというか、一段階、世界が広がった感じがする。
朝食を食べながらルコさんに「Eランクになりました!」と報告したら、「おめでとう!!じゃあお祝いにパンもう一枚!!」と言って追加のパンを皿に乗せてくれた。
「ありがとうございます……!!」
「サラちゃんはほんとに素直で可愛いわねぇ。うちの息子に見習わせたい」
「息子さんいるんですか?」
「いるのよ~、もうカビが生えそうなくらい部屋に引きこもってるんだけどね!!」
「……応援してます」
朝食を終えてギルドへ向かう道すがら、街の様子をぐるりと眺めた。
最初にここへ来たときは全部が珍しくて、ケモ耳を見るたびに興奮して、石畳を踏むたびに感動していた。今でも好きだけど、少しだけ「日常」になってきた。
「……日常になってきた、か」
それって、ここで生きてる証拠だよなぁ、と思った。
ギルドに入ると、受付のお姉さんが「おはようございまぁす、Eランクのサラさん!」とわざわざ強調して言ってくれた。
「おはようございます! なんかわざわざランク言ってくれました?」
「昇格したばかりの子には言うんですよぉ。恒例なんです」
「テンプレ……!! ギルドにもテンプレが……!!」
「???」
掲示板を見ると、Eランクの依頼の幅が一気に広がっていた。採取や雑用だけじゃなく、中型魔物の討伐や、複数体の群れ対応、護衛依頼なんかも混じっている。
「護衛依頼……!!」
来た。テンプレの中でも上位に入る、護衛依頼だ。商人の馬車に同乗して目的地まで護衛する、というやつ。主人公がよく受ける依頼じゃないか。
「これ……受けていいですか」
「どれですかぁ? ……ああ、これは来週出発予定ですねぇ。参加者があと二名必要で……」
「受けます!!」
「はぁい!では登録しておきますねぇ」
「何を受けたんだ」
振り返るとカイトがいた。今日も。
「護衛依頼! 商人の馬車に同乗して隣の街まで行くやつ!」
「……一人で?」
「あと二人必要みたいだから、誰か一緒に行くと思う」
カイトはちらりと掲示板を見た。
「……隣の街って、クレインか」
「知ってるの?」
「……行ったことがある」
「どんなところ?」
「テンパレスより大きい。冒険者ギルドの本部もある」
「本部!!」
私は思わず両手を握りしめた。本部、という響きだけでテンションが上がる。
「……俺も行く用事があった。同じ依頼を受ける」
「本当に!?」
「たまたまだ」
「クレインに用事があるのにたまたまって言う?」
「……うるさい」
でも、カイトの表情が少しだけ固くなったのを私は見た。
クレインに用事がある。
それは、カイトが「まだ話せない」と言っていた目的と、関係があるのだろうか。




