第18話「ティックお婆ちゃんの秘密」
ゴブリン討伐の報告を終えた帰り道、なんとなく足がティックお婆ちゃんの服屋に向いた。
「お邪魔しまーす」
「あんや、サラちゃんかい。最近忙しそうじゃねぇ」
カウンターの奥でティックお婆ちゃんがいつもの虫眼鏡を磨いていた。頭の玉ねぎ……じゃなくて緑の髪はいつも通りだ。
「Fランクになりました!ゴブリンも倒してきました!」
「ほうほう、成長しとるじゃないか」
「ティックお婆ちゃんは何でも知ってそうだから聞きたいんですけど」
「なんじゃい」
「カイトくんって何者なんですか?」
ティックお婆ちゃんはしばらく虫眼鏡を磨く手を止めて、私をじっと見た。
「カイトのことが気になるのかい?」
「気になるというか……強すぎるし、なのに一人で行動してるし、なんか影があるし……」
「影……」
「あ、カッコいいとかそういうのじゃなくて! 純粋に気になるんです、人として!」
ティックお婆ちゃんはしわしわの口元をほころばせた。
「あの子は……まあ、色々あったんじゃよ」
「色々……」
「儂の口から話すことじゃないけどね。ただ……」
お婆ちゃんは虫眼鏡をカウンターに置いて、こちらを真っ直ぐ見た。
「あの子がギルドに来るようになって、ちゃんと誰かと話すようになったのはサラちゃん、お前さんが来てからじゃよ」
「……え」
「前はいつも一人でさっさと依頼こなして、さっさと帰っとった。誰にも話しかけないし、話しかけられても一言二言で終わらせてね」
「……そうだったんだ」
「お前さんが来てから変わった。本人は気づいてないじゃろうけど」
私はしばらく黙って考えた。
カイトがいつもぶっきらぼうなのは、最初からそういう性格なんじゃなくて……もしかしたら、そうやって自分を守ってたのかもしれない。
「……ありがとう、お婆ちゃん」
「何も話してないよ?」
「それでもありがとうございます」
ティックお婆ちゃんはフォッフォッと笑って、帽子の中から飴ちゃんを出して渡してくれた。
甘くて、少し懐かしい味がした。




