第15話「テンプレは突然に」
訓練から数日後。
私はFランクの依頼に初挑戦していた。
依頼内容は「街近くの森に出没するスライムの駆除、五体」。
スライム!!待ってました!!異世界モノの最初の敵といえばスライムだ。テンプレ中のテンプレ。ランクGからFに上がる最初の一歩として、これ以上ないくらい王道だ。
「来い……来い……スライムよ……!!」
森の中をこそこそ歩きながら探す。
するとほどなく、木の根元にぷるぷると青紫に光る何かが現れた。
「……いた!! スライムだ!!!」
思わず声が出た。
直径三十センチくらいの、半透明のゼリー状の生き物。核らしき黒い点がその中心で揺れている。見た目が完全に、小説で読んでいたスライムそのものだ。
「やっぱ異世界はサイコーだな……!!」
感動しながらも短剣を構える。カイトに教わった重心を意識して、ちゃんと構えた。
スライムはぷるぷると震えながらこちらに向かってくる。
「……来た!」
踏み込んで、短剣を振り下ろす。
スライムは二つに分かれた。……しかし分かれた二つがくっついてまた一体に戻った。
「え、再生するの!?」
ぐりぐりと核を狙って突いてみると、今度はぱんっと小さな音を立てて消えた。どうやら核を破壊すれば倒せるらしい。
「なるほど!!」
そこから残り四体は割とスムーズに倒せた。五体目を倒した瞬間、私は思わず短剣を空に突き上げた。
「初討伐ーーーー!!!!」
森の中に声が響いた。
しばらくして後ろから「うるさい」という声が聞こえた。
振り返ったらカイトがいた。
「……なんでいるの?」
「近くで別の依頼があった。たまたまだ」
「たまたまにしては都合よすぎない?」
「……うるさい」
(様子を見に来てくれてたんだ……!!!)
テンプレだ。
こういうのが、テンプレだ。
「ありがとう、カイトくん」
「別に何もしてない」
「それでも」
カイトはなんとも言えない顔をして、「……倒せたんなら良かった」とぼそっと言った。
夕日が木の間から差し込んで、二人の影が長く伸びていた。
テンプレっていうのは、案外こういう何でもない瞬間にも、ちゃんと宿っているのかもしれない。
そんなことを思いながら、私は帰り道を歩いた。




