第14話「短剣の稽古と、カイトのこと」
第14話「短剣の稽古と、カイトのこと」
翌日の午後、私とカイトは街の外れにある広場に来ていた。
冒険者が訓練に使う場所らしく、木の的や素振り台が並んでいる。何人かが真剣な顔で剣を振っていた。
「まず構えを見せてみろ」
「は、はい!」
一日貸し出しの短剣を握って、なんとなく構えた。ゲームで見たことある感じで。
「……最悪だな」
「ですよね……」
「剣先が下がってる、肘が外に逃げてる、重心が後ろすぎる」
三点同時に指摘された。
カイトは嘆息しながら私の隣に並んで、「見てろ」と自分の短剣を構えた。流れるような自然な動き。力みが全くない。
「構えは力を入れすぎない。剣は腕じゃなく体全体で扱うもんだ。重心はここ、へその下あたりに置く感覚で」
「へその下……」
「やってみろ」
言われた通りに修正する。重心を意識すると確かに安定感が違う。
「……少しマシになった」
「やった!」
「まだ褒めてない」
「マシは褒め言葉です!!」
カイトは呆れながらも、そのあと一時間近く丁寧に教えてくれた。基本の構え、踏み込み方、最低限の受け方。こちらが間違えると容赦なく指摘してくるけど、説明は分かりやすかった。
「カイトくんって、武器歴長いの?」
休憩中に聞いてみた。
「……まあな」
「どのくらい?」
「五歳から」
「え、幼稚園くらいから!?」
「田舎の方じゃ普通だ。魔物が出るから」
「そっか……大変だったんだね」
カイトは少し黙ってから「別に大変じゃない」と言った。でもその言い方が、なんかちょっと寂しそうに聞こえた。
……気のせいかな。
「サラはどこから来たんだ? 本当に遠いのか」
「うん。すっごく遠い。たぶん誰も知らないところ」
「強くなりたいとかあるのか」
「……うーん」
私は少し考えた。
「強くなりたいというか……ちゃんと冒険したい、かな。自分の足で、この世界を見て回りたい」
「冒険、か」
「カイトくんは?」
「俺は……」
カイトは答えかけて、口を閉じた。
「……まあいい。続きやるぞ」
「あ、うん!」
なんだろ。聞いちゃ悪かったかな、と思いながらも、私は短剣を握り直した。
カイトのことが、少しだけ気になった。




