第13話「新しい宿と、日常のテンプレ」
高級宿シジュを後にした私が次に選んだのは、街の中心からちょっと外れた場所にある「ルコの宿」だった。
ティックお婆ちゃんに紹介してもらった宿で、一泊銀貨四枚、朝食つき。シジュの十分の一以下だ。
「……せまい」
部屋は四畳半くらいで、ベッドと小さなテーブルと棚だけ。窓は一つで、外は路地だ。でも清潔感はあるし、毛布はふかふかだし、なにより宿のおばちゃん、ルコさんがとにかく明るくていい人だった。
「新入りさんね! ご飯は朝だけだけど、お腹すいたら夜でも言いなさいよ!」
「ありがとうございます……!!」
こういうのがいい。これがいいんだよ。庶民的な宿屋のおばちゃん。異世界の定番だ。
そうして数日が過ぎた。
毎朝ギルドに行って依頼をこなし、夕方に帰ってくる。依頼の内容はGランクがほとんどで、薬草採取、害虫の駆除、街中の荷物運びなど。派手さは全くないけれど、確実にお金が積み上がっていく。
「今日もお疲れ様の自分!」
ルコの宿に帰って靴を脱いで、ベッドに倒れ込む。これが最近の夜のルーティンになっていた。
ノートに今日の収支を書く。残り金貨〇枚、銀貨〇〇枚……って、地球でいう家計簿みたいなものだ。
「Gランクの依頼だけじゃ正直厳しいな……」
そろそろFランクの依頼にも挑戦しないといけない。Fランクになれば魔物の素材回収も出てくるし、稼ぎも少し増える。でもそのためには、武器の扱いを覚えなくちゃいけない。
「武器か……」
短剣なら一日貸し出しで使えるけど、まともに扱えた試しがない。
「誰かに教えてもらえないかな……」
翌朝、ギルドで何気なくそう呟いたら、隣にいたカイトが「はぁ? 何が?」と聞いてきた。
「武器の使い方。短剣、ちゃんと扱えたことないんだよね」
「……使い方も知らないで冒険者になったのか」
「なりたてだから!!」
「はぁ……」
カイトはしばらく天井を見てから、「ちょっとくらいなら教えてやれなくもない」と言った。
「本当に!?」
「別に……暇だっただけだ」
(ツンデレッッッ!!!!)
心の中で叫びながら、私は全力で頷いた。
異世界ライフ、まだまだ続きそうだ。




