第5話 ユメルサへの協力者(3)
料理がくるまでの間、私たちは目の前にいる藤本と須本にあのことについて言いだそうとした。
「藤本副部長、須本さん、私たち……。私たち……」
「3人とも緊張しているみたいだけど、どうしたの? 何か言うことがあれば、私たちに言ってごらん」
私たちは、自分たちの思いを藤本たちに伝えようとしても、なかなか口を開くことができません。この様子に、藤本は私たちへリラックスして言うようにアドバイスしました。
「私たち、3人でアイドルグループ『ユメルサ』を結成することになりました!」
それは、アイドルグループを結成するという私たちの強い意思といえるものである。もちろん、藤本と須本にとっては初耳であるので、これを聞いた時には少し驚いた表情を見せていた。
でも、藤本たちは新人アナウンサーのアイドルグループ結成というアイデアを聞いて、私たちの考えに理解を示した。それは、現在のラジオが置かれている状況に対して、強い危機感を持っているためである。
「あなたたちのアイドルグループ、私もナイスアイデアと思うわ。若い世代がもっとラジオを聞いてもらうためにも不可欠なことだわ」
藤本にとって危機感が強いのは、管理職に配られた放送関連資料を見たとき、ラジオにおける10代の個人聴取率が1%台、20代も3%前後だったことである。逆に、50代以上の聴取率は10~12%と高く、ラジオ=中高年向けというイメージが顕著である。
ちなみに、こういった資料は首都圏を対象としたものなので、港南放送にとってどれだけの意味があるのかは分からない。こうしたラジオ聴取率の調査は、民放のAMラジオ局・FMラジオ局が多い基幹エリア(首都圏・関西圏・中京圏・福岡地区・札幌地区)のみである。
港南放送があるこのエリアでは、他にラジオ局があるのは港南FMのみであり、ラジオ聴取率の調査は一切行っていない。
そのためか、港南放送のラジオ分野は表向き「オールターゲット」と称している。しかし、実際には中高年層と農業者・漁業者中心の番組編成となっているのが現状である。それが如実に出てくるのが、中高年向けの健康・美容関連を中心としたラジオショッピングがやたらと編成されていることである。
「放送局がオールターゲットって言うのなら、若者にもラジオをアピールしないといけないのに……。それはそうと、朝のワイド番組『ラジあさホームタウン』のことだけど』
「それって、港南放送がネットラジオ機構への参加に合わせてスタートした番組でしょ」
藤本は、ラジオが置かれている状況への愚痴が次々と飛び出した。すると、さゆ子は藤本が言った朝ワイドについてすぐに反応した。さゆ子は港南市で生まれ育ったこともあり、港南放送は地元の放送局として親しみを持っているからである。




