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あんずの神様 ~山波雷神幻想譚~  作者: ざくろべぇ
第参章  摂泉国で大わらわ
73/90

 登場人物&世界観紹介:第参章



第参章に登場した登場人物や、舞台設定の紹介です。


【過去に主要登場人物枠にあって再登場したキャラ】

 アンズ、テンジン、コナツ、クマリ、ナルミ

  第1章の登場人物紹介を参照



【主要登場人物】


<ソウサイ>

【年齢】45歳

【姓名】摂泉叢斎(せずみのそうさい)

【出身】摂泉国の摂泉村

【好きなもの】お芝居

【苦手なもの】仕事に対して不真面目な者

【長所】波を鎮める政治力

【短所】大酒呑むと狂暴化する

【特技】三桁と三桁の掛け算を三秒で解ける

【秘密】痩せたいのだが痩せられない

【大事なもの】亡き連れ合いの形見の枡

【弱点】泣き落としに弱い。ただし嘘泣きは殴る。

【好きな異性の傾向】趣味が合うことが必須条件

【雑記】暴力の化身ヤシマとの対比で情と道理の大商人と言われるが、当人の腕っぷしはかなり強い。グーパンで瓦割り十枚ぐらいは余裕。

【解説】

摂泉村の陽の顔役と名高い大商人。事実上、摂泉村の村長の如く振る舞う傑物であり、村人は元より他ならぬ村長すらそれを支持するほど。

お若い頃は商談にもバリバリ臨んでその実力を遺憾なく発揮して勝ち続けてきた辣腕者だが、ここ数年は表舞台の商談に立つことも少なく、育てた弟子にシマの仕切りを任せて、さながらご意見番として隠居気味。一声発すればヤシマ以外で彼女に逆らえる者はいないので、若者の自由を妨げるお局様とはならぬよう一線を退いている形である。その上で、彼女が育てた今は熟年の大商人達が村に支配力を持っていることから、人を育てる腕も確かであることが伺える。ただ、若い頃から彼女に育てられた者達から話を聞くと、おっかないエピソードばかりが回想されるようなので、相当厳しい指導を施してきたことも想像に難くない。

郷土愛が強く、摂泉の地が栄えること、そこに住まう民の幸福に対しては非常に献身的であり、酔って暴れた時の怖さをさんざん知られているにも関わらず人民からの信頼は厚い。ただ、年老いて尚いざとなれば荒っぽい言葉も手段も用いるので、逆らうべきでないという畏怖もまた未だ根深く抱かれる。


<ヤシマ>

【年齢】26歳

【姓名】流屋島(ながれのやしま)

【出身】不明

【好きなもの】博打

【苦手なもの】楯突く奴

【長所】暴力による統制力

【短所】やってることはど悪党

【特技】三つ投げても賽の目は操作可能

【秘密】人に見せたくない古傷がある

【大事なもの】形無きかつての思い出

【弱点】真っ当な正義感には少し反論が弱くなる

【好きな異性の傾向】毎晩抱いても耐えられる女

【雑記】村で最も恐れられる人物であるが、逆らわなければ決して害は無い。敵対すれば人生終わり。まさしくヤクザですね。

【解説】

摂泉村の陰の顔役と名高い大商人。逆らう者には断じて容赦せず、殺しも厭わないので、彼に表立って反論できるのは摂泉村においてソウサイ只一人のみ。

摂泉村の血気盛んで暴力的な者達を一手に纏める、さながら摂泉の闇将軍。年上のやくざ者達ですら彼に逆らわず、組織の一員として服従するというのだから、彼自身が持つ気魄と実力は並々ならぬものだと証明されているようなものである。ヤシマを後ろ盾に持つだけで、摂泉においてはあらゆる"話し合い"が有利に進むのが現実なので、決して正道的ではないとしても"商人"としての力量は高いと言える。ただし、彼自身も真っ当な商談そのものは果たせる聡明さがあるため、暴力だけで成り上がった者だという陰口は、怖さ抜きにしても立つ気配は無い。

調子に乗り気味の者がある日突然失踪してしまう実例が多い摂泉村なので、ソウサイとは違う意味でヤシマに逆らう者は摂泉村にはいない。そのせいもあり、常に小太刀を持ち歩く彼の喧嘩の力量そのものは披露される機会がすっかり無くなっている上、ヤシマの若い頃を知る古参の組織構成員が多くを語りたがらないこともあって、ヤシマ個人の実力そのものはすっかり未知数である。とはいえ彼に従う熟年の顔ぶれを見る限り、そこにはったりが存在しないのは確実であろう。


<ミズハ>

【年齢】テンジンよりも年上

【真名】罔象岬女神《みずはみさきのめのかみ》

【出身】摂泉国

【好きなもの】人の苦労や苦しみを想像で補える人

【苦手なもの】弱者を虐げる人

【長所】信仰されようがされまいが人に対して献身的

【短所】めちゃくちゃ泣き虫

【特技】本気で泳ぐと鰹(カツオ)より速い

【秘密】喧嘩するとべらぼうに強い。自覚もある。

【大事なもの】お供え物

【弱点】優しくされた時が一番泣く

【好きな異性の傾向】発言力と実行力を併せ持つ人

【雑記】気弱なお方ではあるが、立ち向かうべきものには断固として立ち向かう。何せ水を司る神様である。自分の能力がどれほど強いかはよくわかっている。

【解説】

摂泉国にて祀られる水神。テンジンよりも年季の長い、格式高さでも上回る神様である。

気が弱く、怖い迫られ方をすればすぐ頭を抱えて震えてしまう性分であり、信仰篤かった頃からそうであることを知るテンジン曰く、それが素の性格のようだ。しかしやはり神様というべきか、全盛期には遠く及ばぬ今もなお、摂泉湾という大海や、海に流れる摂泉国の多くの河を治水するほどの力を未だ失っておらず、オオムカデが摂泉村を滅ぼさん勢いで暴れていることを知れば、神力に溢れた雨で以って妖魔を苦しめるほどの力も発揮している。神様としての権能は非常に高水準で、彼女の性格上まずあり得ないことだが、人類を見限って仕事をしなくなってしまったら摂泉国は水難に溢れ返ることとなるだろう。もっと極端に例えるなら、もしも彼女が人類に仇為す方に力を振るえば、何千人の命が水に呑まれて命を失うか計り知れない。臆病にも見える当人の振る舞いからは想像しづらくすらあるが、神様としての能力は卓抜したものであり、今もなお人間社会の平穏を支えており、今後もそれを改めることはないであろうお優しい神様。漁や海運で摂泉湾に舟が出ることも盛んな摂泉国において、不運な水難で命を落とした者が皆無という事実がそれを物語っている。

テンジン同様、近年は信仰を失って弱体化しており気落ちもしているが、これは人類の手で海運技術や海を読む知識や経験の研鑽、そして治水技術の発展により人類が水との付き合いが上手くなってきたことに依るところが大きい。それは人類の正しい自信でもあり驕りでもあるが、ミズハとしては人々が自らの手で未来を切り拓けることに伴っての信仰の薄まりを、時代の流れとして許容しているところもある。話がわかり、常に人類を慈しむ、本当に慈愛溢れる神様ということだ。


<カムロ>

【年齢】35歳

【姓名】禿(かむろ)

【出身】摂泉国の摂泉村

【好きなもの】人の笑顔

【苦手なもの】悪銭

【長所】謙虚であるが卑下はしない

【短所】安売りしたがる悪い癖。商人としては短所。

【特技】腹太鼓

【秘密】内縁の妻は13歳

【大事なもの】愛妻弁当専用の弁当箱

【弱点】ヤシマの名を聞くだけで金玉が縮み上がる

【好きな異性の傾向】容姿は幼い方がいい

【雑記】文句無しに善人と断じられる人物であるが、性癖だけはフォローしようがない。別に年下好きなだけなら結構だが、視線が女の敵過ぎる。

【解説】

摂泉村の大商人。ソウサイやらヤシマやら、摂泉には濃すぎる化け物が多いせいで存在感が薄れるが、商人としては彼もかなりの大物である。

自分の売ったもので買い手が喜んでくれることを至上の喜びとする人の良さは、決して商人としての自身の評価に繋げるためでなく本心そのものであり、アンズはおろか人生経験豊富なナルミ辺りも認める、筋金入りの良い人。そのためならば懐の寂しい人に対し、自ら売値を負けることも厭わぬ商売を平然と行うため、市場においては摩擦が絶えぬようなやり方を頻繁に行うのであるが、それでも豪商として色褪せぬ地位を未だ失わぬ辺り、商人としての腕は相当なものであろうと推察するには余りある。

地元で店を構えれば生涯安泰な地位を持つにも関わらず、広く笑顔を拝みたい想いから危険をも顧みず、未だ行商人ないし駆け出しのように隣国への商売を自らの足で続けるほどアグレッシブ。摂泉と山波の商業ラインを太く繋ぐ一人として存在感は大きく、アンズやナルミにとっても関わりの深い人物である。総じて社会貢献度の最も高い人物の一人であり、敬意を集めるのも妥当な一人だと断言できるだろう。どちらかと言えばソウサイのような陽の側に付いてこそ似合う人物であるが、彼はヤシマの配下の一人である。若い時に縁を間違えたのだろうか。なかなか人生すべて円満とはいかぬものである。




【その他の登場人物】


<イバラギ>

大奈国の大和龍山を支配する鬼達の大物格。第2章に続いての再登場。

なぜか摂泉国に遊びに来ていた。頭の角という決定的な妖の証拠と、あまりに珍しい緑の髪さえ隠しきれれば、人と殆ど変わらぬ見た目なので案外あっさりと紛れ込めてしまうらしい。オオムカデ騒動には大きく関わっていたが、それはたまたまアンズが摂泉村に居合わせたからその方向に動いただけで、そもそもこの地に遊びに来ていた理由とは別物である。本当に、本来としては他意無く遊びに来ていただけの可能性が充分ある。


<ミノヤマ>

黒装束の怪しい人物。第1章以来の再登場。

相変わらず正体を徹底的に隠しきった風貌であり、アンズを出し抜いて暗躍していた。しかし今回はアンズの命までは狙っていなかったらしく、危うい場面を彼女にもたらしながらも手を下しきってはいない。将来的に必ず邪魔になる相手を討つ気無しなど、思惑の見えぬ不気味さはイバラギよりもいっそうのもの。第壱章においては味方のキドウマルに対しても蔑み倒した冷酷な態度が目立っていたが、対等以上と認めるイバラギに対しては態度も相応で、その言動は相手次第で大きく変わる様子。


<ゴエモン>

ここしばらく摂泉村を騒がせていた神出鬼没の怪盗。

昼夜問わず、富豪の家の財産を盗み去り、村にばら撒き庶民に配るという所業を繰り返していた。狙われた富豪というのはいずれも悪どさが有名な者達なので、嫌な奴を懲らしめてお金をばら撒いてくれるゴエモンに対する庶民の印象は案外良い。しかし、やってることはやはり良いことであるはずもないので、ソウサイとヤシマの要望によりアンズがこれを捕らえるために動いた。アンズが交戦したゴエモンの正体はイバラギだったが、真の正体はまた別人。


<ハタノ>

摂泉村でぶいぶい言わせてきたヤクザ者。35歳。

これでも本業は商人であり、暴力稼業を抜きにしても割と上手くやっている方。いよいよとなれば怖い顔も出すが、やくざ者とてコケにされるようなことさえ無い限りは、わざわざ無用な波を立たせることもせず、我が手で商売を進めるということである。それで長らくやっているのだから商売上手なのだろう。もっともその商売というのは、やたらと若い女性ばかりを沢山雇うものなので、アンズのような人とは決して相容れないタイプの商人だが。

最も近しい取り巻き三人を代表とする舎弟とともに、"いよいよとなれば"の荒っぽい手段も豊富な人物であるが、アンズをいつもの調子で捩じ伏せようとしたのが運の尽き。暴力世界に生きる者においては致命的な敗北に伴い、すっかり武力の世界で生きていく顔を潰され、気落ちして細々と生きていくしかない末路を辿る羽目になった。ただし、当人の商売上手さは確かなので、今までのようにはいかぬとはいえ、何のかんので商人として長生きはしそうである。


<へこすか>

<はみみん>

<あままらま>

桑原村におけるクマリの友達。桑原村自警団なるものを結成した面々であり、勝手に隊長に祀り上げられたクマリに名付けられた変な名前を個々が持つ。

へこすか は自警団発足を提唱し、副団長を自称する突っ走り系男の子。

はみみん はそんなへこすかの暴走をぎゃんぎゃん叱る委員長系女の子

あままらま は気弱な女の子であるが、暴走するへこすか に対しては毒舌。

自警団の中心人物である三人である。仲が良いようで何より。

ちなみに本名は、へこすかは又次郎。はみみんはお三《みつ》。あままらまはお林《りん》。"桑"原村の未来を背負って立つであろう子供達。




【舞台設定】


<摂泉国>

山波国の西に隣する国。和大国随一の商業国。

商業の盛んな国ということもあり、人々の間で貨幣に対する価値の重さが他国に比べてかなり強い。資本主義的な思想の根源的なものが、各国に比べて先進的に根付いているため、恐らく千年後にも通じる金銭的価値の強さが、良くも悪くもかなり色濃く既に表れている。

商売とは駆け引きを免れないものであり、本業商人のみならず庶民にもその観念が浸透していることもあり、損に泣き寝入りするような弱い心では己の幸せなど永劫勝ち取れぬという信念が根付きつつある国ゆえ、商人のみならず庶民ですら主張に対しては積極的。それゆえ我慢ならぬことには真っ向から立ち向かう芯の強さを持つ者に溢れており、余所の商売人がこの地に参じた際は、学の薄きはずの農民すら丸め込むことが意外に困難と感じ、手を引くことが多くすらある。特に感情に素直なおばちゃん軍団の気骨逞しさ、そして血気盛んで引くこと知らずな男衆の木の強さは如実であり、跳ね返された外来者はこの地に生涯馴染めぬと言い伝えられるほどである。流れ者の価値観に左右されることもなく、いつしか授かった商人の集う国という称号に恥ずるべくもない、精神力に秀でた者達の実在こそ強みの国。


<摂泉村>

東の摂泉湾と隣する、摂泉国最大の港村。

摂泉湾から出航する海運を最大の強みとし、広き和大国全土から常に新しいものを取り入れることで、大陸全土の最先端を突き進む村。その性質上、この商業の都で一旗揚げたい流入者も多いのだが、商人としての生存競争は極めてシビアであり、地元民だろうが外来者であろうが、店を構えてからそれを長く続けることはかなり難しいとされる激戦地でもある。主要な客となる村人は人情味もあるのだが、皆様いけ好かない相手にはかなり素直で客離れも早いため、客商売の真髄を学ぶならばこの村こそ筆頭だという意見もある。この村で店を構えて一年以上潰さなければ、商人としての力量は上々と評価してもいいだろう。

村人も商人も商売盛んなこの村の気風を好んでおり、新規参入の商売人には歓迎的で、新しいものには気前良く買い物してくれる傾向にあるのだが、経済的な意味での"侵略者"に対する対応は村総出で叩き潰すほど容赦無い。特にソウサイやヤシマの眼が最も光るお膝元ということもあり、不義をはたらき反省しない者、良からぬものを売り捌くもの、組織的な人員流入からシマを広げようとする者などが、いつの間にか失踪しているというのはよくあることらしい。決して単に排他的な村でも無いし、お天道様に恥じぬ商売をする限りは真っ当に評価される村なのだが、自浄作用が過激な村であるのも事実である。


<建水大社>

水神ミズハ様を奉る神社。今は小さな分社と見間違得られるほど寂れている。

かつて信仰篤かった時代は、控えめな本殿を中心に据えながらも広い境内をその周囲に構えていたのだが、人々の心が緩やかに離れていきながら長い歳月が経った現在は、誰にも手入れされぬ境内と本殿が廃墟同然の放置されっぷりという現状である。仕える神職者が不在となって長いこともあり、境内であった場所は短い草で溢れ返り、境内と認識されぬただの地面と化し、小さな本殿も潮風に晒されてすっかり色褪せているという始末。初見のクマリの辛辣な物言いは決して的外れではなく、村はずれにひっそりと建つ分社めいた本殿という存在感と形容して相違無い。

主神ミズハは大抵、年中空っぽの賽銭箱の上に寝っ転がるか座り込むのが日常的になっている。本殿内ではなく、座ると痛そうな賽銭箱の上に常にいるのは、信仰薄れて凝った御体に賽銭箱のでこぼこが若干心地いいからだそうな。おいたわしや。


<津河村>

摂泉村の北東に位置する、摂泉国の中でも五指に入る大きな村。

流石に摂泉村には劣るものの、商売盛んで商人にとっては一等地には違いない。後述の豊産市場という名物を擁することもあり、美味しいものを食べたいのなら摂泉村よりも津河村だよと言われるほどの強みもあり、栄えている。港を擁する摂泉村と異なり内陸の村であるが、栄えているだけあり摂泉国北部の流通の中心地としても名高く、港に頼らずとも商売に強い摂泉国の顔を物語る村としての存在感は非常に大きい。

山波国から摂泉村に向かうことあらば、ちょうど通過点にもなる場所であり、立ち寄らなければ損だと言われる美食の村。地元民や国内の客だけでも充分に栄える村には違いないが、山波村からの旅行者からはとみに愛される村でもあり、それもまた村の経済に大きく寄与している。津河村も自らの強みは重々理解した上で誇りを持っており、村の料理人の腕たるや、摂泉村への旅行に赴いたつもりが立ち寄った旅行者が、何を食べてもあまりに美味しいものだからもういいやと、この村に滞在して摂泉村まで行くことをやめてしまうことも少なくないそうな。そうしてこの村は、また来たいと思うリピーターを獲得するのである。


<豊産(ほうざん)市場>

津河村の名物であり、村の大半を占める大市場。あまりに支配的に広大すぎて、津河村の居住区は他の村に比べて明らかに比率が小さい。

その広さだけでも圧巻ではあるが、八割近い店が食品、食材を取り扱っているのが最大の特徴。摂泉国全土から仕入れられた山の幸や川の幸、畑の恵み、調味料、さらには港を擁する摂泉村とも近く、海産物まで仕入れる食材の豊富さにはまったく隙が無い。特に内陸の村にありながら、ぴっちぴちの海鮮が日常的に召し上がれるというのはかなりの強みであり、この村に過ごす限りのみで摂泉国の美食は網羅することが出来ると言われるほどの売りとなっている。摂泉村が港を介して和大国全土の最先端の食材を仕入れ、市場の商人達もそれを買い逃さないため、見方によっては和大国全土の美食すべてさえ司り得るとさえ言える。

豊産市場で卸売される最高の食材を仕入れる飲食店も非常に多い側面もあるが、地元民の舌がある意味でご貴族様以上に肥えているため、この村で飲食店を構えて潰さず長続きさせるのはかなり難しいとされる。そのぶん、長く生き残る店の料理人の腕は全国的に見ても一流の部類であり、やがて自分の店を持ちたいという料理人が教えを請う修行の地としては最高の環境とも言われる。店を持たぬにせよ質の良い食材に溢れるこの村は、花嫁修業に臨む女性が一時的に住まうことで料理を覚えるには絶好ともされ、市場に隣する仮住まいの長屋もそうした世間の声を顧みて大事に管理されている。食で栄える津河村の核として、今日も豊産市場は栄えている。


<山泉(やまずみ)街道>

<泉山(いずやま)街道>

山波国と摂泉村を繋ぐ大きな道。通例に背かず、山波国内のうちは山泉街道、摂泉国内であれば泉山街道と呼ばれる。

山泉街道は和大国全土で見ても、平坦かつ広い道が続いており歩きやすい。山波国と摂泉国が親密であり、両国間の交易のしやすさに大きく貢献する。

泉山街道は商売の国と言われて流通の盛んな摂泉国に入っているのでいっそう道が広い。ジグザグでもあり、摂泉国内の各村への寄り道しやすさを重視している。




【アンズの披露した技】


<土鼓(つつづ)・睡蓮(すいれん)>

地面に稲妻を落とし、着弾点の形状を大きく変える技。

"土鼓"を枕に置く土雷鼓を用いた技は、そもそもがいずれも地面の形を変える稲妻を行使するものであり、睡蓮はその中でも工夫をしない基本技とも言える。

稲妻を着弾させた場所を炸裂させ、外周が蓮の花弁のように跳ね上がったクレーター状にめくり上げた形にする。何も考えずに土雷鼓の稲妻を地面に落とすとだいたいこういう形になるそうな。作中においては転がるオオムカデを足止めするのに一役買ったが、稲妻の威力を調整すればクレーターの径は大きくも小さくも出来るので、オオムカデ以外の相手と戦う際にもわかりやすい使い道は多い。炸裂させた時点で爆裂を生じさせる稲妻は、小さな敵が密集している場所に撃ち込めばそれなりの効果をもたらすし、破壊された地面は敵が走りにくく、空を飛べるアンズの障害にはならないのだ。


<土鼓(つつづ)・水仙(すいせん)>

地面の形を変える稲妻を、ちょっと力の入れ方を変えることで、睡蓮とは違う形に地面を作り変えるもの。作中においては反り上がった地面の形を作り、転がるオオムカデをジャンプ台から飛び出すような形で浮かせて海へと放り込んだ。斜面を作るだけの技なので、オオムカデのああした行動に対してしか効果的でなさそうなのが現状の印象だが、そんな技でも新しい使い道を考えられるようになればアンズも成長したと言われるに値するだろう。

特殊な状況にアンズが即興で効果を考え、名付けもその場の思い付き。なんだか短絡にも聞こえる話だが、アンズは技の名前を付ける時は案外どれもそんな感じでインスピレーション任せである。使い道が今後もあるなら、そんな適当じみた名前であろうと、それらしく定着していくものだ。


【アンズ以外が披露した技】


<緑尽(りょくじん)・謝与大枝(さよのおおえだ)」

イバラギが披露。

地面を突き破って高くそびえ立つ樹木を生成する。葉はおろか枝も無い一本の裸木なので、植物を操る力で柱を生み出す技、とでも形容した方が話が早い。

かなりの高さかつどっしりとした重みの樹木を瞬く間に完成させるため、いつかイバラギがアンズと戦う日が訪れるなら、アンズにも有効な技にはなり得る。急成長する樹木はさながら空中の敵を真下から貫く槍と見做すには充分であるし、その場に残せば空を舞うアンズの障害物にもなり得るであろうからだ。




【登場した妖魔】


<大百足>

かつて山波国の東の隣国、近滋国で猛威を振るったとされる伝説的大妖魔。西洋ファンタジー風に例えると、その名高さと恐ろしさはエルダードラゴン級。

鎧をも貫く鋭い槍のような足が幾十本、兜も切断する大顎、岩をも粉砕する自重、人肌など容易に溶かしてしまう溶解液、さらには業火を吐き出して村をも焼き払うという、ざっと挙げただけでも数多の命を奪うには充分過ぎる武器をこれでもかと言うほど取り揃えた化け物である。弱点と言えるのは神力を帯びた妖魔調伏に特効である攻撃への耐性が無いことぐらいのものだが、持ち前の存在力でその神力の猛攻にも長く耐えきってしまえるため、神の力を以ってしても調伏は困難を極める。作中においてはアンズに調伏されたが、これは復活したばかりで全盛期の強さを失っていたからでもあり、仮に全盛期の力を持ち合わせていれば、アンズや今のテンジンの手に負える相手ではなかっただろう。アンズが傷だらけになりながらも辛勝できたことすら、オオムカデが万全でなかったからこそ叶えられた勝利に過ぎず、それだけ本来は恐ろしき怪物であったということだ。

妖魔の中でもとりわけ獰猛であり、後退することが出来ない百足の怪物ゆえなのか、誰にも従わず目に映るものすべてが捕食対象でしかなく仲間も作らない。人の言葉を用いて聞き分けるほどの知能がありながらも、思想は原始的で食欲のみで行動し、話が通じる余地は無いと断じてよいだろう。ただ、イバラギやミズタマのような話の通じる妖の例を取ると勘違いされやすいのだが、そもそも妖魔というのはこのオオムカデのように、対話すら儘ならず人の世に害を為す存在が大半である。そうした存在かつ、圧倒的な殺生力を持つこのオオムカデが、どれほど恐ろしい存在であったのか、当時の人々の恐怖は察するに余りある。

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