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滅ぼしの醸成  作者: 藤野彩月
第六部
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告白⑥ 便利な駒

あの時の寺西の顔、そして言葉が忘れられない。


別に俺はあのバアさんを激しい舌戦の末、言い負かしてやろうとか、そうしたバトルを企てる気はさらさら無かった。それをしても無駄なのは分かっていた事だ。それを生業とし、加えて彼女には法律の世界では―よほど寺西と互角に戦えるような数少ない人間は別として―その名を聞いてビビらない者はいない女弁護士に挑む程俺は野暮じゃない。

しかし、さすがの寺西だって今までひた隠しに隠してきた我が家の黒い秘密を晒されればさすがに面食らうだろうと思っていたのも紛れもない事実だ。結果として暖簾に腕押しでしかなかったが。


「あぁそうや。」奴はあっさり認めた。うっすらと笑みを浮かべて。

「……認めるのか?」

寺西は俺の目には見えない別人と話してるのか、それとも耳にイヤホンを着けてケータイで誰かと喋ってたのか。だが、間違いなく俺の言葉に返答したみたいだった。

「何や、私はお父様達しか存在が見えてへんと思てましたんか?嫌やなぁ。そこまで老いぼれとったらこの仕事はよう務まりません。仮にそやったら、あの小娘が生まれた経緯を今更ご両親に言いますかいな。あの時はおくさ…あんたのお母様にシバかれる覚悟でしたんや。」

関西弁と言うこともあってか、俺は相手の言ってることが明瞭に受け取れなかった。

言い負かすことは不可能であっても、朝霧家の大きな()()()()を叩き付ければ一旦は黙ってくれる。俺はそのつもりで自ら遥さんの存在を知っていると自白したのに、却ってそれが寺西の罠にかけられていた!

彼女は部屋のドアを厳重に閉め、誰も入れないようにした後、また元の場所に座って続きを話した。

「もっと言いますとな、あの()を連れてくる前日はご両親はあなたを別の場所で療養させようとしてたそうや。あの時あなたインフルにかかってましたやろ?でも直前に私が電話で引き止めておいたんですわ。」

「なぜそんなことを?」

この先の次の女弁護士の答えを聞くまで、俺は何一つ分からなかった。

「秀一さんにも、使いこなせるようになって欲しいんや。もちろん直接顔合わせる必要ないで。ややこしくなるからな。黒霧会があそこと提携すると決まったんが...(あれ)が一回目の国家試験受ける春やったな。案の定たるんどったさかい落ちたけど、私は逆にええ機会やとばかりにあれを例の医療機器メーカーに送り込んだんや。スパイとしてな。」

「ちょっと待て。それじゃ教授から紹介されたって言うのは...」

「それもホンマの事や。私の指示通りに遥が()()()()()()()してな。おかげで教授はすっかりあの娘の言いなりや。推薦も思いの外スムーズにいけたで。まぁこう言う事ですわ。言い方アレやけど、糞尿かて一般的には目に入れたくもない物とされとるけど使い途が全くないか言うたらそうちゃうやろ?それと一緒や。ただウチの場合は厄介な事に人の形して、人と同じ様に性欲旺盛やからな。今後変な知恵ついて飼い主に噛み付こうもんなら...。いや、弁護士がこんな事言うたらアカンな。」

寺西は自分で話を一段落させた後、荷物を持った。

「ではまた秀一さんにも詳しいあれの使い方を教えますさかい、気が落ち着いたら東京戻って来てください。だけど、ええですか。くれぐれも自分から接触図ろうとせんといてくださいや。顔も知らん方がよろしい。現にあなたには山垣教授のお嬢様がおられることですし。」

「...じゃぁ.....その...遥さんって人は今も渦中の会社に...?」

「答えられません。」

老弁護士はさっさと退室して行った。

あの、彼女の人を人とも思わぬ話しぶりが頭から離れず、俺はその夜は一睡も出来なかった。

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